クリニックを開業し、運営していくにあたり、スタッフ採用はとても大切な活動のひとつとなります。しかし、採用に関わったことのある医師は少なく、採用に関しては右も左も分からない状況、という方も少なくないでしょう。
そこで、本記事ではスタッフ採用の考え方や募集のタイミング、さらには労務管理や就業規則について解説します。
目次
クリニックにおけるスタッフ構成の考え方
「最初はできるだけ固定費を抑えたい」と考える場合、一般的には医師、看護師、事務、助手の計4名からはじめるケースが多くあります。看護師は、1名を常勤にするか、午前と午後に分けて2名にするか、そのあたりはクリニックによって異なります。医師、看護師、事務、助手の4人がクリニックにいるという環境からスタートし、その後、患者の動向によって増やしていくという流れが一般的です。
繁盛しているクリニックは、人件費にお金をかけているケースが多くあります。さらに、助手よりも看護師などの有資格者の割合が多いクリニックが、最終的に成功するケースがしばしば見られます。看護師は採血や注射など医師に代わってできる医療行為の範囲が広いからです。医師が稼働できる時間には限りがあるので、有資格者の採用の割合を多くして、業務をタスクシフトし効率化を図ることが大切です。
また有資格者の採用活動は、離職の可能性を常に考慮し、採用の割合を高めにして進めることをおすすめします。無資格と有資格の給料の比較では、月に5〜6万円程度しか変わりがありません。
採用媒体の選択
医療人材の代表的な採用媒体としては、グッピー、インディード、ジョブメドレー、エンゲージなどの人材紹介サイトがあります。医療系の採用はコストがかかるため、採用した人材が定着するかどうかも重要です。最近では、気軽に自社の採用サイトを作成する動きも出てきているため、採用サイトを強化する必要性は徐々に高まっています。
医師は、人材紹介サイトを利用して採用するケースもありますが、医局の繋がりや先輩後輩からの紹介で採用するケースもあります。最近では、最初の数年間だけ、分院の院長として知り合いの医師に勤めてもらい、その期間で収益は回収、その後、院長に医院を売却するという取り組みも少しずつ広まってきています。仲の良い医師を集めながら、親戚の会社をどんどん作っていくようなイメージです。
採用活動を行う前には、基本的なことではありますが、自社のホームページに力を入れることも重要です。採用専用リンクをホームページに埋め込むと良いでしょう。求職者は、就職検討先のホームページを必ずチェックします。そのため、ホームページはしっかりと整えることをおすすめします。
都市部と地方の住宅地では、採用方法が多少異なってくるのを覚えておきましょう。地方で看護師やコメディカル等を採用する場合はハローワークが重要な役割を果たします。また紙媒体も有効であるため、求人広告を地域の新聞に掲載すると良い効果が期待できるでしょう。近隣に住んでいるため、交通費がほとんどかからない人を採用することができます。一方で、近隣の人を採用すると、その人材が退職する理由によっては、悪い噂が広まる可能性もあります。そのあたりは、メリットとデメリットを考慮しながら検討しましょう。紙媒体や地元の新聞を活用し、採用コストを最小限に抑えられると理想的です。
他の手段としては、自社の従業員や社外の取引先など、社内外で信頼できる方から、自社に見合った人材を紹介してもらうリファラル採用も有効です。
都市部の場合は、採用媒体が重要な役割を果たします。複数の媒体に求人を出す、人材紹介会社を利用するといった採用活動が一般的です。地方と比べて、どうしても採用コストは高くなりがちです。最近では、リファラル採用やSNSを活用した採用に取り組むクリニックも増えてきています。都市部の求職者は選択肢が多いため、働き方や職場環境のことを気にする場合も多く、福利厚生や働きやすい環境などをしっかりと整えることも重要です。
募集のタイミング
開院の目安時期が決まったタイミングで開始するのが良いでしょう。医療従事者や医療事務などの専門職は引く手数多のため、中々集まらないことも多く、常に募集を出している状態がおすすめです。無事開業メンバーを採用できたとしても、医療業界は人材流動が激しいため、常に何かしらの問い合わせは受けられる体制を整えておくようにしましょう。
クリニックの労務管理と就業規則
クリニック開業にあたっては、労務管理業務も十分に検討していきましょう。労務管理とは、社会保険や福利厚生の加入手続き、勤怠・給与の入力計算など、労働条件にまつわる組織単位の事務的な手続きなどを指します。最初は社労士に入ってもらうことをおすすめします。社労士には、クリニックに応じたオリジナルの就業規則と雇用契約書の作成を依頼することができます。また、職員の最終面接の場で雇用契約書を読み上げてもらい、雇用する人から納得感を得ることが重要です。院長が全て網羅的に説明することはできないため、社労士が入ることで、後に起こりうる「先生そんなこと言っていませんでした」といった契約に関するトラブルを回避することができます。医療従事者は資格のある職業なので、雇用する人が様々な施設を経験しているケースが多くあります。そのため、前の職場と比較して、条件面等で後々トラブルになることや急に転職してしまうケースも少なくありません。立ち上げ時は、プロに介入してもらうのが良いでしょう。最近では、理想の人材を伝えることで、募集から採用まで一括して請け負っている社労士もいます。信頼できる社労士に依頼しましょう。
最近ではDX化の流れを受けて、勤怠管理システムを導入するクリニックも増えています。しかし、開業時に適切な就業規則を設定していないと、後からシステムに移行する際に問題が生じる可能性があります。ご自身のクリニックがどのように就業管理をしていきたいか、事前に決めておくことが重要です。
もう一点、開業後に社労士を変更する場合は、引き継ぎまでしっかりと行うようにしましょう。なぜなら、引き継ぎのタイミングでトラブルになるケースがあり、現場の混乱や事業に悪影響を及ぼすからです。完全に任せっぱなしにはせず、きちんと連携を図りながら仕事を進めていくことが大切です。
まとめ
以上、本記事ではクリニック開業にあたり重要な人員と採用計画についてお伝えしました。クリニックの運営において、どんな人を採用するかはとても大事なポイントとなります。信頼できるスタッフを採用し、患者もスタッフも心地よく過ごすことのできるクリニックを築きましょう。
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記事監修:MESプロモーション株式会社