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複層ガラスとLow-E複層ガラスの4つの違い|それぞれが適した環境とは

近年、建築物に求められる省エネ性能の水準が高まるなか、窓ガラスの選定は重要な検討事項の一つです。特に、複層ガラスとLow-E複層ガラスのどちらを選ぶべきか迷うケースは多いのではないでしょうか。
本記事では、両者の違いと適した使用環境について、設計実務の観点から解説します。

 

 

 ■この記事でわかること

  • 複層ガラスとLow-E複層ガラスの構造的な違い
  • 両者の性能差と期待できる効果
  • コストと見た目の特徴の違い

複層ガラスとは、2枚以上のガラス板を重ね、その間に「中空層」と呼ばれる空気層を設けた構造のガラスのことです。複層ガラスは、ガラスの組み合わせなどによって種類があり、Low-E複層ガラスも複層ガラスの1つです。

下表は、標準的な複層ガラスとLow-E複層ガラスの違いを、表にまとめたものです。

比較項目

複層ガラス(標準的な複層ガラス)

Low-E複層ガラス

構造(2枚で構成されたガラスの場合)

板ガラス2枚

板ガラスとLow-Eガラスで2枚

性能

Low-E複層ガラスと比べて、断熱・遮熱性能、結露の発生のしにくさに劣る

複層ガラスよりも、断熱・遮熱性能が高く、結露が発生しにくい

価格

Low-E複層ガラスより安い

複層ガラスより高い

ガラスの色

透明

色が付いている

なお、「ペアガラス」も複層ガラスのこと(AGC株式会社の商標登録)を指します。

以下では、標準的な複層ガラスとLow-E複層ガラスの違いを詳しく解説します。

 

標準的な複層ガラスとLow-E複層ガラスの構造の違いは、ガラスに「Low-E膜」という金属膜をコーティングしているかどうかにあります。

■Low-E膜とは?


酸化錫や銀でできた金属膜のことです。この金属膜により熱の移動を少なくします。


2枚で構成された複層ガラスを例に見てみましょう。



標準的な複層ガラスは、通常の板ガラス2枚で構成されています。一方、Low-E複層ガラスは、2枚のうち1枚がLow-E膜という金属膜でコーティングされたガラスで構成されています。

 

Low-E複層ガラスのほうが、標準的な複層ガラスより断熱・遮熱性能が高く、結露が発生しにくい性質を持ちます。Low-E複層ガラスは、ガラス表面にコーティングされているLow-E膜が熱の移動を抑えるためです。

例えば冬場の場合、室外の冷たい空気が室内に伝わりにくく、室内の暖かい空気が室外に逃げるのを防ぎます。これにより冷暖房効率が上がり、電気代の節約になります。

さらに、ガラスの表面温度が外気温に影響されにくいため、室内外の温度差が大きいと発生しやすい結露も抑制します。

なお、Low-E複層ガラスには「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」の2種類がありますが、どちらも断熱性能に優れている点は同じです。違いは日射熱を取り込む量にあり、断熱タイプは日射熱を適度に取り込むので寒い地域に、遮熱タイプは日射熱の多くを遮断するため、夏場の暑さが厳しい地域などに適しています。

また、標準的なLow-E複層ガラスに加えて、熱伝導率が低いアルゴンガスを中空層に封入したタイプもあります。アルゴンガス入りのLow-Eガラスのほうが優れた断熱性能を持ちます。

■複層ガラスの断熱性能の違い(「型」は、すりガラスのような型ガラスを意味します)

引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

Low-Eガラスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

 

Low-E複層ガラスは、標準的な複層ガラスよりも高価です。

メーカーや種類などにもよりますが、小さいサイズであれば価格差は数千円程度です。一方、大きくなると数万円~数十万円の違いが出てきます。断熱性能を向上させたアルゴンガス入りのLow-E複層ガラスは、さらに高価です。

しかし、防犯性能の高い複層ガラスなど、Low-E複層ガラスより高価なものも存在します。


引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

 

Low-E複層ガラスはコーティングをしているので透明ではなく、緑や青色などの色がわずかに付いています。そのため外の景色の見え方が変わります。

※パナソニック製品

Low‐E複層ガラス

(断熱タイプ:クリア)

Low‐E複層ガラス

(遮熱タイプ:グリーン)

引用元:https://sumai.panasonic.jp/outside/uchimado/lineup/

 

ここまで、標準的な複層ガラスとLow-E複層ガラスの違いについて紹介しましたが、どちらを選択するべきか悩んでいる方も少なくないでしょう。選択のポイントは、めざす省エネ性能や、建築物の立地環境、施主様の予算に合わせた性能の優先順位です。

省エネ性能については、国が掲げる2050年のカーボンニュートラル達成に向け、省エネ関連の法改正が進められています。建築物の種類や用途に応じた省エネ基準への適合義務や、建築物の省エネ性能を表示することを義務として課す建築物省エネルギー性能表示制度など、建築物の省エネ性能に関連する基準等が厳しくなっています。

窓は断熱性能の向上を図ることができるため、どの窓にするかで省エネ性能も変わってきます。より高い省エネ性能をめざすなら、Low-E複層ガラスが適しています。

次に、建築物の立地環境と予算について、寒さや結露に悩まされる寒冷地や、暑さが厳しい地域では、断熱性・遮熱性が高く、結露の発生を抑えられるLow-E複層ガラスが適しています。そのような環境では、年間を通じて冷暖房の効率が向上し、長期的には光熱費の削減効果も期待しやすいでしょう。

一方、予算を重視し、そこまで厳しい気候条件でない場合は、標準的な複層ガラスでも、単板ガラス(一枚ガラス)に比べれば効果を発揮します。

参考:省エネ性能表示制度 事業者向け概要資料

 

建築物省エネ法の主な改正点9つ・生じる課題を解説

複層ガラスとLow-E複層ガラスの4つの違いについて解説してきました。構造面では、Low-E膜の有無が大きな違いとなり、これにより断熱・遮熱性能に差が生まれます。ただし、Low-Eガラスは標準的な複層ガラスと比べて価格が高価であり、外の景色の見え方にも特徴があるため、用途や環境に応じた適切な選択が重要です。

また前述の通り、窓ガラスの選定においても省エネの観点が問われる場面が増えてきています。特に、2025年4月(予定)には省エネ基準適合義務の対象が広がります。今まで説明義務や届出義務であった小規模非住宅・住宅も対象となり、設計士さんにかかる負担は今まで以上に大きくなるでしょう。

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