5月 22, 2025
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BELSの申請費用の相場を非住宅・住宅に分けて紹介

建築物の省エネ性能を「見える化」する第三者評価制度であるBELS。認証を受けるためには、申請書類を作成のうえ評価機関への審査依頼が必要です。

そのためかかる申請費用は、建築物の規模や用途、評価機関によって異なってきます。

本記事では、BELSの申請のために必要となる費用について、内訳や相場、コストを抑える方法について解説します。

 



 ■この記事でわかること

  • BELS認証にかかる申請費用の内訳
  • 住宅・非住宅それぞれの場合の申請費用の相場
  • 申請費用を抑えるための方法

BELS認証にかかる申請費用の内訳

BELS(ベルス/建築物省エネルギー性能表示制度)は、建築物の省エネ性能を「見える化」する第三者評価制度です。一般社団法人 住宅性能評価・表示協会が運営しており、登録された評価機関が実際の評価・表示を行います。

なお、BELS認証そのものは義務ではありません。省エネ性能の「表示」が法律で求められているだけであり、自己評価による表示も認められています。

とはいえ、第三者である評価機関の認証を受けることで、以下のようなメリットがあります。


  • 買い手・借り手に対して、省エネ性能の信頼性をアピールできる
  • ZEH・ZEBマークの表示が可能になる
  • 一部の補助金制度の申請に活用できる場合がある

 

 

BELSの認証を受けるには申請書類を用意し、評価機関への審査依頼が必要です。

BELS認証の取得には大きく分けて「申請書類の作成代行費用」と「評価機関へ省エネ性能の評価を依頼する際の申請費用」の2つの費用がかかります。

①申請書類の作成代行費用

・BELSに評価を必要な書類の作成代行費用


<BELSの申請書類の一部>


■図書の一例

付近見取図/配置図/仕様書/各階平面図/床面積求積図/立面図/断面図/各部詳細図/機器表/設備仕様書/設備平面図/制御図


■計算書の一例

一次エネルギー消費量および外皮計算書


■その他必要な書類

ZEB計算書/外皮計算根拠資料(図面等)/改修前のBEIに関する書類(計算書・図面等)

②評価機関へ省エネ性能の評価を依頼する際の申請費用

建築物の省エネ性能を評価してもらうのに必要な費用

 

①申請書類の作成代行費用

申請書類は設計士さん自身で用意することも可能ですが、省エネ計算の作業は専門性が高く、手間もかかります。設計士さんのコア業務と並行して行うには時間的な負担が大きくなる可能性があり、実務上は専門家に作成を依頼するケースが一般的です。

代行費用は依頼先によって異なり、サポート内容や作業の範囲によって変動するため、事前に確認するとよいでしょう。

もちろん申請には費用がかかりますが、そもそもBELSの評価基準を満たさなければ申請自体ができません。評価基準である星(★)を確実に取得したい場合には、単なる書類作成ではなく、機器選定から支援してくれる専門家を選ぶことが重要です。

 

②評価機関へ評価を依頼する際の申請費用

評価機関へ依頼する際の申請費用は、評価機関ごとに異なります。詳しくは次の項目で説明しますが、相場は以下の通りです。

住宅

<一戸建て>
3~8万円

<共同住宅>

・住戸のみ:基本料金(6~11万円)+戸あたり料金(2,000~6,000円)×住戸数

・建築物全体:基本料金(6~11万円)+戸あたり料金(2,000~6,000円)×住戸数+共用部料金(一律11万円、あるいは1,000円×住戸数など)

非住宅

数万円(延床面積500未満)~55万円(延床面積50,000~100,000未満)


※建物の規模が大きくなれば100万円を超えるケースもある

ただし、自己評価を選択すれば、評価機関への依頼が不要となり、費用を抑えることが可能です。

BELSの評価機関に依頼する際の申請費用

上述のとおりBELSの申請費用は基本的に「住宅」と「非住宅」とで分かれていますが、実際には建築物の面積や用途などに応じて細かく料金が設定されています。

「住宅」と「非住宅」に分けて、評価機関へ依頼する際の相場を見ていきましょう。

【非住宅】申請費用の相場

非住宅の場合、主に「モデル建物法」と「標準入力法」の2つの評価方法があり、選択する方法によって費用が異なります。

モデル建物法

モデル建物法とは、過去の実績をもとに構築された建築モデルを使って評価する方法です。
代表的な建築モデルと照らし合わせて評価を行うため、入力項目が限定されており、主な居室の簡易的な計算のみで済む点が特徴です。

そのため、手間が少なく比較的申請しやすい方法といえます。

モデル建物法でBELSの評価を依頼する場合の相場は、以下の表のように「面積」と「用途」に応じて費用が決まっていることが一般的です。

延床面積

(平方メートル)

用途A

(学校/百貨店/飲食店/事務所等)

用途B

(工場/倉庫等)

用途C

(老人ホーム/病院/ホテル/集会場等)

500未満

~9万円

~9万円

~17万円

500~1,000未満

9~10万円

8~9万円

9~19万円

1,000~2,000未満

9~12万円

9~11万円

9~21万円

2,000~3,000未満

13~15万円

11~15万円

15~23万円

3,000~4,000未満

13~18万円

13~15万円

15~25万円

4,000~5,000未満

13~21万円

13~17万円

15~29万円

5,000~10,000未満

17~24万円

17~23万円

20~33万円

10,000~20,000未満

20~29万円

20~28万円

28~39万円

20,000~50,000未満

22~35万円

22~34万円

33~44万円

50,000~100,000未満

28~43万円

28~40万円

40~55万円

※税込
※あくまで目安であり、依頼する評価機関によって料金は異なります。

建築物の規模が大きくなるほど評価料金は高くなる傾向にあり、100万円を超えるケースもあります。

また、モデル数(評価に使うパターンの数)に応じて、基本料金に1.0〜1.3倍の係数が加算されることもあるため事前確認が必要です。

 

