7月 11, 2024
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温熱環境を構成する6要素をわかりやすく解説

温熱環境とは、室内で過ごす際に暑くも寒くもなく快適だと感じられる環境のことです。

とはいえ、暑さや寒さに影響を及ぼすのは温度だけではありません。「気温(室温)」「湿度」「気流」「輻射熱(放射熱)」「代謝量」「着衣量」の6つの要素に左右されます。

例えば同じ温度の部屋でも、個々の代謝や着用している衣類によって、その部屋の快適性は異なるでしょう。同じ室内にいる人の多くが快適だと感じる温熱環境を整えるために、6つの要素を考慮して空調を設計する必要があります。

本記事では、温熱環境を構成する6つの要素や重要性について詳しく解説します。

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温熱環境を構成する6要素

温熱環境の6要素は環境による要素と人体による要素があり、以下のとおりです。


  • 環境:気温(室温)、湿度、気流、輻射熱(放射熱)
  • 人体:代謝量、着衣量

 

一つずつ見ていきましょう。

 

環境による要素

気温(室温)

温熱環境における気温(室温)とは、温度計で測る室内の気温を指します。人が快適と感じる温度の基準は、建築基準法の温熱条件である17~28℃が基準です。季節別では夏場で25度〜28度、冬場17度〜22度が快適な室温と言われています。

住宅の場合、天井(2.4m)の半分である、1.2mの位置で測定するのが一般的です。また、足元だけが寒い状況では快適とはいえないように、天井付近と床の温度差は3℃以内に抑えるのが望ましいとされています。

なお、室温に不満を感じる人の割合を示す「PPD(予測不満足率)」は5%以内が目安です。

温熱環境 6要素_02
引用:PMVとPPD「不満足率5%」とは?

湿度

湿度も、体感に影響する要素です。建築基準法における湿度の基準は40~70%となっていますが、快適に過ごせる湿度は40~60%と言われています。

同じ温度でも湿度が高いか低いかによって、快適さが変わってきます。例えば、カラッとした晴天時と雨天時のジメジメとした空気では体感の感じ方が異なるでしょう。

湿度が高いと蒸し暑く感じるのは、外気との温度差が少ないことによって汗が蒸発しづらくなってしまうためです。湿度が低い場合、汗の水分が蒸発する際の気化熱が、皮膚の体温を奪うことによって涼しく感じるのです。

また、高湿度は消化不良やめまい、頭痛といった体調不良も引き起こしやすいため、湿度の調整が大切です。

気流

温熱環境を整えるためには、空気の流れである気流も重要です。気流には、熱を奪い、体温を下げる働きがあるためです。例えば、夏の暑い日であっても、扇風機によって気流を作り出せば体感温度が下がり、快適性が向上するでしょう。

一方で、冬の寒い日には、すきま風や換気システムの稼働によって侵入した冷気が肌に触れると、より寒さを感じやすくなります。

また、冬場はコールドドラフトが起こりやすく、足元の冷えの原因となります。コールドドラフトとは、空気の性質により室内の暖かい空気が窓辺で冷やされ、足元に流れてくる現象のことです。空気には、暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる性質があります。

とくに寒い時期の気流は室内の快適性を損なうため対策が必要です。例えば、断熱性能の高い窓を採用することで、すきま風やコールドドラフトを防ぐことができます。換気システムによる外気の侵入には、全熱交換器の設置が有効です。全熱交換器は、排気時に室内の熱を給気された空気に移すことで、室内温度の変化を抑えるシステムです。

 

 

輻射熱(放射熱)

輻射熱(放射熱)とは、物体から遠赤外線の作用によって人体に伝わる熱のことです。例えば、日差しの熱、暖房器具(例:赤外線ヒーター)、焚火の暖かさは輻射熱(放射熱)によるものです。建物でいうと、壁・天井・床・窓などから人に伝わる熱が該当します。

