1月 6, 2025
21 min read time

ヒートポンプとは?仕組みや構造をわかりやすく解説

ヒートポンプは、空気中の熱を効率的に利用することで、少ない電力で大きな熱エネルギーを得られる技術です。高い省エネルギー性が特徴で、エアコンや給湯器、冷蔵庫など、さまざまな機器に活用されています。

本記事では、ヒートポンプの基本的な仕組みや構造、実用化されている種類などについて解説します。

 

\設備設計に関する手間を"無料"で削減/

パナソニックの
「設備設計サポートサービス」を
詳しく見る

 

 


 ■この記事でわかること

  • ヒートポンプの仕組み・構造
  • ヒートポンプの省エネ性
  • 実用化されているヒートポンプの種類と特徴

ヒートポンプとは

ヒートポンプとは、空気などの熱源から汲み上げた熱を移動することで、熱エネルギーを取り出す機器のことです。

わずかな電気で駆動し、消費する電気エネルギーよりも大きな熱エネルギーを効率よく得られるのが特徴です。省エネルギー性に優れ、CO2の排出量削減にも寄与することから、脱炭素化に向けた技術として注目されています。

ヒートポンプを利用した電化製品としてはエアコンが代表的ですが、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯乾燥機、床暖房、給湯器など、さまざまな機器に使用されています。また、優れた省エネルギー性から大規模施設や産業用の空調、給湯などにも利用が広がっています。


ヒートポンプとは_02

 

 

ヒートポンプの仕組み・構造

ヒートポンプは、熱と冷媒が持つ以下の性質を利用することで、熱源から熱エネルギーを取り出します。

  • 熱:温度が高い方から低い方に移動する
  • 冷媒:圧縮すると高温・高圧になる、膨張させると低温・低圧になる

ヒートポンプは、冷媒を圧縮することによる温度の上昇、膨張させることによる温度の低下を繰り返し、循環させることで熱を移動させます。

具体的には、冷媒が蒸発器で空気中の熱源から熱を吸収・蒸発する→圧縮機に移動して圧縮する→凝縮器に送られ熱を放出して液体になる→膨張弁で減圧して蒸発器に戻される、という仕組みです。

ヒートポンプとは_03
※圧縮式ヒートポンプの仕組み

■ヒートポンプの構造

名称

役割

冷媒

熱を運ぶ役割を担う媒体。圧力や温度によって気体・液体に状態を変化させることで熱を移動させる

蒸発器

外部から熱を取り込むことで冷媒を蒸発させる(熱交換器)

圧縮機

冷媒を圧縮し、高温・高圧化させたうえで凝縮器に送り出す

凝縮器

冷媒を液体化させて熱を放出させる

膨張弁

液体化した冷媒を低温・低圧化させて蒸発器に戻す


例えば、ヒートポンプを利用したエアコンで暖房をかけるとき、冷媒の温度が室外よりも低い場合には外気から熱を吸収、冷媒の温度が室外よりも高い場合には熱を放出することで部屋を暖めます。

冷房の場合はこの逆で、室内の熱を吸収することで温度を下げます。

 

ヒートポンプの省エネ性

ヒートポンプとは_04

ヒートポンプは化石燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させるのではなく、空気中にある熱エネルギーを利用する技術です。分かりやすく言うと、もともとある熱を収集して移動させることで温度を上下させるイメージです。

電気は熱エネルギーとしてではなく動力源として使用されるため、消費電力を少なくできます。少ない電力で大きな熱エネルギーを生み出せる、非常にエネルギー効率の良い技術であることから、前述の通りエアコンをはじめ多くの場面で活用され、普及しています。

 

 

 

 

ヒートポンプの種類

現在実用化されているヒートポンプは、以下の2種類です。


  • 圧縮式ヒートポンプ
  • 吸収式ヒートポンプ

それぞれ利用する冷媒と熱を移動させる方法が異なります。

なお、一般的なヒートポンプは空気熱を利用しますが、なかには地中熱、水源熱、太陽熱などを利用したヒートポンプも存在します。

 

圧縮式ヒートポンプ(空気を冷媒とする)

圧縮式ヒートポンプは、主に空気を熱源として利用する方式です。ヒートポンプの仕組みとして前述したのはこちらの方式で、冷媒の圧縮と膨張を繰り返すことで熱を移動させ、室温を上げる、もしくは下げる仕組みです。

冷媒を圧縮するエネルギー源には、電気やガスが使用されます。

 

吸収式ヒートポンプ(水を冷媒とする)

