建物の省エネ対策を行うにあたって、「BELS」や「ZEH」といった制度について知りたいという方も多いでしょう。BELSとZEHは、いずれも省エネ対策を目的とした制度ですが、定義や役割がそれぞれ異なります。
本記事では、BELSとZEHの違いや関連性を解説したうえで、BELSでZEHマークを表示する流れについても紹介します。
■この記事でわかること
- BELSとZEHの違い
- BELSとZEHの関連性
- BELSでZEHマークを表示する流れ
BELSとZEHの違い
BELSとZEHはどちらも省エネ対策の取り組みですが、その定義は異なります。それぞれの違いを詳しく解説します。
BELSは省エネ性能を評価・表示する「制度」のこと
「建築物の省エネ性能表示制度」は、買い手や売り手が省エネ性能を判断材料として建物を選べるようにすることで、省エネ性能に優れた建物が普及する市場を作り出すことを目的にした制度です。
省エネ性能の表示自体は義務ですが、その評価方法は「自己評価」と「第三者機関による評価」の2つの選択肢があり、BELSはそのうちの第三者機関による評価に該当します。客観的かつ信頼性の高い第三者機関による評価を受けることで、消費者が安心して省エネ性能の高い建物を選択できるようになり、2050年カーボンニュートラルの実現にも貢献するのです。
ZEHは省エネ目標を掲げた「住宅」のこと
ZEHとは、省エネ技術と創エネ技術により、住宅が年間で消費する一次エネルギーを実質ゼロにすることを目指す住宅のことです。
つまり、BELSは省エネ性能の評価・表示を行う「制度」を指すのに対し、ZEHは省エネ目標を掲げた「住宅そのもの」を指します。
BELSとZEHは直接比較できるものではありませんが、省エネ性能の優れた建築物の普及を促進を目的にしている点は同じです。どちらも、地球温暖化対策として国が掲げている「温室効果ガス46%減(2013年度比)」および「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた取組として位置づけられています。
BELSとZEHの関連性
BELSとZEHは直接比較できるものではありませんが、以下のような関連性があります。
- BELSの発行する評価書類にZEHマークの表示ができる
- ZEHマークが表示されたBELSの評価書が補助制度等の書類として活用できる場合がある
それぞれ詳しく解説します。
BELSの発行する評価書類にZEHマークの表示ができる
ZEH住宅であることを表示できるのは、第三者機関からの評価であるBELSのみです。自己評価では、たとえZEH住宅であっても表示できません。
ZEHマークが付いていると、より高い省エネ性能を有する住宅であることを示せるため、買い手や借り手が見つかりやすくなるというメリットがあります。
なお、自己評価でも「ZEH水準」と表示することは可能です。
■「ZEH水準」と「ZEH」の違いを示した図
引用:省エネ性能表示制度 事業者向け概要資料|国土交通省
■「ZEH水準」と「ZEHマーク」のラベルへの表示の仕方
自己評価 |
第三者評価(BELS) |
※ZEH水準になるとチェックがつきます |
※ZEH水準を満たしたうえで再エネ設備を設置し、エネルギーが収支ゼロになると、上記ラベルのように「ZEH水準」と「ZEHマーク」がつきます |
引用:建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度|国土交通省
ZEHマークが表示されたBELSの評価書が補助制度等の書類として活用できる場合がある
ZEH基準の住宅に対して補助金を交付する制度では、その住宅がZEH基準を満たしていることを示す必要があります。
自己評価の場合、ZEH基準を満たしていると証明するためには、設計図や仕様書、一次エネルギー消費の計算結果など、様々な書類を集めなくてはなりません。
しかし、第三者評価(BELS)を行っており、その評価書にZEHマークが表示されていれば、その書類によってZEH基準を満たしていると証明することが可能です。
BELSでZEHマークを表示する流れ
BELSのラベルや評価書にZEHマークが表示されるまでの仕組みを知ることで、それぞれの位置づけがより理解しやすくなります。
補助金を活用する場合を想定した流れを以下にまとめました。
- ZEHビルダーやZEHプランナーに関与してもらい、ZEH基準の新築・改修の計画を立てる
(ZEHビルダー・プランナーの関与が補助金交付の要件) - 必要な書類・資料を揃え、BELS登録機関に評価を依頼(完成前でも申請可)
- 審査後、BELS評価機関から省エネ性能を示したラベルと評価書が発行される
(ZEH基準を満たしていればZEHマークが表示される) - ラベルを広告へ掲載
- ラベルや評価書を用いた消費者への説明(実施が望ましい取組)
まとめ
BELSとZEHは、いずれも省エネを目的とした取り組みです。BELSは省エネ性能の評価・表示を行う制度を、ZEHは省エネ目標を掲げた住宅そのものを指します。
ZEH住宅が第三者機関による評価(BELS)を受けることで、その評価書とラベルにZEHマークを示すことができます。これにより、省エネ性能に優れていることをアピールすれば、買い手や売り手が見つかりやすくなるでしょう。
BELSにZEHマークを表示させるには、太陽光発電などの「創エネ設備」と、高効率空調などの「省エネ設備」の導入が必須です。とくに省エネ設備は、住宅の位置する地域や広さ、間取りなどに応じた選定が求められるため、専門知識を持つ各設備のプロに任せるのがおすすめです。