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Low-Eガラスとは?種類やメリット、設置するうえで押さえておくべきこと

建築設計において、窓ガラスの選定は建物の快適性と省エネルギー性能を大きく左右する重要な要素です。特に近年は、省エネ基準適合義務の対象拡大に伴い、より高性能な窓材の採用が求められています。
本記事では、省エネ性能の向上に効果的なLow-Eガラスについて、その特徴や種類、設計時の注意点を解説します。

 

 


 ■この記事でわかること

  • Low-Eガラスの基本的な構造と特徴
  • 断熱タイプと遮熱タイプの違いと使い分け
  • 設計・施工時の重要な注意点

Low-Eガラス(ローイーガラス)とは、ガラス表面に「Low-E膜」という金属膜をコーティングしたガラスです。

Low Emissivityガラスの略称であり、「放射率が低いガラス」を意味します。通常のガラスの放射率は0.85なのに対し、Low-Eガラスは0.1以下と極めて低い値です。放射率が低いほど断熱性は向上するため、Low-Eガラスは冬の寒さや夏の暑さを和らげる効果があります。

Low-E膜という金属膜が日射熱や室内の熱を吸収・反射することで、室内の温度変化を抑え、快適な室内を保つ役割を果たしています。

なお、Low-Eガラスを使用した複層ガラスを「Low-E複層ガラス」と呼びます。

引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

 

Low-E複層ガラスには、標準的なLow-E複層ガラスのほかに、中空層に「アルゴンガス」が封入されたタイプもあります。アルゴンガスは熱伝導率が低いため、アルゴンガス入りのLow-E複層ガラスは、さらに高い断熱性能を発揮します。なお、アルゴンガスは電球や蛍光灯などにも使用されている、人体に無害な気体です。

また、Low-E膜がコーティングされている箇所によって、「断熱タイプ」と、「遮熱タイプ」の2種類に分かれています。

断熱タイプ

遮熱タイプ

引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

断熱タイプは室内側にLow-E膜がコーティングしてあるため、日射熱を適度に取り込むことができます。一方、遮熱タイプは室外側にLow-E膜がコーティングしてあるため、日射熱を遮断させる効果が高くなっています。

室内の暖かさや涼しさを室外に逃がしにくい性質は、どちらのタイプも同じです。これらの特性を踏まえ、寒い地域では断熱タイプを、夏場の暑さが厳しい地域や西日を強く受ける窓では遮熱タイプを選択すると良いでしょう。

複層ガラスは複数のガラスから形成されたガラスのことを指します。Low-Eガラスは単板ではなく2枚以上のガラスで形成されるので、複層ガラスの一種だといえます。

複層ガラスには、Low-E複層ガラスのほかに一般複層ガラス、安全複層ガラスなど特性の異なる種類があります。Low-E複層ガラスは熱を吸収・反射することに特化した複層ガラスという位置づけです。

複層ガラスとの違いについて詳しくは以下の記事で紹介します。

 

 

Low-E複層ガラスは、高い断熱性能により室内環境の快適性を向上させる一方で、導入コストなど検討すべき点もあります。ここでは、設計時の判断材料として、具体的なメリットとデメリットを解説します。

 

Low-E複層ガラスのメリットは3つあります。

1つ目は常に快適な空間をつくれることです。通常のガラスでは、朝晩の冷え込みや日射による温度上昇に悩まされることがありますが、Low-E複層ガラスは室内外の熱の出入りを抑えるため、温度変化が起こりにくくなります。

2つ目は省エネ性能の向上を図れることです。Low-E複層ガラスは室内の暖かさや涼しさを保つため、冷暖房の温度や風の強さを抑えても快適な空間をつくりやすいという特徴があります。冷暖房器具の使用を抑えられるため、電気代の節約とともにCO2削減にも貢献します。

3つ目は結露を低減できることです。結露は室外と室内の温度差が激しいほど発生しやすくなりますが、Low-E複層ガラスはその温度差を抑える効果があります。結露はカビの発生につながるため、抑制は空間の快適性を考えるうえで大切なポイントとなります。

 

Low-E複層ガラスのデメリットは、通常のガラスや一般的な複層ガラスと比べて費用が高いことです。しかし、光熱費の節約を考慮すると初期費用の回収は可能で、快適な室内環境の維持といった長期的なメリットを考慮すると、費用対効果に優れているといえるでしょう。

 

 

設計時にLow-E複層ガラスを採用する際は、施工方法や見た目の特徴など、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、実務で特に注意すべき事項について解説します。

 

 

リフォームでLow-E複層ガラスを設置する場合、既存のサッシに入らないことがあります

その場合は専用パーツを併用することで取り付け可能ですが、この方法では結露が発生する可能性があるため、Low-E複層ガラスのメリットである結露対策の効果が薄れる点に注意が必要です。

サッシをまるごと取り替えれば結露対策の効果を維持したまま導入できますが、そのぶん費用は高額になります。

第3の選択肢として、内窓としてLow-E複層ガラスを設置する方法もあります。既存の窓+Low-E複層ガラスの内窓という構成になるため断熱効果は高く、一つの有効な選択肢として検討に値します。

 

Low-Eガラスはコーティングされているので、そうでない窓ガラスに比べて景色の見え方が異なります

以下のパナソニックのLow-Eガラスの場合、断熱タイプはクリアな見え方ですが、Low-E膜のないガラスと比べると見え方が異なります。遮熱タイプはグリーンがかった見え方です。

断熱タイプ(クリア)

遮熱タイプ(グリーン)

引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

なお、すりガラスのようなLow-Eガラス(型ガラス)もあるので、プライバシーの確保が必要な部屋など、用途に合わせて選択することが可能です。

透明ガラス

型ガラス


引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

Low-E複層ガラスは、優れた断熱性能と省エネ効果を持つ高機能ガラスです。

室内の熱が出入りする経路は、窓などの開口部が大きな割合(※)を占めるため、Low-E複層ガラスにすることで建物全体の断熱性・省エネ性の向上につながります。

住宅の場合、冬場の暖房時には室内で暖められた空気の約58%が開口部から逃げ、夏場の冷房時には外部から侵入する熱の約73%が開口部から入り込むとされています。そのため、建物の快適性や省エネ性を向上させるうえで、窓ガラスの素材選びは非常に重要です。

また、2025年4月(予定)には省エネ基準適合義務の対象が広がり、今まで説明義務や届出義務であった小規模非住宅・住宅も省エネ基準適合義務対象となるため、設計士さんにかかる負担は今まで以上に大きくなることが予想されます。

建築士のコア業務である設計に注力できるよう、手間のかかるノンコア業務は各分野の専門家に依頼し、サポートを受けることも選択肢です。パナソニックの「設備設計サポートサービス」は、照明、空調/換気といった設備設計において設計士のみなさんをご支援できます。

照明設備においては照度計算や機器選定など各種設備設計のサポートを、空調/換気設備においては換気量や空調負荷の簡易計算、それに応じた機種選定、確認申請に必要な換気計算書の作成を無料で行なっています。

「具体的にどのようなサポートが可能なのか」「どんな建物でもサポートの対象なのか」といった疑問やご相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

※出典元:省エネルギー建材普及促進センター | 【Q&A】開口部からの熱の出入りは、どの位あるのですか?