10月 30, 2023
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運転資金の考え方と事業計画

 

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運転資金とは「事業を行うために必要となる資金」のことを指します。クリニックが事業を維持していくために必要な薬剤や機材の仕入れ、従業員の給与、広告などさまざまな費用が「運転資金」に該当します。

クリニック開業に向けて、どれくらい見積もりを立てておくべきか最初に把握できていれば、心強いですよね。本記事では、開業前に知っておきたい資金運用とその調達方法について解説します。

 

 


目次

  • 運転資金とは
    • 運転資金の種類
    • 運転資金と事業計画の考え方
    • 固定費の大半を占めるテナント家賃の目安

 

 

運転資金とは

運転資金とは、「事業を行うために必要となる資金」のことです。内科クリニックであれば、診療する上でかかる機材や薬代など、仕入れにかかるお金が必須となります。そのほか、従業員の給与やクリニックがテナント店舗であれば、その家賃も欠かせません。つまり、クリニックが日々事業を経営するために必要な費用が「運転資金」であり、事業計画時に予め見積もりを立てることが必要となります。

 

運転資金の種類

運転資金は、大きく「固定費」と「変動費」に分かれます。

固定費:売上高とは関係なく、毎月一定額発生する費用

変動費:売上高に比例して、金額が日々変動する費用

  • 事業所の家賃
  • 従業員の給与
  • 福利厚生
  • リース代
  • 広告宣伝費
  • 管理費
  • 保険料  など
  • 薬剤費
  • 検査代
  • 消耗品費
  • 運賃
  • 医師会費  など

固定費と変動費は、クリニックの診療科目や運営規模によって異なります。開業準備を進める際は、どこで誰を対象にどんな診療を提供するのか、事業方針を最初にしっかりと決めて、運転資金の見積もりを立てましょう。必要なスペースや医療機器、人材配置、光熱費などが変わってきます。

 

運転資金と事業計画の考え方

開業時は、事業計画に則ってその範囲内で事業を運営することが大切です。おおよその人件費や家賃などの固定費が、1カ月にどれくらいかかるのか計算しておきましょう。注意すべきは、保険収入が主なクリニックだと、開業直後は入金が発生しない点です。制度上、保険請求したお金の振り込みは早くても2カ月後となります。その間、保険窓口収入の10〜20%の収益で運営しなければならないため、金銭面に余裕を持って開業する必要があります。

開業資金の目安としては、開業時の人員数によっても差がでてきますが、3〜4人程度の規模であれば、家賃の6カ月分は最低限必要になるでしょう。最近はリアルタイムでお金を回収できるファクタリングサービスを利用する人もいますが、あまりおすすめはできません。手数料がかかる上、依存すると資金繰りが悪化する恐れがあるからです。

 

固定費の大半を占めるテナント家賃の目安

固定費の大半を占めるテナント家賃における注意点についてもお伝えします。
家賃は、事業計画と見比べて比率を考える必要があります。目安としては、収入の10%以内に抑えるのがポイントです。例えば、月額50万円のテナントを検討している場合は、クリニックが軌道にのってから月商500万を確実に狙える事業内容かどうかが基準となります。事業計画は、5年後、10年後の未来を予測して作成することが多いですが、できれば開業から3年ほどで軌道にのっている状態を想定しておくことをおすすめします。その時点で、家賃の10倍の月商が得られるのかどうか検討しておきましょう。

 

 

医療分野ならではの変動費

内科クリニックの場合、変動費は薬代と検査代が大半を占めます。おおよそ収入の10%ほどに相当します。歯科の場合は、歯科の材料費と外注技工代で、比率的に保険診療が多い歯科であれば、収入の12〜13%、自費診療が多い場合は20%を上回る程度が目安となります。心療内科は材料費がかからないので、ほぼゼロになります。

そのほか、変動費に影響するものとしては、職員の賞与や医療分野ならではの季節性の要因が含まれます。季節性の変動費としては、インフルエンザや花粉症があります。インフルエンザの時期になると、多くのクリニックで自費診療の収入が増える傾向にあります。10月から12月ぐらいにかけての約3カ月間がピークで、薬代や検査代が大幅に必要になります。また、耳鼻咽喉科では、春や秋などの花粉症の時期に、薬代が変動しやすい傾向があります。

 

 

運転資金の調達方法

ここまで、運転資金に関する具体的な内訳と、経営時の注意点についてお伝えしてきました。では、実際どのように運転資金を調達すればよいのかについても解説します。運転資金の調達には、以下のような方法があります。

 

  1. 自己資金
  2. 親族からの支援金
  3. 銀行からの直接融資(プロパー融資)
  4. 制度融資(保証協会付融資)
  5. 日本政策金融公庫
  6. 補助金・助成金

多くの場合、銀行から融資を受けて運転資金を調達しますが、借入時には審査を受ける必要があります。返済期間や利息などを考慮し、無理のない融資元を探すようにしましょう。また、借入したばかりにもかかわらず、「資金が足りず追加で融資を受けたい」と困った状況になっているクリニックは意外と少なくありません。後から追加で融資を受けるのかなり難しくなるので、事業計画に基づいた資金運用を心がけましょう。社労士や税理士と顧問契約を最初に結んでおくと、運転資金の相談がしやすく、クリニック開業に向けた事業計画を安心して立てられるでしょう。

 

詳しくはこちらもご覧ください「医院開業の資金 - 成功への投資

 

 

まとめ

以上、本記事では開業前に知っておきたい資金運用とその調達方法について解説しました。運転資金は事業計画に沿って、余裕を持って調達することが大切です。本記事で紹介させていただいたクリニックならではの運転資金の考え方にも留意し、開業に備えましょう。

 

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記事監修:MESプロモーション株式会社