太陽光には大量の赤外線が含まれており、この輻射熱が建物の外壁や屋根、窓ガラスに当たると、その表面が熱くなります。熱が建物内部に伝わることで室内温度が上がったり下がったりするのです。このため、温熱環境を整える際には、輻射熱(放射熱)による影響も考える必要があります。

人体による要素

代謝量

代謝量とは、人が運動や作業を行うことによって発生するエネルギーのことです。

体表面積1㎡あたりの熱量を(W/m2)で表し、椅子に座って安静にしている状態の代謝量は58.2W/m2とされています。また、この値を「1met(メット」という単位で表します。


58.2W/m2=1met


活動状況ごとのmet数は以下のようになっており、過ごし方をするかによって体感温度が変わることが分かります。


  • 椅座安静状態    :1met
  • 事務作業      :1.1~1.2met
  • 歩行(3.0km/h)  :2.7met
  • 人早歩き(5.0km/h):3.5met
  • 走行(8.0km/h)  :8.0met

このように、どのような作業をするかによって体感温度が変わるのです。

 

着衣量

着衣量とは、着衣の断熱・保温性を示す指標で、着ている服の種類や量のことです。同じ環境でも、着る服の枚数や性能(保湿性、通気性など)によって熱さや寒さの感じ方は変わります。

そのため、その部屋で過ごす人の標準的な服装を考慮した温熱環境の整備が必要になります。オフィスでいうとスーツ、作業着などです。なお、着衣量は「clo値」で表され、以下の条件で暑くも寒くもなく快適に過ごせる状態を1cloといいます。


  • 湿度:50%
  • 風速:0.1m/s
  • 気温:21.2℃t
  • 安静に座っている状態


また、1cloは30℃を基準としたときに9℃低い21℃で快適だと感じられる着衣量です。まとめると以下のようになります。


  • 0clo:30℃(裸)
  • 1clo:21℃(男性:スーツ上下、女性:厚めのカーディガンとスカート)
  • 2clo:12℃(男女共通:スーツとコート)

 

温熱環境の重要性

国土交通省は日本の住宅について、昔に比べて断熱・気密性能が高まってはいるものの、良好な温熱環境と言えるまでには及んでいないと指摘しています。

さらに、住宅の温度が低いと高血圧やヒートショックなどの健康被害につながることも分かっています。よって、温熱環境の整備は健康や生命の維持に重要な役割を持つといえるでしょう。また、無駄なエネルギーを削減できるため省エネにもつながります。

温熱環境を整えるための具体的な方法としては、建物の断熱性・気密性を考慮するほか、換気・エアコンによる空調設計も重要なポイントです。

空調設備の設計は冷房負荷・暖房負の計算なども含め専門的な知識が必要なため、自身で行うとなると負担が大きいものです。そこでおすすめなのが、空調設備設計の専門家に依頼をすることです。

パナソニックでは、空調・換気設備について、設計相談から計画書類の作成まで対応可能です。換気計算、機種選定、気流の設計、各種シミュレーションなどをトータルでサポートし、施主様の満足度をさらに高めるソリューションを提供します。

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まとめ

温熱環境は、室内で過ごす人が暑くも寒くもなく快適だと感じられる環境のことであり、「気温(室温)」「湿度」「気流」「輻射熱(放射熱)」「代謝量」「着衣量」の6要素で構成されます。これらの6つをバランスよく整え、良好な温熱環境をつくることで、快適な室内空間が生まれるのです。

温熱環境が整えると、健康被害のリスクを軽減できるほか、エネルギーの無駄を減らし省エネにも貢献します。

さらに、温熱環境の6要素と合わせて、「清浄度」「除菌」「脱臭」「香り」にも注目すると、より快適で健康的な室内環境の実現ができるでしょう。温熱環境は室内温度の調整を意味しますが、同時に空気の浄化やニオイにも配慮することで、室内空間全体の質を向上させることができます。

パナソニックでは、7つの空質要素(温度・湿度・清浄度・気流・除菌・脱臭・香り)を自在にコントロールし、多種多様な空間ニーズに応じたソリューションを提供可能です。

 

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