1月 24, 2024
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機器・機材の正しい選択(開業8ヶ月前)

No.4機器・機材の正しい選択(開業8ヶ月前)

開業においては機器・機材の調達と内装施工が最も高額になりますので、よく考えて選定していくことが必要です。

 



 

どのような機器・機材を選ぶか

ご自身が開業する動物病院の規模や方向性によって必要な機器・機材は変わっていきます。
一般的な1次診療病院で必要な機器としては主に以下のものが挙げられるでしょう。

  • 診察室:診察台、検眼検耳鏡、血圧計など
  • 検査:顕微鏡、血球検査器、生化学検査器、超音波診断装置など
  • 処置:処置台、シンクなど
  • 手術・X線:手術台、無影灯、CR装置、麻酔器、生体モニター、人工呼吸器、電気メス、滅菌器、X線装置など
  • 入院:ゲージ、ICUなど
  • 薬局:分包機など
  • その他:酸素ボンベなど

 

機器・機材の卸業者(ディーラー)

動物病院の機器・機材の取り扱いを行っている卸業者はいくつかあります。対応可能エリアや中古機器をどれくらい取り扱っているかによって業者間の違いがあります。まずは複数の機器・機器卸業者との面談を行い、いくつか相見積もりを実施しましょう。

 

新品か?中古か?

全てを新品で購入すると非常に高額になります。そのため、中古で充分使える機器・機材があれば、中古も含めて検討していきましょう。
機器・機材は獣医師のこだわりが反映されやすい領域のため、開業時から色々と機器・機材を集めたいという方も多い傾向にあります。しかし、開業時に全部集めると費用が膨大にかかります。開業には他にも想定外の出費がかさむことも多いため、優先順位をつけて機器・機材を購入しましょう。開業後、資金に余裕がでてきたら、ほしい機器・機材を新品で買い足していくことも可能です。


新品が望ましい機器・機材

  • 中古が市場に出回っていない機器・機材  
  • コンセプト上、最新の機能を搭載したほうがよい機器・機材
  • こだわりのある機器・機材
  • 精密機器・機材


中古でもよい機器

  • ゲージなどの精密機器・機材以外

※精密機器・機材である超音波診断装置は、最新ではなくても比較的新しい中古であれば問題ないこともあります。
※中古の機器・機材に関しては、事前に動作確認を獣医師自ら行うことをおすすめします。

 

高額なモノはリースを検討

リースにはメリット、デメリットがありますが、状況によってはリースも検討してみましょう。
動物病院でリースが活用されるケースとして、超音波診断装置やパソコンなどが挙げられます。5年周期で買い替えた方がいいモノをリースとして活用するといいです。

 

👍リース利用によるメリット👍

  • 現金をより多く手元に残せる
    開業準備には想定外の出費も発生することがあり、当初よりも出費が多くなる傾向にあります。よって、少しでも現金を手元に残し、開業後の運転資金に充てられることで精神的にも余裕ができ、安心材料になるでしょう。リースであれば、高額な機器・機材も月々払いのため、支払の負担が軽減できます。また保証も手厚く、フォロー体制も良いといえます。

  • 型落ちしやすい機器・機材は乗り換えが簡単
    超音波診断装置などの一部の精密機器・機材の中には数年という短い期間でスペックが大きく変わるものがあります。そのような機器・機材はわざわざ購入せず、リースにした方がよいでしょう。購入した場合は処分に費用が掛かることもあります。

🚨リース利用によるデメリット🚨

  • 途中解約ができない
    リースは原則、途中解約ができないため契約満了まで支払う必要があります。

  • 支払い総額が高額になるケースも
    1.7~1.85%の利率が発生するため、結果的に購入するよりも支払総額は高くなります。

 


 

開業後は補助金活用も検討

機器・機材は高額になるため、国や市町村からの補助金を賢く活用することを検討しましょう。機器・機材購入に活用できる補助金には、「ものづくり補助金」「IT補助金」があります。

ただし、開業前から活用できる補助金はそれほど多くないため、開業後に補助金を申請することになるでしょう。また、ものづくり補助金やIT補助金は、機器・機材を購入した後に補助金の交付があるため、手元に機器・機材を購入するための現金を用意しておかなければいけません。

※他にも開業場所の市町村特有の補助金もある場合があります。

 

機器見積もりの相場

新品・中古の比率や、犬猫の動物病院・専門性が高い動物病院かなどによっても相場は異なりますが、参考に以下に記載します。※一つの目安と考えていただければと思います。

  • 猫専門などの専門病院の場合:1千~1千5百万円
  • 一般的な犬猫の1次診療動物病院の場合:1千5百~2千万円
  • 1.5次診療をする動物病院の場合:2千万円以上

リハビリ専門、スペイ専門などの専門病院は比較的機器・機材の費用を抑えられます。

 

 

「機器・機材へのこだわり」の落とし穴

獣医師の方に多いケースですが、ご自身の病院を作り上げるということで、こだわりが強くなってしまうことがあります。こだわりというのは、際限がありません。特に機器・機材に対してこだわりが強すぎてしまうと、調達費用が莫大になってしまいます。臨床医としては、高スペックな機器・機材の方が魅力的に感じられるかと思いますが、優先順位をつけて選定していくようにしましょう。開業後、安定的に業績がキープでき、資金に余裕が出てきた際に高スペックの機器・機材の買い替えでの対応を検討しましょう。

 

 

 

 

監修者プロフィール

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ねこのタミ 代表取締役  / 開業・経営アドバイザー 辻 建三氏

立命館大学経済学部卒業。経営コンサルティング会社の医療グループ内の中途社員では、最速且つ初のチームリーダーに昇格。動物病院チームを立ち上げ、クライアント先の業績を平均で120%伸ばしており、持続安定的な病院経営づくりのコンサルティングを実施。自ら動物病院を開業し、そこから得たノウハウで開業・経営アドバイザーを実施。