快適な室温を保つのに欠かせないエアコンに関して、意外と見落とされがちなのが黒カビの問題です。特に、ジメジメした梅雨や高湿度の夏は、エアコン内部でカビが繁殖しやすい時期にあたります。
エアコンにカビが発生していると気づいても、「掃除するにはどうすればいいか?」「そもそもカビの発生は予防できるのか?」と、疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで本記事では、エアコンに黒カビが発生する原因のほか、クリーニング方法とカビの予防策を解説します。カビの発生原因と正しい掃除方法について詳しく知り、快適な室内環境を取り戻したい方は、ぜひご一読ください。
エアコン内部にカビが発生すると、エアコンの風と共に、カビが室内に放出する可能性があります。カビを吸い込むと健康上の問題を引き起こす場合があるため、注意が必要です。
特に、エアコンの運転中や季節的に使用頻度が増えたとき、以下のような症状がある場合は、エアコン内のカビが原因かもしれません。
健康被害の例 |
症状・疾患名 |
アレルギー |
くしゃみ、鼻水、目や皮膚のかゆみ など |
呼吸器疾患 |
喘息、気管支炎 など |
神経や免疫系への影響 |
倦怠感、息切れ、頭痛 など |
エアコンにカビが発生する主な原因は、カビの成長に必要な3つの条件が整っていることにあります。また、エアコンが設置されている環境も影響している場合があります。
■カビの発生条件
■カビが発生しやすい場所
種類 |
具体的な場所・施設 |
一般住宅 |
・水を使う部屋 ・空気の流れが悪い場所 ・空気の流れが悪く、結露しやすい場所 ・換気扇周辺、エアコン吹出口など |
施設 |
・温泉浴場や温水プール ・食品工場、醸造工場 ・化粧品工場原料貯蔵室(倉庫) ・病院、入院棟、身障者施設など |
参照元:カビの発生しやすい地域、建物、部位など|株式会社日本環境システムズ
ここでは発生条件について、衛生微生物研究センターの情報を参考に、それぞれ詳しく解説していきます。
建物内部の平均温度は、年間を通して約10℃から30℃の範囲です。一方、カビの発生に適した温度は、およそ5℃から35℃前後と言われます。
そのため、室内の温度は「カビが生育するのに適した温度」です。それに加えて水分や栄養(例えば汚れ)といった、カビの成長に必要な他の2つの条件が揃ってしまうと、室内にカビが発生してしまいます。
一般的に、カビは湿度が80%以上の環境で発生しやすいとされています。通常の住宅の平均湿度が30%から80%であることを考えると、通常の条件下では「カビが発生することは少ない」と言えるでしょう。
ただし、エアコン本体に結露が生じた場合、その水分がカビの栄養源となり、結果的にカビが発生することがあります。
カビは、ホコリ・食べカス・人の皮脂・繊維など、多様な物質を栄養源としています。エアコンは通常、手が届きにくい場所に設置されており、一般的には「掃除の頻度が低い」電気機器です。
そのため、エアコン内にはホコリが溜まりやすく、カビが発生しやすい条件が整ってしまうことがあります。
エアコン本体にはさまざまなパーツがありますが、特にカビが発生しやすいのは「ドレンパン」「送風ファン」「吹き出し口」の3箇所です。
なかでも、内部パーツは洗浄が難しく、通常はエアコンの専門業者に掃除を依頼する必要があります。
一方で、自分で清掃できるパーツもあります。「前面パネル(本体カバー)」「フィルター」「風向きルーバー」「吹き出し口」の4つです。それぞれのパーツの場所は、以下のイラストで確認してください。
■家庭用エアコン
■業務用エアコン
特に、業務用エアコンに多く採用されている天井カセット型のタイプでは、ドレンパン(化粧パネル)や内部でカビが発生しやすいという特徴があります。
内部パーツを掃除するための洗浄スプレーが市販されていますが、エアコンは電気機器であるため、洗浄には高度な専門知識が必要です。従って、市販の洗浄スプレーの使用は控えるようにしましょう。
実際に各エアコンメーカーから、洗浄スプレーの使用に関する注意喚起が出されています。
市販の洗浄スプレーでエアコン内部のお手入れはできるか|パナソニック
ここでは、自分で安全に行える「エアコンのパーツの掃除方法」を解説します。掃除を行う際には、以下の点に注意してください。
~カビ取りする際の注意点~
家庭用エアコンの場合、使用しているエアコンの機種によってお掃除方法は異なります。まずは取扱説明書を確認して、掃除を行うようにしましょう。
ここでは一般的な掃除の流れについてご紹介します。
各工程の段取りについて、順番に確認していきましょう。
エアコンのカビ取りを始める前に、以下の準備を行います。
カビ取りの準備 |
理由 |
コンセントを抜く |
誤作動や漏電、感電の恐れがあるため |
ビニールシートなどを敷いておく |
汚れた水が床に垂れ落ちることがあるため |
掃除中にカビが空中に浮遊することがありますので、吸い込まないように「マスクの着用」をおすすめします。
エアコンの汚れを取るときには、以下の手順で進めましょう。
<前面パネル・風向きルーバー・吹き出し口>
