10月 17, 2023
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設計・施工の予算管理と見積もりのポイント

 

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クリニックを開業するにあたって経営の軸となるコンセプトが固まったら、いよいよ空間づくりに取り掛かります。

患者やその家族、クリニックで働くスタッフが心地よく過ごせる空間を作り上げるために、設計・施工の工程を丁寧に進める必要があります。この工程では多大な費用がかかるのが特徴です。本記事では、予算管理の注意点や見積もりを取る前に知っておきたい重要ポイントについて解説します。

 


目次



開業資金と設計・施工における予算管理

 

開業資金

クリニックの開業資金は、土地の有無や設備の内容などで大きく変動します。また科目によっても大きく異なりますが、最低限の目安として約4,000万円〜7,000万円程度が必要です。開業資金は「設備資金」と「運転資金」に分けられます。設備資金には、土地・建物の購入費、物件を借りる際の保証金、内装費、医療機器・設備の購入費、電子カルテ関連費、予約システムの導入費などが含まれます。一方、運転資金には、従業員の給与、福利厚生、広告宣伝費、薬剤費、家賃、医師会費用、予備費などがあります。

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開業資金の内訳

設備資金

運転資金

  • 土地・建物の購入費
  • 物件を借りる際の保証金
  • 内装費
  • 医療機器・設備の購入費
  • 電子カルテ関連費
  • 予約システムの導入費 など
  • 従業員の給与
  • 福利厚生
  • 広告宣伝費
  • 薬剤費
  • 家賃
  • 医師会費用 など

 

予算管理のポイント

クリニックを開業する際には、一般的に金融機関からの融資が必要です。金融機関から融資を受けるためには、事業計画を作成し、工事や医療機器にかかる費用など、必要な総額を把握する必要があります。事業計画で予算が決定したら、その予算内で進めることが重要です。

内装にこだわり、予算枠を超えた追加工事を行うケースは多くありますが、予算を超過すると、運転資金を削る必要が出てきます。一度運転資金が底をつくと、金融機関から追加の融資を受けることが困難になります。開業後にすぐに繁盛するかどうかは予測できません。自己資金で賄える場合もあるかもしれませんが、基本的には金融機関からの融資の範囲内で工事を進めることをお勧めします。
広いテナントを借りた場合、最初に全ての工事を行わないという選択肢もあります。事業が順調になった際に追加工事を行うのも良いでしょう。無駄な出費を減らすように努めることが重要です。

 

 

見積もりを取る前におさえておきたいポイント

 

1. 業者選定

クリニックの設計・施工経験がある業者を選ぶことが重要です。医療機関は法規制も厳しく、特殊な建築要件があります。また、各科によって設計要件も異なるため、専門性が求められます。知識や経験のない業者に依頼した場合、後から追加工事が必要になるリスクがあります。例えば、歯科の場合は床下に配管を通す必要があり、床はゆるやかな勾配をつけなければなりません。しかし、設計・施工経験のない業者に依頼すると、勾配がつけられておらず、水が逆流してきたなどのケースがあります。

その他、妥当な相場で請け負ってくれる信頼できる業者を選ぶのも重要です。内装デザイン次第で大きく変動しますので一概には言えませんが、極端に高い・安い業者には注意が必要です。

 

2. 複数の見積もりを取る

複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。ただし、見積もり作成には時間と手間がかかるため、2-3社程度に抑えるのがよいでしょう。建築業者は、見積もりを出すための図面の作成に時間を要します。事前にイメージを固めてから相談に行くとスムーズに進みやすいと思います。

テナントでの開業の場合、もう一点重要なポイントとして、平日の日中に工事できるかも事前に確認するようにしましょう。建物側が日中工事を禁止している場合があります。そうすると夜間工事での対応となり、人件費が1.5倍程度上乗せされる可能性があります。

 

3.スケジュールの確認

工事スケジュールは、初めにしっかりと打ち合わせておくことが重要です。工事が遅延した場合の変動費用や、中間支払いのタイミングなど、詳細を確認しておくことがお勧めです。

 

 

見積もり時の注意点

テナントを借りて設計・施工を進める際は、A工事、B工事、C工事について理解しておく必要があります。

A工事は躯体に関する工事のことで、テナントに入居する場合はほとんど関係ありません。重要なのはB工事です。B工事は建物自体に関する工事であり、例えば空調やスプリンクラー、火災報知器などの位置を動かす際に必要な工事です。C工事はテナント工事のことです。

間仕切りの方法によっては、C工事に加えてB工事が必要になる場合があります。B工事は、建物の所有者が業者を決めるため、費用はやや割高となる場合もあります。内装業者が工事費用の見積もりを出してきた際は、B工事の費用が含まれていないことがあるため、見積もり時にB工事についても確認するようにしましょう。

 

また、間仕切りの方法によって空調にかかる費用も変わってきます。診察室など、声が漏れないように天井まで間仕切る場合と、天井まで間仕切らない場合とでは、設置する空調の数に違いがでてきます。基本的に、密閉された空間には空調が必要になるため、その設置費用がかかってくるのです。

その他、著名な建築家に設計のみを依頼すると基本的に費用は高くなります。設計と施工を別会社にすると、費用が高くなるのです。一方で、設計と施工を同じ会社で行うと、割引が適用される場合があります。その点も考慮したうえで、業者を選択するようにしましょう。

 

 

まとめ

以上、本記事では設計・施工の見積もりをとる前におさえておきたいポイントや注意点、予算管理のコツについてお伝えしました。満足のいく工事が予算内でスムーズに行えるように、しっかりと計画を立てて進めていきましょう。

 

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記事監修:MESプロモーション株式会社