熱負荷とは、室内の温湿度を一定に保つために必要な熱量のことを指します。室内の快適性や冷暖房効率に直結するため、各空間の熱負荷を把握し、それに基づいて空調設備を選ぶ必要があります。
本記事では、熱負荷の基本や重要性、確認方法まで詳しく解説します。
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▼目次
熱負荷とは
熱負荷とは、室内の温湿度を一定に保つために必要な熱量(kcal)のことです。大きく分けて、「冷房負荷」と「暖房負荷」の2種類があります。
冷房負荷は、室内を涼しく保つために除去しなければならない熱量です。一方、暖房負荷は、室内を暖かく保つために供給する必要がある熱量のことです。
さらに、冷房負荷と暖房負荷には「顕熱」と「潜熱」という2つの要素があります。
- 顕熱:冷却や加熱によって温度変化を伴う熱
<例>水を鍋に入れて沸騰させると水からお湯に変わる
- 潜熱:蒸発のように状態は変化するものの、温度変化を伴わない熱
<例>沸騰させるとお湯が蒸発して湯気(水蒸気)に変わるが、温度は変わらない
具体例として、鉄板料理の飲食店をあげてみましょう。鉄板自体が発する熱は顕熱で、食品を焼いたり蒸したりした際に出る蒸気は潜熱として扱われます。これらの熱は、夏場には冷房の効きに影響し、冬場には暖房負荷の削減に寄与します。
さらに、お客様の出入りによるドアの開閉や、室外から入り込む空気も温度変化の要因です(顕熱・潜熱)。お客様の呼吸や発汗により発生する蒸気にも熱(潜熱)が含まれているため、来店人数の違いでも熱負荷は変動します。
このように、熱負荷の大きさは空間の使用用途や室内の在室人数などの要素で変わるため、空間ごとに適した空調設備の種類や能力も異なります。快適な室内空間づくりには、熱負荷を踏まえた空調設備の選定が重要です。
冷房負荷と暖房負荷それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
冷房負荷
冷房負荷は、室内を涼しく保つために除去しなければならない熱量です。省エネ基準(建築物エネルギー消費性能基準)の適合において必要となる算出項目から、冷房負荷となる要素を以下にまとめました。
<顕熱>
- 室温と外気温・地温との温度差によって外壁や窓などを通過する熱
- 換気(通風も含む)や漏気によって運ばれる熱
- 日射の吸収や夜間放射によって発生する熱
- 調理・家電製品・人体などの室内から発生する熱
- 熱容量の大きな部位(床や壁など)に蓄えられる熱
- 調理によって発生する熱のうち、冷房負荷の削減に寄与する熱
<潜熱>
- 換気や漏気によって運ばれる水蒸気が持つ熱
- 調理・人体など、室内から発生する水蒸気が持つ熱
- 湿気容量の大きな部位(床や壁など)に蓄えられる水蒸気が持つ熱
- 調理によって発生する水蒸気が持つ熱のうち、冷房負荷の削減に寄与する水蒸気が持つ熱
出典元:第11回 省エネルギー判断基準等小委員会(省エネ基準合同会議第7回) 配布資料|経済産業省
暖房負荷
暖房負荷とは、室内を暖かく保つために必要な熱量です。冷房負荷と同様に、省エネ基準において必要となる算出項目のなかから、暖房負荷の要素をチェックしておきましょう。
- 室温と外気温・地温との温度差によって外壁や窓などを通過する熱
- 換気(通風も含む)や漏気によって運ばれる熱
- 日射の吸収や夜間放射によって発生する熱
- 調理・家電製品・人体など、室内から発生する熱
- 熱容量の大きな部位(床や壁など)に蓄えられる熱
- 調理によって発生する熱のうち、暖房負荷の削減に寄与する熱
例えば気密性の低い建物では、暖房によって暖められた室内の空気が室外へ逃げ、反対に室外の冷えた空気が室内に入り込むことがあります。このような場合、室内の温度を一定に保つためにより多くのエネルギーが必要となり、暖房負荷は大きくなります。
また、暖房時には人体から発生する水蒸気だけでは、室内の湿度(潜熱)を一定に保つことが難しいことがあります。その場合は、加湿器を使用して湿度(潜熱)を調整することが多いでしょう。
