1月 26, 2024
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院内オペレーション・運営体制と価格設定(開業2ヶ月前)

No.10院内オペレーション・運営体制と価格設定(開業2ヶ月前)

診療する上で効率化や飼い主様満足度の土台となる、病院のオペレーションや運営体制について解説していきます。

 


 

医薬品、フード購入先の選定

薬品・フードについては、どのような卸業者から調達するかを予め決めておきましょう。契約する業者が多すぎると運営体制が非効率になることや配送料が無駄にかかってしまうケースもあるので、予め厳選することが大切です。

 

販促物各種

開業前に問診表やパンフレットなど各種資料も用意しておきます。これらは飼い主様に病気や予防への知識を深め、定期的に通院していただくために重要なツールとなります。また同意書やカルテなどは病院を安全にかつ効率的に運営していく上で必須のツールと言えます。下記が主に必要な資料になります。

~ 必要な資料 ~

  • 同意書(手術の同意書・入院預かりの同意書など)
  • 手術前後の説明資料
  • 診察券
  • 問診表
  • 薬袋
  • カルテ
  • ご紹介カード
  • 獣医師の名刺
  • 病院案内パンフレット
  • 予防や病気説明パンフレット(健康診断案内など)
  • 連携病院リスト
  • 健康診断フィードバック資料

 

 

同意書

開業時に見落としやすいのが、同意書です。最低限、手術に関する同意書と入院・預かりの同意書を用意しましょう。同意書は命にかかわるような極めて重要な事項を飼い主様に説明する義務を果たすと同時に、派生して起こりうる様々なリスクに対して、病院を守る意味もあります。手術や入院預かりの前に必ず、同意書を結ぶようにしましょう。

 

診療時間

スタッフの働きやすさと病院のコンセプトに合わせて診療時間を設定しましょう。遅くまで診療し残業が常習化していた従来の診療スタイルから脱却することを意識しましょう。以前勤務していた病院と同じ時間にする必要はありません。

また、昼休憩時間や手術時間を3時間程設定されている動物もありますが、必要以上に拘束時間が長くなりスタッフの働きやすさが半減します。毎日手術が入ることはないでしょうから、手術が入った場合は、外来予約をカットして手術時間をつくるなどの対応で解決します。

※24時間診療、夜間救急診療がコンセプトの病院は除く

 

従来(勤務していた動物病院)のやり方を踏襲したい気持ちが芽生えてしまうかもしれませんが、「改めて本当に必要なことなのか?」立ち止まって考えてみましょう。

 

予約制

「予約がとれないために診療開始前に動物病院の前に長蛇の列ができている」といった光景はまだ目にすることがあります。しかし、本当に飼い主様と動物が安心して通いやすい病院づくりを目指した場合、待ち時間が異常に長くなる状態は避けるべきでしょう。

予約制の方法

予約制には「予約優先」「時間帯予約制」「完全予約制」の3パターンがあります。時間帯予約制というのは、例えば「10時~10時30分の30分間で最大3件まで予約が取れる」というような設定にすることです。その時間帯に予約が取れた飼い主様は、10時少し前に来院すれば10時30分までの間に診察を受けることができます。あまりにも余裕のある設定にしてしまうと、予約枠が少なくなり、売上が上がりにくくなるため、最低でも30分に2枠は設けると良いです。

WEB予約システム

予約制を導入するにあたっては、WEB予約システムを活用しましょう。様々な会社から予約システムが開発されていますので、費用や管理画面の使いやすさなど総合的に検討していくことが望ましいです。

 

高度診療施設との連携、周辺施設への挨拶回り

1次診療動物病院を開業する場合、難症例や緊急症例に関しては高度診療施設や診療科目での専門動物病院(皮膚病であれば皮膚専門動物病院、夜間救急であれば救急専門動物病院など)へ紹介することになります。わかる範囲でどの病院と連携するかリストアップしておきましょう。飼い主様が通院可能な距離にあるかどうかも把握することが大切です。

また、同じビルに入っているお店や、周辺のペットショップやペットサロンなどへ挨拶回りを実施することが望ましいです。ペットショップやペットサロンに関しては、関係性が深くなれば自院の紹介資料などを設置してもらえることもありますので、良好な関係を築いていけると良いです。

 

獣医師、愛玩動物看護師の業務分担

診療を効率化するためには、獣医師と愛玩動物看護師の業務分担を明確にすることです。まずは、獣医師ができる業務と愛玩動物看護師もできる業務をリストアップしてみましょう。愛玩動物看護師は国家資格化されたことにより、業務範囲が明確に広がりました。看護師が対応可能な業務であれば、獣医師ではなく看護師に業務委譲することで、より効率的なオペレーションが実現できます。また、看護師のやりがいや仕事へのモチベーションも引きあがるでしょう。

開業前に明確に分担が決められないこともあると思いますので、実際に診療をしながら随時効率的なオペレーションをアップデートしていくことが大切です。

 

自院にマッチした価格設定

診療や薬についての価格設定は、しっかりと検討する必要があります。「以前勤務していた病院がこれくらいの費用にしていたから」という理由だけで安易に設定することは避けましょう。病院のコンセプトや周辺の動物病院の価格設定などを踏まえて設定することが重要です。

飼い主様の負担を軽減しようと必要以上に価格を下げてしまうと、周辺の病院とのバランスが崩れ、診療単価が上がらず、病院の売上が伸びにくくなってしまいます。

診療単価

開業直後は、1件あたりの診療単価は平均7千円~8千円程度に落ち着くことが多いでしょう。その後、手術や入院件数が増えたり、新患が安定的に増えたりすることで単価は徐々に伸びていきます。

ホームページや院内に料金の掲載を

価格が決定したら、必ずホームページに料金を掲載しましょう。すべてを掲載する必要はなく主に以下のメジャーな項目を記載していきます。

~ 料金を記載すべき項目 ~

  • 初診料、再診料
  • 超音波診断やレントゲン撮影、血液検査などの検査料
  • 避妊手術、去勢手術などの手術料
  • 健康診断、ワクチン、予防薬などの予防料

 

 

飼い主様とのトラブルで多いのが支払に関する事柄なので、事前にきちんとホームページなどで表示しておくことで、トラブル回避にも繋がります。

また、新患の集患においてもメリットがあります。料金が明確に掲載されている病院と不明瞭な病院を比較した場合、明確に表記されている動物病院を選択します。

院内にも料金表を掲示しておくことで、飼い主様の診療を受ける際の安心感が格段に高まりますので、飼い主様の満足度も高まるでしょう。

 

 

監修者プロフィール

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ねこのタミ 代表取締役  / 開業・経営アドバイザー 辻 建三氏

立命館大学経済学部卒業。経営コンサルティング会社の医療グループ内の中途社員では、最速且つ初のチームリーダーに昇格。動物病院チームを立ち上げ、クライアント先の業績を平均で120%伸ばしており、持続安定的な病院経営づくりのコンサルティングを実施。自ら動物病院を開業し、そこから得たノウハウで開業・経営アドバイザーを実施。