6月 17, 2024
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全熱交換器とは?概要や効果、連携システムについて解説

快適な室内環境を実現するためには、換気が不可欠です。しかし、窓を開けて換気を行うと室内の温度が変化しやすく、冷暖房効率も低下することはご存知でしょうか?

そこで注目されているのが「全熱交換器」です。全熱交換器は、室内の熱エネルギーを再利用することで、室温を安定させながら換気を行え、省エネ効果も期待できます。

本記事では、全熱交換器の概要やメリット・デメリット、空調設備との連携についてわかりやすく解説します。全熱交換器の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

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 ■この記事でわかること

  • 全熱交換器の概要
  • 全熱交換器を導入するメリット・デメリット
  • 全熱交換器と空調設備の連動機能

 




全熱交換器の概要

全熱交換器は、室内の熱エネルギーを再利用して室内環境を整える設備です。換気で発生する熱のロスを抑え、省エネ効果も期待できます。

具体的にどのような仕組みなのか、見ていきましょう。

全熱交換器とは熱エネルギーを再利用できる換気設備

全熱交換器は、換気で給気・排気を行う際に室内外の空気中の熱を移動させ、室内温度に近い新鮮な空気を取り込む第一種換気設備です。(※)

つまり、室内の空気を排出したり、室外の空気を取り込んだりする換気扇の役割を担いながら、本来なら換気によって捨てられてしまう熱エネルギーを再利用できる換気設備といえます。

窓を開けて行う自然換気とは異なり、冷たい風や熱気が室内に入り込むことなく換気を行えるため、室温を安定させながら快適な環境を保てます。

※ 換気方式について

換気方式の種類

換気の仕方

主に採用される場面

第一種換気(※)

給気・排気ともに機械で行う

オフィスビル・サーバールームなど

第二種換気

給気を機械、排気を自然換気で行う

手術室・クリーンルームなど

第三種換気

給気を自然換気、排気を機械で行う

住宅などのトイレやキッチンなど


仕組み

全熱交換器とは

 

全熱交換器は熱の性質を利用することで、空気の熱を移動させて快適な空間をつくる仕組みです。熱は、高い温度から低い温度へ移動する性質があります。

部屋の空気を換気すると、室内の空気を外に排出して、室外の空気が取り込まれます。

例えば夏場に冷房している部屋を全熱交換器で換気すると、外気の熱が室内から排出される冷たい空気に移動するため、給気される空気が室内温度と近い状態になります。そのため、換気を行っても室外の熱い空気が吹き出してきません。




全熱交換器を導入するメリット・デメリット

全熱交換器を導入することにより省エネや快適な環境を実現できますが、一方で初期費用・メンテナンス費用など、導入前に考慮すべき点もあります。

導入をお考えの際は、事前にどのようなメリットやデメリットがあるのか確認しておきましょう。

メリット

全熱交換器を導入する主なメリットは、以下のとおりです。


  • 省エネにつながる(空調負荷を低減できる)
  • 季節や天候に左右されずに換気を行える
  • 安定的な換気量の確保が可能になる

 

なかでも一番の強みと言えるのが「省エネ効果」です。日本冷凍空調工業会による全熱交換器の検証では、空調機の消費電力量を約30%削減できるという結果になりました。(※)

空調使用時に窓を開けて換気する場合、室内の空気(温度)も室外へ逃げてしまうため、室内温度が変化してしまい、エアコンは室内温度を維持するために出力を上げて電力消費量が増えてしまいます。

しかし、全熱交換器は給気と排気で熱を交換するため、給気される空気は室内と近い温度です。換気のたびにエアコンを大きく稼働させる必要が無くなるため、空調負荷を低減でき、消費電力を抑える≒電気代の削減につながります。

さらに、自然換気口を用いる第二種換気・第三種換気と比較して、室内の快適性能や遮音性能が上がる(音漏れが小さくなる)こともメリットです。

パナソニックの熱交換ユニットは、天井埋込形、天井カセット形、床置形をラインナップしています。意匠にあわせて部屋や空間に適したタイプを選択いただけます。


※参照元:全熱交換器によるCO2削減と省エネ効果の実測例|一般社団法人 日本冷凍空調工業会


 

