7月 11, 2024
10 min read time

空調設備の種類|空調方式をはじめ各分類を解説

空調設備は、オフィスや商業施設、工場など、建物内の環境を快適に保つために欠かせないものです。適切な空調設備を選ぶことは、快適な環境を作るだけでなく、省エネルギーにも効果的です。

空調設備にはさまざまな種類があり、空調方式、室内機、流体、配管などにより分類することができます。本記事では、空調設備を構成する機器を紹介したうえで、どのような種類があるのかを分類ごとに紹介していきます。

 

\お客様の状況に合わせてご提案します/

 


空調設備を構成する機器の種類

空調設備はいくつかの装置によって構成されていますが、主に以下の3つの要素によって成り立っています。


  • 熱源装置:空気を加熱・冷却するために必要な熱を作り出す装置(ボイラーや冷却塔、冷却水ポンプ、給水設備など)
  • 熱搬送設備:熱源機で作った熱を空気調和設備に移動させる設備(配管、ダクト、ポンプ、送風機など)
  • 空気調和設備:空気の加熱・冷却、加湿・除湿、浄化などを行う機器(コイル、加湿器、除湿器、エアフィルターなど


このように、熱源装置によって作り出された熱が熱運搬設備によって運ばれ、空気調和設備が空気の温度を変化させることで、快適な室内環境を作り出す空調設備として機能します。

空調設備の種類:空調方式による分類

空調 方式_02

空調設備は、空調方式によって「パッケージ方式(個別空調方式)」と「セントラル空調方式(中央空調方式)」の2つに分けられます。また、冷風や温風を作る「熱源」をどこに置くかで、空調方式が異なります。

それぞれどのような方式なのか見ていきましょう。

パッケージ方式(個別空調方式)

パッケージ方式(個別空調方式)は、部屋やフロアごとに空調設備を設置する方式です。
セントラル空調方式のように中央熱源を持たず、熱源と空調機が一体化されている、もしくは冷媒配管で室内機と室外機を接続する構成となっています。

それぞれの設備は個別に操作することができ、部屋やフロアごとに温度や風量の調整も可能です。

また、電源のオンオフも部屋やフロアごとに切り替えられるため、余分なエネルギーがかからず、省エネ効果にもつながります。

部屋によって使用する時間帯が異なる施設や、求められる温度が異なる店舗が集まる中小規模のテナントビルなどに向いている方式です。

セントラル空調方式(中央空調方式)

セントラル空調方式(中央空調方式)は、冷凍機・ボイラーといった熱源機を中央機械室や管理室に集約し、まとめてコントロールする方式です。

メンテナンス性が高く、空気の温度調整を冷却水で行うことから設計の自由度が高いといった特徴があります。

ビルなどの建物全体の空調設定も一括で管理するため、パッケージ方式のように部屋やフロアごとの柔軟な温度設定はできませんが、冷暖房の効率が高く、エネルギーコストも削減できます。

そのため、規模が大きく使用する時間や設定温度が各部屋・フロアで同じ施設におすすめです。例えば、大規模なオフィスビルや大規模総合病院などの施設への導入に向いています。

また、セントラル空調方式は、送風方式によって「単一ダクト定風量方式」「単一ダクト変風量方式」の2種類に分類できます。

単一ダクト定風量方式

単一ダクト定風量方式は、1本のダクトで建物内にある部屋の空気を制御する方式です。全ての部屋で一定の風量・温湿度の空気が送風されるため、部屋ごとに空調の設定ができません。

また、メンテナンス性が高いものの、人数や日当たりといった環境によって部屋ごとに温度がばらついてしまう可能性もあります。

単一ダクト変風量方式

単一ダクト変風量方式は、単一ダクト定風量方式と同様に1本のダクトで送風を行いますが、送風量が調整できる点が異なります。部屋ごとに温度を調整できることから、省エネ効果が高いことも特徴です。

しかし、風量を減らすことで換気が不足する可能性があるため注意しましょう。

空調設備の種類:室内機による分類

空調設備の室内機にもいくつか種類があります。代表的なものとして以下の5つがあげられます。


  • 天井埋込カセット形
  • 天井埋込ダクト形
  • 天井吊形
  • 壁掛形
  • 床置形


それぞれの室内機の特徴について見ていきましょう。

天井埋込カセット形

空調 方式_04

天井埋込カセット形は、室内機本体が天井に埋め込まれ、化粧パネルのみが表に露出する設置方式です。配管類が天井内に入り、本体が天井と一体化する形になるため目立ちにくく、デザイン性に優れています。

そのため、壁を有効に使いたい場合や室内のインテリアの雰囲気を損ねたくない場合に有用です。吹き出し口が4方向のタイプが一般的で、室内の温度ムラが出にくく、部屋の面積が広い場合でも快適性を保ちやすいというメリットもあります。

ほかにも1方向や2方向についているタイプもあるため、設置環境によって柔軟に選びやすいこともポイントです。

天井埋込ダクト形

空調 方式_03

天井埋込ダクト形は、室内機本体が天井に埋め込まれ、吸込口・吹出口のみが表面に露出する設置方式です。室内機本体が天井内に完全に隠れていて見えないため、存在感を抑えられます。

