細部までこだわって作り上げた空間において、空調設備やその配管が存在感を放ち、雰囲気を損なってしまうケースがあります。デザイン重視の空間づくりでは、配管や空調設備を隠蔽する設置方法が効果的です。
ただし、隠蔽の仕方にも種類があり、どのような形で設置するのが建物に最適か悩んでしまう方もいるかもしれません。
本記事では、空調設備や配管の隠蔽方法と意匠性を高めるエアコンの施工例を紹介します。空調設備の隠蔽で生じるメリット・デメリットにも触れているため、デザイン性と機能性のバランスにお悩みの方は参考にしてみてください。
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■この記事でわかること
- 隠蔽配管の概要と通常配管との違い
- 意匠性を高めるためのエアコン設置方法
- 空調設備の隠蔽で生じるメリット・デメリット
隠蔽配管とは
建物に配管を埋め込む配管方式のこと
隠蔽配管は、エアコンの室内機と室外機をつなぐ配管を、壁の内側や天井裏などの見えない部分を通して接続する方法です。配管が見えないように壁の中や天井裏に隠すことで見た目がすっきりとし、建物の外観・内装の見栄えがよくなるでしょう。
また、隠蔽配管ではエアコンを部屋の自由な場所に配置できます。このため、デザイン性を重視したいときだけでなく、室内機近くの屋外に室外機を置くスペースがないときなどにも採用されやすいのが特徴です。
空間のデザインにさらなる磨きをかけたい場合、空調機本体も隠蔽すると、より洗練された空間に仕上がります。
通常配管との違い
配管の方式 |
概要 |
|
---|---|---|
隠蔽配管 |
先行配管式 |
・建物の建築中に、配管を壁内や天井裏にあらかじめ埋め込んでおく施工方法 |
さや管方式 |
・配管を通すスペースを壁や天井の中に作っておき、エアコンの設置時に配管を通す方法 ・隠蔽配管方式のなかでも採用は少ない |
|
通常配管 |
・壁に最小限の穴を開け、大部分の配管は外にある状態 ・屋内の穴と屋外の穴の位置は同じ(直線) |
隠蔽配管と通常配管では、配管の通り道となる穴の位置が異なります。通常配管では、壁にまっすぐ穴を開けて室内機と室外機を接続するため、配管を通す穴の位置は同じです。
一方で、隠蔽配管を行う場合、室外と室内で配管の通る穴が違う位置にあります。これは、建物の建築中に壁内や天井裏に配管を事前に埋め込む「先行配管式」と、壁の穴に配管を通すスペースのみを作っておく「さや管方式」のどちらでも同様です。
隠蔽配管で施工するメリット
隠蔽配管を採用するメリットは、主に次の2つです。
- 見た目がすっきりするため意匠性を高められる
- 設置場所の制約が少ない
隠蔽配管では、空調機器の配管を壁や天井の中に通すため、建物の外観を損なわず洗練された印象を与えられる点がメリットです。必要に応じて空調機本体も隠蔽できるため、屋外だけでなく屋内の意匠性も高められます。
また、室内機から近い位置の屋外に室外機を置くスペースがない場合でも、配管を壁の内部や天井裏に通すことから、空調機の設置場所の制約がほとんどありません。ベランダやバルコニーのない建物においても、エアコンを設置できるようになります。
空調機を隠して意匠性を高める施工方法
配管だけでなく空調機本体も隠すと、屋内空間の意匠性を高められます。空調機の隠し方は、大きく次の3種類です。
- ビルトイン式のエアコンを選択する
- 壁掛けエアコンを覆う
- 天井カセット型のエアコンを設置する
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
ビルトイン式のエアコンを選択する
ビルトイン式の業務用エアコンは、オフィスのレイアウト・デザインに合わせて柔軟に設置でき、空間の意匠性を高められるでしょう。ここでは、ビルトイン式の業務用エアコンの施工方法を2パターン紹介します。
天井ビルトイン式
業務用の天井ビルトイン式エアコンは、本体を天井に埋め込んで設置します。この方式のエアコンは、埋め込んだ本体と吹き出し口をフレキシブルダクト(設置場所に合わせて自由に曲げられる蛇腹状のダクト)でつなぎ、風を送る構造です。
天井ビルトイン式でエアコンを設置した場合、天井面に取り付けた給気口だけが見える形になります。例えば、天井面に設置したエアコン機器本体を目立たせたくない場合や、風を分散するための吹出口を増設・新設したい場合などに適した施工方法といえるでしょう。
本体や吹出口の位置を柔軟に調整できる点が天井ビルトイン式のメリットですが、後述のカセット型や壁掛け型と比べると、本体価格・工事費用が高額になる傾向にあります。
ビルトインオールダクト式
ビルトインオールダクト式は、天井内に埋め込んだエアコンと天井裏に分散した給気口や吹出口にダクトを接続して設置します。部屋全体に均等に空気を分配するタイプの空調機となり、室内の温度にムラが生じにくいのが特徴です。
