GHPとEHPは、どちらもヒートポンプサイクルによって冷暖房を行う空調システムですが、その特徴には大きな違いがあります。
本記事では、GHPとEHPの特徴の違いやメリット・デメリットを比較し、どちらを選ぶべきかのポイントを解説します。
目次
■この記事でわかること
- GHPとEHPの特徴
- GHPとEHPのメリット・デメリット
- GHPとEHPのどちらかを選ぶ際のポイント
GHPもEHPも、どちらもヒートポンプサイクル（ヒートポンプによる冷暖房システム）によって冷暖房を行う仕組みです。
双方の最大の違いは、ヒートポンプサイクルの中の圧縮機（コンプレッサー）の駆動源です。
これにより、利点や設置に向いている場所に違いが生まれます。
GHPは、都市ガスやプロパンガスを燃料とし、ガスエンジンで圧縮機を駆動するヒートポンプシステムです。冷媒を圧縮して高温にし、膨張させて低温にするサイクルを繰り返すことで、空気中の熱を効率よく移動させます。
ヒートポンプの暖房能力に加え、ガスエンジンの排熱を有効利用するため、暖房の立ち上がりが早いという特徴があります。また、エネルギー源はガスが主体ですが、運転には一部電気も必要です。
GHPは、主に業務用エアコンとして導入されるケースがよく見られます。
EHPは、電気をエネルギー源としているヒートポンプサイクルです。圧縮機の起動に電気を使用する点がGHPとの大きな違いといえるでしょう。
主に、一般家庭のエアコンで使われており、ガスを使用しないため、メンテナンスの手間やコストを抑えやすいのが特徴です。
GHPとEHPの違いを項目ごとに比較したものが以下の表です。
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比較項目 |
GHP |
EHP |
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エネルギー源 |
ガス（都市ガス・プロパンガス） |
電気 |
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圧縮機の 駆動源 |
ガスエンジン |
モーター |
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必要なメンテナンス |
・定期点検 ・保安点検 ・法令点検 ・各部品交換 |
・定期点検 |
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メリット |
・消費電力を抑えて、契約電力の基本料金を削減できる ・暖房効果が高い ・電気設備に依存せず使用できる （災害に強い） ・霜取り運転で暖房が止まらない |
・導入コスト・メンテナンスコストを抑えられる ・比較的設置の自由度が高い ・排気ガスが発生しない |
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デメリット |
・導入コストやメンテナンスコストが高くなりやすい ・設置場所に制限がある ・排気ガスが発生する |
・契約電力の基本料金が高くなる傾向がある ・立ち上がりに時間がかかる ・災害時に電気の供給が止まると使用できない ・暖房時は霜取り運転で暖房が止まる |
各項目の詳細について以下で解説していきます。
前述のとおり、GHPはガスがエネルギー源となっており、ガスエンジンによって圧縮機を駆動させて冷暖房を行います。作動させるには、ガスと電気の両方が必要になります。
一方、EHPは電気がエネルギー源になっており、電気モーターによって圧縮機を駆動させて冷暖房を行います。
作動に必要なのは電気のみとなるため、ガスを使う必要はありません。
GHPはガスエンジンを搭載しているため、定期的なメンテナンスが必須です。
一般的には、GHPは5年ごと、または10,000時間の運転ごとにオイル交換や点火プラグの清掃などの整備が必要で、これらは法律で義務化されています。
メンテナンスを怠ると性能が低下し、ランニングコストが増加する可能性があります。また、環境性能や安全性の低下にも繋がり、従業員や作業者に悪影響となるため注意が必要です。
EHPも定期点検が義務付けられていますが、法的に義務化されている点検がGHPよりも少なく、自由度が高いです。GHPに比べてメンテナンスの負担は軽いと言えます。
ここでは、GHP・EHPそれぞれのメリットについて解説します。
◎GHPのメリット
GHPはガスエンジンの排熱を有効利用するため、暖房の立ち上がりが早く、効率的な運転が可能です。また、外気温が低くても安定して室内を暖めることができ、霜取り運転で暖房が止まることがありません。
■イメージ
また、エネルギー源がプロパンガスである場合、災害時でも供給が絶たれにくいというメリットがあります。
加えてエネルギー効率が良いことから、EHPに比べて消費電力を最大で90%削減することができ、電気代を大幅に軽減できます。
（図1）
◎EHPのメリット
EHPは電気のみで作動するため、ガス配管工事が不要です。このため、設置の自由度が高く、工事の施工期間も短縮できるほか、初期費用やメンテナンスコストも比較的抑えやすいのが特長です。
また、エネルギー源が電気のみであるため、排気ガスを出さず環境への負荷が少ないという点も利点と言えるでしょう。
続いて、それぞれのデメリットについても見ていきましょう。
◎GHPのデメリット
GHPはガス管の設置が必要であることから、初期費用が高くなりやすい傾向があります。
また、EHPに比べて設置に時間がかかり、エンジンの駆動音などの影響で設置場所に制限がかかりやすいです。加えてガス管の劣化などの点検のため定期的にメンテナンスが必要になり、その際の部品交換などにも費用がかかります。
稼働中には排気ガスが発生するため、環境面への配慮も必要です。
◎EHPのデメリット
電気のみを動力源とするEHPは、電力消費が増えやすく、契約電力の基本料金が高くなる傾向があります。特に冷暖房の使用が増える夏や冬は、電気代がかさみやすいでしょう。
また、GHPに比べて暖房の立ち上がりが遅く、空間が設定温度になるのに時間がかかってしまいます。
加えて、暖房時は霜取り運転で暖房が止まったり、災害時に電力供給が止まってしまうと、使用できなくなるというデメリットもあります。
GHPとEHPのどちらを選ぶべきかは、利用目的や使用環境と照らし合わせて検討することが重要です。
メンテナンスのしやすさや機器の耐久性などを考慮し、設置後の使用感を想定して選ぶ必要があります。
また、近年ではガスと電気の両方を活用できる「一体型エアコン」も登場しており、用途や立地条件に応じた柔軟な選択肢が広がっています。
GHPはプロパンガスの場合、災害時でも安定して稼働できる点から、学校や公共施設などの避難所の役割を果たす施設での導入が効果的です。過去には、災害時に空調の停止が原因で高齢者が亡くなるケースがあったことから、病院や介護施設での導入も効果的であると考えられます。
また、EHPに比べ、省エネ性が高く電気料金を抑えることができることから夏場の消費電力を抑えたい場合もGHPは有効です。
他にも、GHPは暖房の立ち上がりが早く、外気温の低下にも強いため、寒冷地や結露が気になる環境でも活躍します。
古い型のGHPを使っている場合、別のGHPに交換するのは難しいですが、EHPであればスムーズに変更ができます。
また、EHPはGHPに比べ設置場所を制限されにくいため、レストランや倉庫など、エアコンの設置場所にこだわりたい場合は有効でしょう。
さらに、施工期間がGHPに比べて短いことから、できるだけ早くエアコンの設置をしたい場合にも選ばれやすくなっています。
参照：ハイブリッド空調 スマートマルチ 【 一体型 】
パナソニックでは、GHPとEHPの両方を1台の室外機に搭載したハイブリッド型エアコンをご用意しています。電気とガスのどちらもエネルギー源として活用できるため、それぞれのメリットを使い分けながら運用することが可能です。
さらに、遠隔監視サービスと連携することで、電気料金やガス料金の変動に応じて運転を自動的に最適化できます。上記の図のように電気代の高騰・ガス代の高騰といったエネルギー料金の変動リスクに対応が可能です。
パナソニック 空質空調社
