2023年7月現在、燃料費の上昇から電気代は高騰を続け、クリニックの経営を圧迫しかねない状況となっています。
本記事では、固定費である電気代の高騰がクリニックの経営に及ぼす影響を解説し、省エネ推進の具体策をご紹介します。
電気代の高騰によるクリニック経営への影響
長期にわたり経営を安定的に維持する上で、売上の獲得と同等の重みを持つのが、コスト管理です。昨今の電気代高騰は、クリニックの経営にも影を落としています。
本来、電気代は削減の工夫を行いやすい固定費
クリニックの経費は、医薬品や備品などにかかる変動費と、人件費や家賃に代表される固定費に大別されます。
売上に伴って増減する変動費とは異なり、固定費は売上にかかわらず発生するのが特徴です。つまり固定費は、急増すると経営の圧迫につながるリスクをはらんでいるといえます。
一般にクリニックでは、人件費や家賃とともに、電気代などの光熱費が固定費のウェイトを占めるといわれています。なぜなら、快適な院内環境で良質な診療を提供するには、医療機器をはじめ、空調・換気、照明などの電気を使用する設備が必要不可欠だからです。
加えて、急な削減が難しい人件費や家賃と比べると、節約の工夫を比較的行いやすい点も、電気代の持つ一つの側面です。
電気代高騰に備える省エネ対策が必要
しかしながら、本来は節減を行いやすいはずの光熱費も、2023年4月現在、原油、天然ガスなどの燃料費上昇のあおりを受けて高騰し、社会全体を巻き込む議論が続いています。
参考までに、四病院団体協議会が2022年12月から2023年1月にかけて会員病院に実施した「電気・ガス料金値上がり調査」のデータを見てみましょう。
2022年の電気料金(3~5月平均):前年比129.7%上昇
2022年の電気料金(6~9月平均):前年比136.1%上昇
(※有効回答数:139施設)
前年と比較して、電気料金は増加していることが分かります。電気代の高水準はさらに続くと見込まれており、診療内容や電気の使用方法いかんによっては、固定費の増加により経営を圧迫する可能性も否めません。従って、クリニックが電気代高騰を乗り越え、健全な経営と一定水準の診療を両立させていくには、賢い節電・省エネ対策の立案と地道な実践が今後も必要になると推測されます。
クリニックで実践できる省エネ方法5選
医療機関で消費される電力量は、「空調」が約38%、「照明」が約37%を占めるとのデータもあります。(出典:資源エネルギー庁推計「平均的な医療機関における用途別電力消費量比率」)つまり空調や照明を中心に、いかに賢く省エネ・節電を行うかが、クリニックの電気代削減における重要なポイントだといえるでしょう。
1.LED照明への更新などによる照明の節電
基本的な節電対策として、蛍光灯や白熱電球をエネルギー効率の良いLED照明に切り替える方法はやはり有効です。電球形LEDランプは、一般的な電球と比較し、消費電力が約86%減、寿命は約40倍という調べもあります。(出典:「住まいの照明BOOK」)
さらには、自動点灯の照明や照度調節ができる照明の導入、照明の間引きなども節電が期待できます。
2.医療機器・OA機器の待機電力の見直し
診療内容によっては、高度医療機器が消費電力の多くを占めているクリニックもあります。特に、MRIは冷却装置が常時稼働しているため、待機電力が大きい機器です。稼働数の見直しのほか、電源停止ができる医療機器については、休院時・平日夜間の電源オフを検討してみましょう。
OA機器は、使用していない時間帯のこまめな電源オフが節電に効果的です。
3.空調機器をきれいに保って機器効率を維持
エアコンや加湿器といった空調機器は、ほこりによるフィルターの目詰まり、内部や室外機の汚れなどにより、風量や機能が低下するばかりか、消費エネルギーが増大します。そのため、定期的な清掃・交換・メンテナンスが欠かせません。
忙しいクリニックであれば、毎日のお手入れやメンテナンスの負担が軽い製品を導入することで、省力化や経費節減を図るのも一つの方法です。
4.エアコンの設定温度の適正化
エアコンの使用では、適正な温度設定も効果的な節電対策となります。環境省によると、夏の冷房で、設定温度を1度上げると約13%の消費電力削減、冬の暖房だと、設定温度1度につき約10%の消費電力削減につながるとのデータもあります。
しかし、安易な設定温度の上げ下げは、患者さんの体調管理に影響を及ぼす恐れもあります。そこで、夏期は25~27度、冬期は20~22度を目安に、設定温度の適正化で快適性と省エネの両立を図るのが得策といえるでしょう。
5.一般換気扇を全熱交換器へ更新
室内の空気環境を清潔に保つために換気は有効という認識が広まったことから、重視するクリニックは増えています。ですが、換気で外気をそのまま取り込むと、その空気の温度調整に余分なエネルギーが消費されます。換気で取り込んだ外気の調整に使われる熱量の「外気負荷」は、冷暖房による室内の調整に使用される総熱量の「空調負荷」において、約30%前後を占めるともいわれています。(出典:環境省)
そこで省エネ効果を高める施策として活用されているのが、換気設備の全熱交換器※1です。全熱交換器とは、換気扇の機能に省エネの機能が追加された換気設備です。捨てられている空気の熱エネルギーを利用することにより、エネルギーの無駄を抑える効果が期待できます。空調負荷の軽減により、空調・換気にかかる電気代の削減にも寄与するでしょう 。
※1排気時に空気と一緒に捨てていた熱を給気時に回収して室内に戻すシステムのこと。給気時の空気の温度を排気時の室内温度に近づけた状態での換気が可能。
省エネのための設備投資で経営の安定化を図ろう
省エネ対策は、固定費削減の意味からも、経営の安定化にとって重要事項であることに間違いはありません。とはいえ、多くのクリニックでは、限られた人員で日々の業務を回しており、省エネ対策に割ける人手は限られているのではないでしょうか。
設備投資は短期的に見ると大きな出費に感じられるかもしれません。しかし、中長期的に見た場合、運用・管理に手間がかからない省エネ設備であれば、かけた費用が無駄になることはなく、経営の安定にもつながるはずです。クリニックを開院・リニューアルする際には、あらかじめ省エネやメンテナンスがしやすい設備の導入を検討しておくと良いでしょう。
パナソニック空質空調社では、エネルギー効率の良い空調・換気設備導入と管理、省エネ対策に関するご相談を承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。