また、本体が壁や床に露出しないため、スペースを有効活用できます。空調機の存在を感じにくく、内装にとことんこだわりたい方にも適した施工方法です。ビルトインカセット式よりも設計の自由度が高く、さらに意匠性を高められるでしょう。
ただし、設置には天井裏にスペースを確保する必要がある点や、複雑な工事が発生する点に留意しなければなりません。天井の構造や耐荷重などへの考慮も必要です。
壁掛けエアコンを覆う
一般的な壁掛けエアコンを、オーダーメイドの設備や後付けのカバーなどで覆って隠す方法です。例えば、あらかじめルーバーのような枠組みを作っておき、その中にエアコンを設置することで、機器本体の存在感を和らげられるでしょう。インテリアに合わせた木製カバーや布カバーを後付けし、エアコンの上から覆うのも一案です。
ただし、ルーバーなどの設備で空調機を覆う際は、ショートサーキットを防ぐためにも十分なスペースを確保する必要があります。ショートサーキットとは、エアコンの給気・排気が付近のレイアウトなどによって妨げられ、冷温熱が室内にうまく循環しない現象のことです。
エアコンの左右と上部には、それぞれ50mm以上のスペースを空ける必要があることを念頭に置いておきましょう。
天井カセット型のエアコンを設置する
空調機本体を隠蔽したいときには、天井カセット型エアコンの設置も選択肢になります。天井カセット型エアコンは本体機器を天井に埋め込むため、見た目がすっきりとするだけでなく、空間を広く見せられるのが特徴です。
また、部屋全体に均一に風が行き渡りやすく、室温にムラが出にくいという利点もあります。壁掛けエアコンは風が一方向にしか送れず、レイアウトによっては温冷風が循環されにくいケースもあるでしょう。対して、天井埋め込み型のなかでも吹き出し口が2つ以上あるものは、より風を効果的に行き渡らせることが可能です。
ただし、天井カセット型エアコンは、壁掛けエアコンに比べると種類がそこまで多くありません。また、取り付けの工事費が高くなる可能性があることにも注意が必要です。
空調を隠蔽して設置するメリット・デメリット
空調設備の隠蔽には、メリットだけでなくデメリットも存在します。デザイン性や設置場所の柔軟性を高められる一方で、工事が複雑になったり風量が低下したりする可能性があることを心に留めておきましょう。
メリット
エアコン本体や配管を隠蔽すると、見た目にもすっきりとし、意匠性が高まるというメリットがあります。前述した天井ビルトイン式やビルトインオールダクト式のエアコンは、室内のレイアウトに合わせて柔軟に取り付けが可能です。そのため、空間のデザイン性を重視したいレストランやホテルでの採用に適しています。
またダクトを通して空気を運ぶビルトイン型は、適切な位置に吹出口を設置すれば、冷温風を効率的に行き渡らせられるのもメリットの一つです。
デメリット
エアコン本体を隠蔽するデメリットとして、ビルトインオールダクト式は天井裏にスペースが必要になる点が挙げられます。また、天井に本体を埋め込む場合、カセット型や壁掛け型のエアコンと比較すると工事が複雑で、導入費用が高くなる可能性があるでしょう。
さらにダクトが長くなると摩擦による抵抗が増え、機外静圧が発生します。この機外低圧に打ち勝つ圧力で風を送れないと、風量が低下してしまいかねません。
ただし、これらのデメリットは、適切な製品の選択によって解決できることがあります。例えば、パナソニックの天井ビルトイン型やビルトインオールダクト型エアコンは、本体が薄型化・軽量化されています。このため、限られたスペースでの設置や工事負担の軽減が可能です。
また、ビルトインオールダクト式エアコンには、機外静圧を調整する機能も備わっています。ダクトサイズや長さの調整にも対応できるため、意匠性を重視したい場合に最適です。
パナソニックでは、最適な空調機種選びのサポートを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。
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空調を隠蔽して意匠性を高めよう
エアコンの配管を壁や天井内に埋め込む隠蔽配管は、建物の景観を損なわず、すっきりとした外装を維持できます。さらに隠蔽配管と天井埋め込み型エアコンなどを組み合わせれば、屋外だけでなく屋内の意匠性も一層高められるでしょう。
空調機器の隠蔽による意匠性を高めた空間を実現するには、レイアウトや施工方法をふまえた設備設計が必要になります。デザイン性と同時に、空調・換気の機能性を保つためにも考慮したいポイントは多く、経験豊富なプロによるアドバイスがあると安心です。
パナソニックでは、意匠性を高めるための空調設備の設計、機器の選定などを無料でサポートしています。平面図を拝見したうえで、お客様のニーズに合った最適なプランを提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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