 

デメリット

一方、全熱交換器を導入する主なデメリットは、以下のとおりです。


  • ほかの換気設備と比べて初期費用が高い
  • 性能を維持するための定期的なメンテナンスが必要

 

初期費用は、一般的な換気扇と比較すると高額になりやすいため、導入にはまとまった金額が必要です。ただし、省エネ効果によって電気代が削減できるので、長期的に見るとコストパフォーマンスが良いといえます。

また、他の換気扇でも同様ではありますが、適切に性能を維持するためには定期的なメンテナンスが必要になります。

パナソニックでは「空調換気設備設計サポート」を提供しています。空調負荷計算、機種選定、気流の設計、各種シミュレーションなどを通して、最適な形で全熱交換器を導入するサポートが可能です。導入にあたって不明な点の解消や、導入後のメンテナンスなど含め、ぜひ一度ご相談ください。

 

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全熱交換器は空調設備と連携することで省エネに

空調負荷低減による省エネ効果がある全熱交換器は、空調設備と連携することで、より快適な環境づくりと省エネを実現できます。

ここでは、パナソニックの全熱交換器と連携できるシステムと、その特長を紹介します。

全熱交換器とは_02

パナソニックでは、全熱交換器+天井埋込形ジアイーノ+業務用空調の3つの設備を一体化した「業務用空質空調連携システム」を開発しました。このシステムにより、消費電力を削減しながら、より快適な環境づくりをサポートします。

「空調・換気・除菌(※1)・脱臭・加湿」を実現するほどの高性能でありながら、3つの設備の連携によって、従来の第三種換気と比較して、最大52%の消費電力を削減できます。(※2)

※2:当社シミュレーションによるものです。実際の効果は、使用条件により異なります。

削減につながるポイントとして、主に以下のような機能が挙げられます。


  • 全熱交換器による空調負荷軽減(換気扇から全熱交換器への変更)
  • CO2センサーとの連動換気
  • 設定温度制御

また、2024年7月には、空調機器の連携をさらに強め、連携する3製品の性能の調整や向上を図ります。

 例えば、熱交換気ユニットでは「CO2センサー」との連動により、換気する風量を自動で切り替えます。CO2センシング機能もある「IAQセンサー」をリモコンとは別の場所に設置することで、より利用者に近い場所の測定データで、制御することが可能になります。また、IAQセンサーは、温度・湿度・CO2 情報の取得も可能です。

ほかにも、最新型のリモコンの採用によって、業務用空調・熱交換気扇・天井埋込形ジアイーノの操作を1台でコントロールできるようになりました。操作のたびにリモコンを替える必要が無く、操作性も向上しています。

まとめ

全熱交換器は、換気をしながら室内の熱エネルギーを再利用することで、快適な室内環境を実現する設備です。空調設備と連携することで、省エネ効果を高めることもできます。

全熱交換器の導入をお考えでしたら、パナソニックの「空調換気設備設計サポート」をぜひ、ご活用ください。消費電力の削減と快適な環境づくりのための、最適な空調・換気システムを提案します。詳しくは、下記のページからお問い合わせください。

 

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※1
■浮遊菌:【試験機関】(一財)北里環境科学センター【試験方法】約6畳の密閉空間に浮遊させた菌数の変化を測定【除菌の方法】天井埋込形 次亜塩素酸 空間除菌脱臭機
(FY-350JCD1)を加湿器「強」・除菌脱臭「強」で運転【対象】浮遊した菌【試験結果】8分後に99%以上抑制【試験番号】北生発 2021_0621号

■付着菌:【試験機関】(一財)北里環境科学センター【試験方法】約125m2の居室でシャーレに付着させた菌数の変化を測定【除菌の方法】天井埋込形 次亜塩素酸 空間脱臭機(FY-350JCD1)を加湿器「強」・除菌脱臭「強」で運転【対象】シャーレに付着した菌【試験結果】12時間以内に99%以上抑制【試験番号】北生発 2021_0619号