8月 23, 2023
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開業を目指す方の物件選び

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今回は「開業を目指す方の物件選び」というテーマでお届けします。

クリニック開業を目指す際、もっとも大切なポイントのひとつが「物件選定」となります。患者の利便性や経営の効率性に大きな影響を及ぼす為、適切な物件を選ぶことは極めて重要です。


目次


 

 

「物件選び」はビジョンと理想の明確化から

では、適切な物件とはどのようなものなのでしょうか?

結論からお伝えすると、自分が医師として思い描いているビジョンや人生を実現できる物件かという点です。そのため、クリニックのコンセプトを決めることが大切です。医師として送りたい理想の人生とは、クリニックに来てもらいたい患者は誰なのか等、腰を据えてじっくりと考えて明確化する。その上で、それらを満たす物件を選びましょう。

 

ここでは物件選びにおいて、抑えていただきたいポイントを紹介します。

 

交通アクセスと立地条件の確認

先生が目指している診療内容やコンセプトによって、都市部で開業した方がよいのか?それとも地方で開業した方が良いのか?で大きく変わってきます。例えば、ゆったりとしたスペースで広々と余裕を持って診療をしたい場合、都市部の物件だと狭い場合も多くかなり制約があります。当然広いスペースの物件を都市部で借りると賃料も高くなります。一方で、地方や郊外ならお手頃な賃料でスペースにゆとりのある物件があるため、これらのコンセプトを実現させやすくなります。

また患者の利便性を考慮する上では交通アクセスの良さは非常に重要です。公共交通機関へのアクセスや駐車場の有無、周辺道路の交通量などをチェックしましょう。患者が通いやすい立地条件であることが重要です。また、競合する医療施設の数や種類も確認し、自身の診療科や専門分野が周辺の需要と一致しているかを考慮しましょう。

地方や郊外で開業する場合のデメリットもいくつかあります。特に最近顕著なのが、医院で働いてくれる人材(スタッフ)の確保です。言うまでもありませんが、地方や郊外は都市部と比べ絶対的に医療従事者が少ないため、努力・工夫して採用活動をしていかないと、なかなか良い人材が集まりにくいという側面があります。逆に都市部には医療従事者の数が多いので、地方や郊外と比較して求人はしやすくなります。

 

 

テナントまたは独立した建物での開業のメリット・デメリット

医院を開業する際の物件の選択肢は、新築物件や既存の医療施設の利用、事務所や店舗の改装などさまざまです。大きく分けると「テナントで開業する」「土地を買い建物を建てて開業する」という2パターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

テナントで開業するメリットとしては、戸建て開業と比較して初期投資を抑えられる点。医院の成長により増床したい場合など他の場所への移転が容易な点。繁華街や商業地域、交通の便の良い場所など、ビジネスに有利な立地を選びやすく場所の選択肢が多い点。デメリットとしては、診療を続ける限り常に賃料を支払い続けなければならない点。物件の所有権を持っていないため、自由に改装や修繕をおこなうことができない点。テナントによっては、営業時間、看板の制限といった所有者や管理会社が定めた制約やルールがある点などが挙げられます。

一方で、建物を建てて開業する一番のメリットは、縛られず自由が利く点でより理想のクリニックづくりを目指しやすいです。医院の建物や土地が自分の資産になるのもテナントと大きく異なる点です。デメリットは、テナント開業と比べ資金がかなりかかる点。一度建てたら移転が容易ではない点などが挙げられます。

 

  テナントで開業する 土地を買い建物を建てて開業する

メリット

  • 初期投資を抑えられる
  • 他の場所への移転が容易
  • 場所の選択肢が多くビジネスに有利な立地を選びやすい
  • フリーレントで一定期間賃料が免除されるテナントもある
  • 色々な制約に縛られず自由が利く
  • 医院の建物や土地が自分の資産になる
デメリット
  • 診療を続ける限り常に賃料を支払いが発生する
  • 保証金が高額になる
  • 物件の所有権を持っていないため、自由に改装や修繕ができない
  • テナントによっては所有者や管理会社が定めた制約やルールがある(例:営業時間、看板の制限など)
  • テナント開業と比べ多額の資金が必要
  • 一度建てたら移転が容易ではない

 

 

費用と収益のバランス

物件の選択は、開業費用や将来の収益性とのバランスを考慮する必要があります。

高額な物件や大規模な改装は、開業時の財政負担を増やす可能性があります。 資金が潤沢でいくらでも自由に使えれば良いのですが、大抵の場合開業予算には上限があります。また 開業後にも運転資金としてお金はどんどん出ていきますので、それを見越した上で予算をしっかりと管理をする必要があります。

