1月 26, 2024
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知っておくべき動物病院経営のマーケティング・マネジメント (開業1ヶ月前)

No.11知っておくべき動物病院経営のマーケティング・マネジメント(開業1ヶ月前)

開業1か月前は、開業準備が佳境を迎え、細かい事務的な準備を残すのみとなった頃です。備品整理や契約手続きが増えてくる頃ですので、多忙を極めることかと思いますが、時間を作って開業前の今だからこそ、経営上必要な知識をインプットしておくと良いです。

 


 

マーケティングについて

まずは売上に直結するマーケティングについて解説します。

目標数値の概要

開業した後が本当のスタートです。そして、これからご自身の理想とする病院を目指す、長い旅が始まります。動物病院の院長として開業した以上は、病院の経営にも気を配らねばいけません。

つまり、獣医師として臨床のみに集中すればよいというものではなく、患者数、診療単価、原価など売上やキャッシュフローなどの財務領域にも意識を向けることになります。よって、指針となる経営上の数値を事前に把握しておきましょう。

 ~ 指針となる経営数値 ~

  • 売上500万円以上/月
  • 新患数50名以上/月

 

 

なお、開業初月で目指す数値はこちらになります。

~ 開業初月の目標数値 ~

  • 売上100万円以上/月
  • 延べ患者数130件以上/月

 

 

開業後によくある失敗ケース

開業直後の病院は、まだルールが決まっていないこともあり、スタッフも働き慣れていないことがあるため、診療上の様々なアクシデントや想定外のトラブルなどが生じることがあります。

~ トラブル事例 ~

  • ホームページがまだ完成していない
  • 予約制にしているが待ち時間が長くなってしまった
  • 機器機材の不調があり、使用できないものがある
  • ネット回線が正常に機能していない
  • 必要な薬がまだ届かない
  • 支払いがかさみ、想定以上に口座の残金が減ってしまった

 

 

トラブルが多く、すぐには思い通りに診療が進まないこともあるため、心理的にストレスを感じることもあると思いますが、一つ一つスタッフとともにトラブルに対処していくことで、病院としての体力・筋力がついていきます。
早期に売上を上げてキャッシュを増やすことが、心理的ストレスを軽減し、トラブルへの対処も楽にできるようになります。

つまり、この時期こそ新患集患を疎かにしないことが重要です。予約枠がたくさん空いている状態では、元も子もありません。

 

ホームページへのアクセスを増やすために

開業後は新患を増やすことが最大の課題といっても過言ではありません。新患は過半数がホームページ経由で来院されます。よって、ホームページを完成させることと、ホームページへのアクセスを増やすことに注力しましょう。

ホームページが完成していないようであれば、最速で完成を目指しましょう。

 🗒️新患集患へのWEB広告投資を!🗒️

月額10万円以上の予算で広告を実施していきましょう。開業直後は出費を不安視されると思いますが、この時期はホームページの検索順位が上位に表示されることは難しく、WEB広告を出稿しない限りはホームページ経由での新規集患は難しいといえます。さらに、人通りの多い路面にある病院でなければ、近くを通って病院のことを知り来院をするというケースは  ほとんどありません。また、口コミが広がるのにも時間がかかります。よって、開業直後の今こそ予約を埋めるように力を尽くすことが重要です。

参考:新患を増やすためのホームページ制作・WEB広告 >

 

広告投資をするのであれば、最優先すべきはGoogle広告(WEB広告)です。地域雑誌などオフラインの広告を検討されることもあると思いますが、集患効果の即効性と反響の高いものはWEB広告となります。

 

Googleマップ対策

無料かつ新患集患に有効な取り組みにGoogleマップ対策があります。

飼い主様はその動物病院が本当に安心できるところなのか、事前に確認されることが多いです。その時に、Googleマップの口コミの評価をチェックします。また、口コミ評価以外にも、Googleマップ上の病院の情報(診療時間、ホームページのURL、電話番号など)も同時にチェックされるので、しっかりと掲載するようにしましょう。

・病院情報は充実しているか

・口コミの件数と評価は高いか

・病院の内部や動物の写真が掲載されているか

など飼い主様に伝えるべき情報が充実していることで、Googleマップ内の表示順位も高まっていきます。それにより、飼い主様の閲覧数が増え、新患の集患に繋がります。

具体的には以下のことを実施しましょう。

 ~ Googleマップ対策 ~

  1. 登録作業:Googleマップに病院を登録します。
  2. ビジネスプロフィール:病院情報はすべて埋め、充実させます。
  3. 写真の登録:病院内外の写真をアップします。 ※動画も効果的
  4. 商品の登録:健康診断、手術、検査などを登録します。
  5. 口コミ増加:飼い主様から口コミ入力していただくように案内をします。
  6. 口コミの返信:評価の悪い口コミにも返信をします。

 

 

休診日などがある場合は、Googleマップにも随時、反映するようにしましょう。

 

SNS(インスタグラム、YouTube)

SNS対策の優先順位は高くはありませんが、開業後に余裕がでてきましたら、ぜひ着手するとよいです。ただし、最低でも月に1回以上の更新を継続することが大切です。

なおSNS経由で新患が来院する比率は全体の5%程度と低いですが、通院中の飼い主様に対して継続来院を促す(飼い主様をグリップする)目的としては効果があるといえます。