評価内容による増額・減額等

モデル建物法か標準入力法かは問わず、評価機関や評価内容によって費用が加算・減額される場合があります。

<増額になるケースの一例>

 

  • 改修前後の評価を行う場合
  • ZEB表示を希望する場合


<減額になるケースの一例>

 

 「建築物エネルギー消費性能適合性判定」などの結果を利用した申請


また、複数用途が混在する建物では、評価機関ごとに異なるルールが適用されることがあります。

 

  • 用途C、B、Aのうち、優先順位が高いものを基準にする
  • 用途Cが含まれていれば用途Cの料金を適用する


たとえば、評価機関によって上記のように対応が分かれるため、申請前にルールを確認しておくと安心です。

BELSの申請には費用がかかりますが、それ以前に評価基準を満たしていなければ申請できません。設計初期から評価基準を見据えて対応できる専門家に相談することが重要です。

【住宅】申請費用の相場

住宅の申請費用は、「戸建住宅」か「共同住宅」かで変わることが一般的です。

 

一戸建て

一戸建てのBELSの申請費用は、「BELSの単独審査」と「その他の審査との併願審査」で料金が異なります。

単独審査

3~6万円

併願審査

(設計住宅性能評価書/長期優良住宅認定技術的審査/低炭素認定技術的審査等)

8,000~3.5万円

※税込
※あくまで目安であり、評価機関によって料金は異なります。

併願審査の場合、BELS以外の審査結果を用いてBELSの評価を行うことが可能です。
一部の審査を省略できるため、その分費用が抑えられている傾向にあります。

 

共同住宅

共同住宅のBELSの申請費用は、一戸建てと同様に「BELSの単独審査」と「その他の審査との併願審査」で料金が異なることに加えて、「住戸のみの審査」か「建築物全体での審査」かで料金が変わることが一般的です。

単独審査

住戸のみの審査

<基本料金+戸あたり料金×住戸数>


■基本料金:6~11万円

■戸あたり:2,000~6,000円

建築物全体での審査

<基本料金+戸あたり料金×住戸数+共用部料金>


■基本料金:6~11万円

■戸あたり:2,000~6,000円

■共用部料金:一律11万円(あるいは1,000円×住戸数など)

併願審査

(設計住宅性能評価書/長期優良住宅認定技術的審査/低炭素認定技術的審査等)

「上記審査料金の2分の1の額」や「減額」

 ※税込
※あくまで目安であり、評価機関によって料金は異なります。

また、構造の違い(木造・RC造など)によっても料金が変わるため、評価機関ごとに費用体系を確認することが重要です。

1住戸のみの申請の場合は、評価機関によって「一戸建て住宅の審査料金」あるいは「一戸建て住宅の審査料金に2を乗じた額」が適用されるケースが多く見られます。

 

評価内容による増額・減額等

一戸建て・共同住宅ともに、評価機関や評価内容によって増額または減額になる場合があります。

<増額になるケースの一例>

 

  • 改修前後の評価を行う場合
  • 評価書を発行する場合(1戸あたり数千円)

 

<減額になるケースの一例>

 

  共同住宅等で、共用部の審査を必要としない場合(長屋、共用部省略等)

 

 

BELSの申請費用を抑える方法

BELSの申請費用を抑える方法は以下の通りです。


1.書類作成を自ら行う

評価機関に提出する申請書類を設計士さん自身で作成すれば、外部委託費用を抑えられます。ただし、省エネ計算の作業は複雑で通常業務に影響が出る可能性もあるため、作業負担とのバランスを検討することが大切です。


2.複数の評価機関の料金を比べる

BELSの申請費用は評価機関によって大きく異なるため、事前に複数の評価機関の料金を比較し、より低コストな機関を選ぶことで費用を抑えられます。なお、評価機関によっては対応地域が限定されている場合があるため、対応可否を事前に確認しましょう。


3.自己評価を行う

自己評価であれば、第三者機関への依頼が不要となり、申請費用をかけずに済みます。
ただし、BELSのような第三者評価と比べると信頼性は劣る点に注意しましょう。

 

まとめると、BELSの申請費用を大きく抑えるには外部への依頼をしないことが有効です。
とくに申請費用が高額になりがちな非住宅の場合、書類作成や省エネ性能の評価をご自身で行うことによる削減効果は高いでしょう。

しかし、一方で、業務負担やスケジュールへの影響も無視できません。また、そもそもBELSの評価基準を満たさなければ申請自体できません。評価基準を確実に満たして申請するためにも、機器選定から支援してくれる専門家に相談するのが得策といえるでしょう。

 

まとめ

BELSの申請には「申請書類の作成代行費用」と「評価機関へ省エネ性能の評価を依頼する際の申請費用」の2つがかかります。

BELSの申請にかかる費用は、建築物の規模や用途によって大きく異なります。また、評価機関によっても料金体系が異なるため、複数の評価機関の料金を比較し、最適な選択をすることが重要です。

書類を自分で作成し、自己評価を活用することで費用を大きく削減することも可能ですが、省エネ計算や設備設計には高度な専門知識が求められます。

また、自己評価はBELSと比べると信頼性に劣ることに注意が必要です。そのため、申請に必要な書類の作成は各分野の専門家や評価機関に依頼するのが安心です。