エアコンのフィルターを取り外す際や掃除の最中には、カビやホコリが空気中に舞い上がる可能性があります。
空気中に舞ったカビやホコリは、エアコンを使用するときに本体に吸い込まれ、再びカビが付着する原因となることがあるため注意が必要です。
また、口や鼻から吸い込むリスクもあるため、エアコン周辺だけでなく、部屋全体の床や家具などもきちんと掃除しておくと安心です。その結果、エアコンを使用したときにも、より清潔な室内環境を保てるでしょう。
業務用エアコンも、エアフィルターの掃除は必要です。機種によっては昇降グリルが設けられているため、お手入れがしやすくなっています。
基本的な流れは、家庭用エアコンのフィルター掃除とあまり変わりませんが、ここでは業務用エアコンの掃除のポイントについて詳しく説明します。
エアフィルターに付着したホコリは、掃除機を使用するか、水洗いで対応しましょう。洗ったあとは、風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させてから本体に取り付けます。
室内のユニット部分について、特に汚れがひどい箇所は、布を水かぬるま湯に浸し、よく絞ってから拭きましょう。その後、乾いた布で再度拭き上げます。
特に、夏や冬のようにエアコンを頻繁に使用する時期は、シーズンの始まりと終わりにお手入れをすることが重要です。
それぞれのお手入れの流れは、下表のとおりです。
シーズンの使い始め |
1.エアフィルターを掃除する |
シーズンの使い終わり |
1.晴れた日に半日ほど送風運転をする |
エアコンを使い始めるときに送風運転を行うのは、ユニット内部を乾燥させるためです。
また、漏電しゃ断器とは、漏電を検知した際に回路を遮断し、災害の発生を防ぐための装置を指します。漏電しゃ断器がオフの状態で電源が入っていると、不要な電力を消費する可能性があるため、注意が欠かせません。
エアコンにカビを発生させないための予防・解決策は、以下の4つです。
それぞれについて、詳しく解説します。
カビの発生は「汚れ」が原因の一つですが、汚れがなければカビは発生しません。
先に紹介した「自分で掃除できるパーツ」を定期的にお手入れすることで、エアコン内部パーツのカビの発生も抑えることができます。
使用頻度や季節によって異なるため、一概には言えませんが、最低でも月に1回は掃除を行いましょう。特に夏や冬といったエアコンを使う頻度が多くなる時期は、ホコリによってカビ菌がたまりやすいため、こまめにお手入れをするのがおすすめです。
「送風運転」や「内部クリーン運転」を活用することで、エアコンの内部を効果的に乾燥させることができます。
特に梅雨から夏季にかけての冷房運転では、室内の湿気がエアコンに吸い込まれ、内部で結露が発生しやすくなります。水分はカビの発生原因となるため、エアコン使用後は「送風運転」や「内部クリーン運転」を行って、内部を30分から1時間程度乾燥させましょう。
エアコンは、室内の空気を吸い込んで冷たい風や暖かい風として出しています。そのため、室内の空気中に含まれる汚れを外に排出させる「換気」を行うことで、カビの繁殖を効果的に防ぐことができます。
また、換気によって室内の湿気を取り除くことができるため、結露の発生も抑制でき、カビ予防にも効果的です。
最近では、自動で掃除を行う機能を搭載したエアコンが発売されています。
自動洗浄を行うパーツはフィルターのみの機器が多いものの、フィルターが常に清潔な状態に保たれていることで、エアコン本体内部のカビの発生や繁殖を効果的に抑制できます。
除菌機能を備えたエアコンであれば、カビの成長を抑制することが可能です。
例えば、パナソニックの業務用エアコンは、ナノイーX技術を使用してカビの成長を抑制する機能を備えています。
エアコンの黒カビは、温度と水分、ホコリなどの汚れによって発生します。特にフィルターや冷却フィンなど、汚れが溜まりやすい部分はカビの発生源になることがあります。掃除の際は、フィルターの水洗いや送風運転による乾燥、室内ユニットの拭き掃除が効果的です。
また、定期的に換気を行い、室内の湿度をコントロールすることも大切です。エアコンメーカーからは、カビ抑制効果が見込める自動洗浄機能が付いたエアコンも発売されています。
特に、パナソニックの業務用エアコンは、独自のクリーンテクノロジーを駆使して、エアコン内部のカビなどの有害物質の抑制効果(※1)が期待できます。
エアコンのカビが気になったときは、お手入れ頻度を見直すとともに、状況によってはエアコン本体の交換を検討してみてはいかがでしょうか。
※1:【試験機関】(一社)カビ予報研究室 【試験方法】温度25°C、湿度70%にて、室内機(CS-P80U7H)にカビセンサーを設置し、内部クリーン有無の条件において冷房運転(冷房運転3時間、運転停止21時間)を9日間行った後のカビの成長状況を比較
【試験結果】2種のカビで胞子の発芽を抑制する効果を確認。いずれのカビセンサーにおいても、内部クリーン無しではカビ胞子が発芽し菌糸が旺盛に成長したが、内部クリーン有りではカビの成長を抑制した。(試験報告書No.:210804、210810、210805、210811)