 🗒️インスタグラム対策のポイント🗒️

フォロワーは1,000以上を目指しましょう。理想は週1回ペースでの投稿です。継続して投稿することが大切です。
投稿内容は、普段の診療の風景、病院の雰囲気、病気予防の啓蒙などがおすすめです。

 🗒️Youtube対策のポイント🗒️

動画の編集などに時間がかかりますので、編集などは外注した方が良いでしょう。YouTubeの活用として有益な方法として、通院中の飼い主様に口頭では説明しにくい事柄を動画化してYouTubeにアップすることです。YouTube経由から新規集患を目指すのではなく、あくまでの飼い主様への情報提供の一助としての位置づけです。

例えば、

  • 薬の飲ませ方 
  • 爪切りの仕方
  • 歯磨きの仕方
  • 自宅での錠剤のカットの仕方

などがよいでしょう。

 

マネジメントについて

次に、スタッフをまとめるためのマネジメントの取り組みについてです。

病院のコンセプトとビジョンを共有

開業準備段階では、どのような病院を目指すかコンセプトを明確にしてきました。それを飼い主様やスタッフに伝えるために、コンセプトを中核に据えて、企業理念、ミッション、ビジョン、バリュー、クレドという形に落とし込んでいきましょう。

 ~ コンセプト共有のために作るもの ~

  • 企業理念・・・ 企業の核となる部分、最も大切にする考えです(病院のコンセプト)
  • ミッション・・・使命の部分であり、企業として社会にどう貢献していくか
  • ビジョン・・・ 企業としてどうしていくか、目標を示したもの
  • バリュー・・・ 自分たちが社会にどんな価値を提供していくかを明示したもの
  • クレド・・・  ミッション・ビジョン・バリューを達成するための行動指針の部分

 


これらは常にスタッフの目に見える場所に設置(スタッフルームなど)すると良いです。

 

ルールブックの作成

勤務上、起こりうる事案について、スタッフの勤務ルールをきちんと文字としてまとめたルールブックを作成しましょう。就業規則には掲載がない、働く上で起こりうる事案について病院としてどのような対応をするのかを明記したものになります。ルールブックを作成することが、スタッフの働きやすさに繋がります。経営者側もルールが明確になっているとスタッフの質問に逐一対応しなくてもよくなるため、効率化にもなります。新入社員が増えた場合にもスムーズに勤務上の情報共有ができます。

 ~ ルールブックの内容 ~

  • クリニックのミッション、ビジョン、バリュー
  • 出退勤・残業・欠勤
  • 遅刻・欠勤・早退
  • 休日・休暇 その他休暇・振替休日
  • 有給・申請方法
  • 会社費用負担
  • セミナー・研修
  • 服飾規定
  • 機器・機材設備の破損
  • 昇給・賞与
  • 調剤・投薬の価格
  • 駐車場
  • WEB関係の取り組み(HPのブログなど)
  • その他

 


初めからすべてルール化することは難しいため、徐々に追記していきましょう。

 

定期ミーティングの実施

開業時から定期的に従業員とのミーティングをする習慣化をしていきましょう。日々の診療に追われて、なかなか病院全体としての課題解決や全体共有が疎かになるのを防ぐことができます。

スタッフが全員集合し、現在の病院の運営上の課題解決やオペレーションのルール決めなどをします。他にも病院のビジョンの共有や売上原価など数値の共有をするとよいでしょう。

 ~ ミーティング時のポイント ~

  • ファシリテーター(司会のような役割)をつける
  • その場で決定できることは決定する
  • 月に1回の頻度、1時間程度で実施する

 

 

個人面談の実施

定期的にスタッフ一人ひとりと面談をすることも大事です。面談の頻度ですが、状況に応じて決めていけばよいですが、少なくとも半年に1回は行いましょう。ボーナス評価のタイミングで実施する場合が多いです。

個人面談でお話する内容例は下記になります。

~ 個人面談時のトピック例 ~

  • 勤務していて困ったことや悩みはないか
  • 病院運営をもっとよくするためのアイディアはないか
  • スタッフのスキルのフィードバック
  • スタッフのキャリアビジョン

 

マネジメントの領域は未経験の方が多いと思いますので、試行錯誤しながらチャレンジしてみましょう。もし院長だけでマネジメントにチャレンジすることが困難であれば、外部のコンサルタントに相談することも視野に入れるとよいです。動物病院は院長1人では経営できません。スタッフ全員が足並みをそろえて運営することを目指しましょう  。

 

監修者プロフィール

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ねこのタミ 代表取締役  / 開業・経営アドバイザー 辻 建三氏

立命館大学経済学部卒業。経営コンサルティング会社の医療グループ内の中途社員では、最速且つ初のチームリーダーに昇格。動物病院チームを立ち上げ、クライアント先の業績を平均で120%伸ばしており、持続安定的な病院経営づくりのコンサルティングを実施。自ら動物病院を開業し、そこから得たノウハウで開業・経営アドバイザーを実施。