多くの場合、お金の管理については先生方の専門分野とは異なるため、苦手、もしくはよく理解できていないケースがほとんどです。信頼できる開業コンサルタントや医療に強い会計事務所などに協力してもらい開業物件の予算を決めることが重要です。予算以上にお金を使ってしまうと、後から自分の首を締める結果にもなりかねませんので 十分注意が必要です。

 

 

コンセプトに合致した物件かどうか

先生が計画を立てたコンセプトに合う物件・立地条件かどうかしっかりと見極めることが重要です。例えば、先生が小児科を開業したいと考えているにもかかわらず、開業場所が都心のオフィス街で子供が少ないエリアだった場合、集患に苦戦するのは目に見えています。今ご紹介したのは極端な例ですが、来院して欲しい患者の層と開業エリアの特性をしっかりと把握しておくことが重要です。それ以外にも開業予定エリアの世帯収入、人口動態、都市開発計画、地域の特性などは抑えておきたいところです。

 

 

同じエリアに存在する競合医院のリサーチ

開業予定地に、先生と同じ科目の競合他院がある場合は、事前にしっかりとチェック・リサーチをしておく必要があります。同じ科目で競合している医院が、地域で既に認知され盛業している場合、後から開業する医院はかなり苦労を強いられることになります。開業した先生方の多くが口を揃えておっしゃっていることですが、開業後、地域の患者に医院を認知してもらい安定的に来院してもらうことは予想以上に大変だということです。

 

 

物件周辺の特徴や人の動きを把握する

開業予定地に実際に出向き、自分の目や耳や感覚で地域の特性や人の流れ、雰囲気を体感することは非常に大切なことです。開業コンサルタントが準備してくれるレポートや行政が出している数値データを参考にすることも大切なことですが、実際に足を運んで自分の目で見てみないことには本当の現地の様子はわかりません。

例えば、開業予定地の飲食店や商店に足を運び、お店の人に話しかけてそれとなしに町の様子や地域で盛業している医院の情報を聞いてみる。時間帯や平日・休日で街の様子は大きく変わる場合があるので、朝・昼・夜と それぞれの時間帯をチェックしたり、平日と土日祝でどれだけ歩いている人の数や特徴が変わるのか見ておくと良いと思います。

 

 

往来する人々にしっかり視認される物件か

地域の方が医院を認知し来院するきっかけは、医院の建物や看板を見て興味を持ち、来院するというケースです。つまり、通行人から医院がしっかりと見え、 視認されることがとても重要なのです。ちなみに、物件で一番目につくところは1階路面店となります。これが、2階・3階とフロアが上がっていったり、地下のテナントになると、途端に視認性が落ちていき通行人から認知されにくくなってきます。

医療モールや医療ビルなどある程度集患が見込める場所、もしくは精神科(メンタルクリニック)など人目に付かない方がよい特殊な科目でない限り、なるべく視認性が良いところを選ぶことが重要です。

 

 

物件選びは開業コンサルタントに相談する方法もある

物件選びは開業の重要なステップで、物件次第でクリニックの経営が大きく影響を受けます。自分で適切な物件を選ぶのはなかなか難しいこともあり、医院開業コンサルタントなど専門家に助けを求めるのもひとつの手です。

医院開業をサポートしている企業では「診療圏調査」というレポートを出してくれる場合が多く、その地域の人口(昼間・夜間)、地域の世帯所得、競合医院数など、様々な情報が得られ、物件選びをおこなう際の大きな判断材料になります。開業場所の候補がある程度決まっているようなら、こちらのサービスを利用してみるのも良いと思います。

しかし、希望を完璧に満たす物件というのはなかなかありませんので、やはりどこかで妥協が必要となるでしょう。しかし、「ここだけは譲れない」というポイントまで曲げてしまうと、後から後悔することになります。物件選びをおこなう前に、希望する理想的な物件の条件や、ここまでなら許容できるという点をまとめておくとよいでしょう。

 

 

まとめ

以上が、開業を目指す方の物件選びについての重要な点です。開業される医師がどんなに素晴らしい治療を提供し、経営面でも優秀な方だったとしても、選んだ物件の場所が悪いと、後に集患やスタッフ採用の面で大きなハンデを背負うことになります。しかも物件を決めて一度そこで開業してしまうと、後から移転することはかなり困難なので、時間をかけて慎重に検討し、自身のビジョンに合った最適な物件を見つけることが重要です。適切な物件を選ぶことで、患者の利便性を高め、効率的な経営を実現することができます。

 

物件選びの後は、資金についても検討が必要です。どのようなクリニックにしたいかによって、準備する資金も大きく変わってきます。建物の改装や内装工事費用については、パナソニックに無料で相談ができます。また、開業したい診療科目に応じて専門の設計事務所のご紹介できます。もちろん、ご予算に応じて直接工務店のご紹介も可能です(一部地域除く)。

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記事監修:MESプロモーション株式会社