そのため、天井埋込カセット形よりもデザイン性に優れており、室内のインテリアの雰囲気を損なわずに設置したい場合に適しています。

また、機械の位置、吹出口の位置といったレイアウトの自由度が高い点もメリットです。ダクトを通じて複数の吹き出し口から送風ができることから、部屋の温度ムラも防ぐことができます。

室外機を天井に埋め込む設置方式としては、ほかにも天井ビルトインカセット形や、ビルトインオールダクト形といったタイプがあげられます。

天井吊形

空調 方式_06

天井吊形は、室内機本体を天井に埋め込まず、天井面や壁面に露出して設置するタイプです。天井埋込カセット形や天井埋込ダクト形に比べて吹き出し口が広いため、より遠くまで風を送ることができます。

また、天井に穴を開けるなどの大規模な工事が不要で、費用を抑えやすいことも特徴です。ただし、外部に室内機が露出しているため圧迫感を感じやすく、インテリアとの調和がとりにくい点はデメリットといえるでしょう。

ほかにも1方向からしか送風ができないため、柱や仕切りの多い室内に向いておらず、部屋の中で温度の偏りが出やすいといった注意点もあります。

壁掛形

壁掛形はルームエアコンで用いられる主流のタイプであり、天吊形よりもサイズが小さく設置しやすいことが特徴です。業務用タイプはルームエアコンに比べて出力が大きくなっています。

他のタイプと比べて取り付けが容易なことから工事費用が安く、メンテナンス性も高いこともメリットです。


ただし、天吊形に比べて風が遠くまで届きにくく、奥行きのある部屋だと冷暖房の効率が悪くなります。また、両サイドも風を送りにくいため、場所によって室内の温度にムラが出やすい点も注意しましょう。



床置形

空調 方式_05

床置形は天井や壁に取り付けをせず、床に置いて設置するタイプです。床に置くため取り付けが簡単で、天井が高い部屋でも足元に風を送ることができます。

天井や壁に取り付けるタイプよりも手が届きやすいことから、メンテナンス性が高いことも特徴です。

ただし、設置するために床のスペースを確保する必要があり、本体の前面も開放が必要です。加えて本体の上部や左右についてもサービススペースとして一定の距離を保つ必要があり、周囲に物を置くことができません。

また、本体が露出した状態で床に置かれることから、室内のインテリアによっては調和がとりにくい点にも注意が必要です。

コスト面や設置までの期間、メンテナンス性を重視する場合に有効な選択肢となるでしょう。

\お客様の状況に合わせてご提案します/

 

空調設備の種類:流体による分類

ここからは、空気を加熱・冷却を行う流体(媒体)による分類を解説します。空調設備の流体の方式は、全空気方式、冷媒方式、全水方式、空気・水併用方式の4つに分かれます。

全空気方式

空気を用いて熱を移動させる方式。室内の空気と外気を混合して室内に空気を供給する。

冷媒方式

冷媒(フロンガスなど)を用いて空気の加熱・冷却を行う方式。一般的なルームエアコンや業務用エアコンで用いられる。

全水方式

冷水・温水を用いて熱を移動させる方式。空気を用いないためダクトスペースが不要。ただし、空気の鮮度を保つための換気設備が別途必要になる。

また、水が通る配管が破損した場合には水損のリスクがある。

空気・水併用方式

空気と水を用いて熱を移動させる方式。外気を取り入れるダクトが必要になるが、全空気方式よりは省スペース化できる。

全水方式同様に水損のリスクがある。

 

空調設備の種類:配管による分類

水式(前述の全水方式、空気・水併用方式)の空調設備の配管方式においては、2管方式と4管方式が代表的です。それぞれの違いは以下の表のとおりとなります。

 

2管方式

4管方式

配管

往き配管・戻り配管が1組

往き配管・戻り配管が2組ある

特徴

夏期は冷水配管、冬期は冷温水配管として使用され、冷房・暖房を切り替えて運転する冷暖房切替運転方式となる。

1組を冷水配管、1組を温水配管として使用するため、冷房・暖房を同時に利用できる冷暖房同時運転方式となる

メリット

配管本数が少ないため、設置コストが安く省スペース

冷暖房を同時に利用でき、部屋ごとに別の調温が可能

デメリット

基本的に部屋ごとに別の調温ができない

配管本数が増えるため、設置・ランニングコストが高くなる

 

まとめ

空調設備には多くの種類があり、それぞれ特徴が異なります。設置場所の広さや形状、用途、予算などを考慮したうえで、適した空調設備を選びましょう。適切な空調設備を選ぶことは、快適な環境を作るだけでなく、省エネルギーにもつながります。

一方、最適な空調設備を選ぶにはコストやスペック以外にもメンテナンス性、建物の構造といった考慮すべき要素がいくつもあります。そのため、どのような機種を選んだら良いのか分からないというケースも多いかもしれません。

パナソニックでは、お客様の設置条件に合わせて最適な空調設備の機種選定を無料で承っています。 いずれも空調負荷計算に基づいて選定を行うため、設置する場所に最適な空調をご提案することが可能です。

換気計算を含む空調設備の機種選定に課題を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

\お客様の状況に合わせてご提案します/