熱負荷を踏まえて空調設備を選ぶ重要性
熱負荷を考慮して適切な空調設備を選ぶ重要性を、以下の3つの観点から解説します。
- 快適な室内環境づくり
- エネルギー効率の向上
- 機器の故障リスク低減
快適な室内環境づくり
熱負荷を正確に把握せずに設備を選ぶと、室内の温度や湿度が不安定になり、室内の快適性が損なわれる可能性があります。
例えば、過剰な冷却能力を持つ空調設備の使用は、室内を必要以上に冷やしてしまう原因です。反対に冷却能力が不足している空調設備では、十分に室内を冷やすことができません。
室内環境を整えて快適に過ごすために、熱負荷を考慮して空調設備を選択することは非常に重要です。
エネルギー効率の向上
室内の熱負荷に適した空調設備を選ぶことは、エネルギー効率を向上させ、電気代の節約にもつながります。長期的な運用コストの面からも、無視できないポイントです。
エネルギー効率の高い空調設備は、最小限のエネルギーで必要な冷暖房効果を達成することができます。これにより、無駄な電力消費を抑え、経済的かつ環境に配慮した運用をすることが可能です。
特に日本では、発電の約70%がCO2を排出する火力発電に依存しています。使用電力量が少ない空調設備を選定することは、CO2排出量を削減する方法の1つでもあるのです。
※出典元:
令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)|経済産業省
機器の故障リスク低減
適切な熱負荷に基づいて選ばれた空調設備は過負荷になりにくいため、故障のリスクを低減することができます。
能力が不足している空調設備は、常に高出力で運転しなければなりません。しかし、高出力での運転状態が続くと、内部部品の劣化が早まって故障の原因になります。もし故障してしまうと、修理費用や早期の買い替えが必要です。
予期せぬ出費を防ぐためにも、熱負荷を正確に把握して空調設備を選定しましょう。
熱負荷の確認方法
熱負荷は、空間の用途、建物の構造、地域、在室人数など、さまざまな要因によって大きく変動します。そのため、それぞれの建物や空間ごとに冷房負荷と暖房負荷を個別に算出しましょう。
熱負荷の算出にあたっては、「熱負荷とは」の項目で紹介した冷房負荷と暖房負荷の各要素をそれぞれ計算し、その総和を求めます。しかしこの計算式は非常に複雑で、専門的な知識がないと正確な計算は難しいのが現状です。
そこで、熱負荷の正確な把握と適切な空調設備の選定には、空調メーカーなどの専門家への相談をおすすめします。専門家であれば豊富な経験と知識を活かし、建物の特性や使用状況を考慮したうえで、最適な熱負荷計算と機器選定を行うことが可能です。
パナソニックでは、熱負荷の簡易的な計算からそれに応じた機器の選定まで、トータルなサポートを提供しています。空調・換気設備の導入や交換をご検討の際は、お気軽にパナソニックまでご相談ください。
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熱負荷を踏まえた空調設備を導入して快適な室内環境をつくろう
熱負荷の概要を紹介したうえで、その重要性や確認方法について紹介しました。熱負荷とは室内の温湿度を一定に保つために必要な熱量のことで、建物の構造や用途、在室人数など、さまざまな要因によって変動します。
熱負荷を踏まえて適切な空調設備を選ぶことは、快適な室内環境の実現、エネルギー効率の向上、そして機器の故障リスク低減などのために重要です。しかし、熱負荷の正確な計算には専門的な知識が必要です。
そこで、専門家のサポートを活用することをおすすめします。パナソニックでは、熱負荷の簡易的な計算から、それに応じた機種選定、確認申請に必要な換気計算書の作成といった空調・換気設備の設計にまつわるサポートを無料で行なっています。
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