熱負荷とは、室内の温湿度を一定に保つために必要な熱量を指します。快適な室内環境の実現や省エネ効果の向上、空調機器の早期故障を防ぐには、この熱負荷の計算が欠かせません。
熱負荷のおおよその目安は、単位熱負荷と室面積によって計算できますが、正確に知るためにはより多くの項目を用いるため、実際の計算は複雑です。
この記事では、熱負荷の計算方法について各項目ごとに詳しく解説します。
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熱負荷の求め方
熱負荷は、以下の計算式を用いることで、おおよその目安を求めることができます。
熱負荷(W)= 単位熱負荷(W/m2)× 室面積(m2)
しかし、熱負荷は建物の構造や使用用途によって大きく変わるため、より正確な計算には項目ごとの算定が必要です。これらの計算項目は、建築設備設計基準における空調熱負荷計算で定められています。
熱負荷の総和は、次の負荷をそれぞれ計算して算出します。
熱負荷の算定に必要な項目 |
詳細 |
構造体負荷 |
壁や床、天井などの建物の構造体から室内に侵入する熱貫流量(熱をどれだけ通過させるか)を示す値。 ■計算式 構造体面積[m2]×熱貫流率[W/m2・K]×実効温度差[K] |
ガラス面負荷 |
ガラス面を通して室内に侵入する熱貫流量「ガラス面通過熱負荷」と、日射によって室内に透過する「ガラス面日射負荷」がある。 ■計算式 ガラス面通過熱負荷: ガラス面面積[m2]×熱貫流率[W/m2・K]×隣の部屋との温度差[K] ガラス面日射負荷: ガラス面面積[m2]×標準日射熱取得[W/m2]×遮へい係数 |
照明負荷 |
照明からの発熱量 ■計算式 照明器具の個数×照明器具の消費電力[W/個] |
人体負荷 |
人体からの放熱量のことで、「顕熱」と「潜熱」がある。 顕熱=体から発生する熱(体の代謝によって生じる熱や活動によって生じる熱) 潜熱=蒸発した呼吸や汗に含まれる熱 ■計算式 顕熱:人数×1人当たりの顕熱量[W/人] 潜熱:人数×1人当たりの潜熱量[W/人] |
その他の室内負荷 |
家電製品やOA機器の稼働で発する熱の「機器負荷」など。 ■計算式 消費電力[W/m2]×室面積[m2]×負荷率(≒0.6) |
すきま風負荷 |
窓や扉から侵入してくるすきま風に含まれる熱のことで、「顕熱」と「潜熱」がある。 顕熱=すきま風の熱 潜熱=すきま風に含まれる水蒸気の熱 ■計算式 顕熱:[cp]×[p]×[Δt]×[Q] 潜熱:[y]×[p]×[Δx]×[Q]÷[1,000] cp:空気の定圧比熱(1) (J/(g・K)) p:空気の密度(1.2)(g/L) y:水の蒸発潜熱(2,500)(J/g) Q:すきま風の風量(L/s) Δt:室内外乾球温度差(K) Δx:室内外絶対湿度差(g/kg(DA)) |
外気負荷 |
換気によって取り入れられる室外の熱。 ■計算式 0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)] |
ダクト及び配管表面からの負荷、空気漏洩による負荷、送風機及びポンプ運転による負荷、間欠空調による蓄熱負荷 |
ダクトやポンプから発生する熱。算出した熱負荷に対して、補正係数として以下の数値を乗ずる。 ■計算式 ・ダクト及び配管表面からの負荷:冷房時・暖房時ともに1.0~1.1 ・空気漏洩による負荷:冷房時・暖房時ともに1.0~1.1 ・送風機及びポンプ運転による負荷:冷房時は1.05、暖房は負荷の低減に寄与するため見込まない ・間欠空調による蓄熱負荷:冷房時1.1、暖房時1.0~1.1 |
なお、照明負荷、人体負荷、その他の室内負荷については、室内に熱を与える要素であるため、暖房負荷の計算では考慮しません。
まとめ
快適な室内環境づくりや電気代の削減、空調機器の故障リスク低減には、正確な熱負荷の計算が不可欠です。しかし、詳細な熱負荷を求めるには「熱負荷の求め方」で解説したように、さまざまな要素を考慮する必要があります。
複雑な熱負荷の計算に手間を感じるなら、専門家への相談がおすすめです。
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