吸収式ヒートポンプは、水を冷媒として、蒸発・吸収・再生・凝縮を繰り返し、気化熱を利用する方式です。

高温水や水蒸気によって冷媒を蒸発させる→吸収器によって水に戻すことで熱を発生させる→再生器にかけることで再び水蒸気にする→凝縮器で再度水に戻して熱を発生させる、というサイクルによって熱を移動させます。

冷媒を蒸発させるエネルギー源に高温水や水蒸気を利用し、電力は補助として使用されるため、圧縮式ヒートポンプよりも電力消費量が少ない点が特徴です。

\設備設計に関する手間を"無料"で削減/

パナソニックの
「設備設計サポートサービス」を
詳しく見る

 

現在世の中にあるエアコンはヒートポンプ式が主流

現代のエアコンの多くは、省エネ性に優れたヒートポンプ方式が採用されています。ここでは、省エネ性を基準にエアコンを選ぶ方法について紹介します。

 

省エネ性を基準に業務用エアコンを選ぶ

業務用エアコンを選定する際には、機能や用途、使用する空間の広さとあわせて、省エネ性にも着目したいところです。省エネ性能は、省エネ型のエアコンに表示されている省エネラベルから確認できます。

なかでも注目したいのがAPF値(通年エネルギー消費効率)です。これは、年間を通して一定の条件下でエアコンを使用した際の、消費電力量に対する冷暖房能力を示す指標です。数値が高いほど省エネ性能が優れていることを示します。

目安としては、省エネ法で定められている目標基準値より高い製品かどうかを確認しましょう。

■業務用エアコンの基準値(APF値) ※2025年トップランナー基準値

製品区分

/形式

店舗用

マルチエアコン

設備用

4方向天カセット

上記以外

床置直吹形

床置ダクト形

40

6.0

5.1

45

5.9

5.0

50

5.9

5.0

56

5.8

4.9

63

5.8

4.9

80

5.7

4.8

5.7

112

6.0

5.1

5.5

140

5.7

4.8

5.2

4.9

4.7

160

5.5

4.7

5.0

224

5.1

4.3

5.5

4.9

4.9

280

4.8

4.0

5.1

4.7

4.7

335

4.8

400

4.8

450

4.6

500

4.4

504

4.3

※JRA4048:2006に基づく値

 

業務用エアコンのカタログの見方

省エネラベルを含めた業務用エアコンのカタログの見方を、以下の図で紹介します。

241211_パナソニック空室空調社案件_01 (1) (1)
最新の業務用エアコンの省エネ性能や選び方については、以下のページでさらに詳しく解説しています。

 

 

 

まとめ

ヒートポンプは、空気中の熱を効率的に利用することで、少ない電力で大きな熱エネルギーを得られる省エネ技術です。現在では、圧縮式と吸収式の2つの方式が実用化され、幅広い用途で活用されています。

業務用エアコンの分野でも、省エネ性能の高いヒートポンプ技術は標準となっています。APFなどの性能指標を確認することで、より省エネ性に優れた機器選定が可能ですので、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてください。

建築物の省エネ性能については、政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル達成に向けて法改正が進められています。建築物の種類や用途に応じた省エネ基準への適合義務や、建築物の省エネ性能の表示を義務化する建築物省エネルギー性能表示制度など、建築物の省エネ性能に関連する基準等が厳しくなっているといえるでしょう。

パナソニックの「設備設計サポートサービス」は、空調/照明といった設備設計において、設計士さんの業務を支援します。

空調や換気設備においては、プランの設計から省エネ観点も踏まえた機器の選定、照明設備においては照度計算や機器選定など、各種設備設計を無料でサポート。これにより、設計士さんの煩雑な手間を軽減し、自身のコア業務に注力できるお手伝いをします。

どのようなサポートを依頼できるのか、まずはお気軽にご相談ください。

\空調・換気・照明に関する手間を無料で削減/

パナソニックの
「設備設計サポートサービス」を
詳しく見る

 

 

Author 執筆者情報

横松建築設計事務所
代表取締役 / 一級建築士 横松 邦明 氏

国内外で100棟以上の建物の計画/設計経験あり。企業/建築士会/建築士事務所協会等の講演も行っている。
BIMを黎明期以前より取り入れ研究してきた背景から、国土交通省へ協力する日本建築士会連合会BIMタスクフォースのメンバーとして、国内有数のメンバーと共に様々な活動を実施中。現在は東京、栃木、新潟のオフィスを拠点に設計活動を行っている。