換気とは、室内の汚れた空気を、外の新鮮な空気と入れ替えることです。適切な換気を行うことで、快適に過ごせるだけでなく、健康被害も予防できます。
しかし、一般的な住宅とオフィスや店舗とでは、適切な換気方法が異なることはあまり知られていないかもしれません。また、換気設計を行う際は、建築基準法や建築物衛生法に沿って行う必要があります。
この記事では、換気を行う目的や必要性について解説したうえで、一般住宅と、オフィス・店舗における換気方法をそれぞれ紹介します。
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▼目次
換気の目的と必要性(重要性)
換気とは、室内の空気を、外の新鮮な空気と入れ替えることを指します。特に気密性が向上した近年の建物は、換気を意識的に行わないと、臭気や粉じん・湿気などで汚染された室内空気により、不快感やシックハウス症候群などの健康被害を及ぼすリスクがあるため、換気の重要度が注目されています。
シックハウス症候群は、汚染された空気により体調不良を引き起こす症状です。建材や日用品から放散する化学物質や呼吸で排出される二酸化炭素によって発症するため、対策するためには適度な換気を行い、有害物質を室内から取り除くことが必要があります。
なお、エアコンの使用だけでは、換気を行うことはできません。エアコンは部屋の中の空気を吸い込み、温度を調整してから再び部屋の中に戻すため、室内と室外の空気は入れ替わらないのです。
適切に室内を換気するためには、以下のような対応が効果的です。
- 建築物内の空気環境を把握したうえで換気を行う
- 室内の利用状況によって換気する量を自動で制御可能な換気設備を導入する
一般住宅における換気方法
一般住宅における換気方法は主に2通りあります。
- 24時間換気システムの使用
- 窓を開けて空気の通り道を作る
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
24時間換気システムを適切に使う
2003年7月以降に建築された建物であれば、換気口や24時間換気システムが備わっています。これを利用すれば、手軽に換気を行うことが可能です。
ただし、外気が冷たいなどが理由で換気口を閉じたり、24時間換気システムのスイッチをオフにしたりすると、適切に換気されず室内の空気が汚れる原因となります。
効率よく換気するためには、換気口を開けた状態で24時間換気システムを常に稼働させておきましょう。
窓を開けて空気の通り道を作る
窓を開けて換気をする場合は、1ヶ所ではなく2ヶ所開けて空気の通り道を作ることがポイントです。対角線上に窓があれば、それぞれ開けておくことで効率よく換気ができます。
窓からあまり風が入ってこない場合は、窓の開け方を工夫してみましょう。風や空気は小さい隙間から勢いよく入り、大きい空間に出ていく性質があります。そのため、風が入ってくる窓を小さく開け、もう一方の窓を大きく開けると効率的です。
窓が1つしかない場合は、部屋のドアを開け、扇風機を窓の外に向けて設置すると室内に空気の流れを作ることができます。
オフィス・店舗における換気方法と設計のポイント
オフィスや店舗などは、建物によって自分で換気設備の調整ができないケースがあります。ただし、大型のオフィスビルは、自然換気ではなく機械によって換気が行われていることがほとんどです。
換気設備の操作やメンテナンスも基本的には建物の管理会社が行っているため、窓が開けられないからといって心配する必要はありません。
ここでは、主に小型店舗や小規模~中規模オフィスにおける換気方法や設計時のポイントを解説します。
換気の方法
オフィスや店舗の換気を行う際は、まずどういった方法で換気をしているかを確認しましょう。リモコンや設備、換気口の位置を探して、換気時の空気の流れをチェックしてください。
また、換気設備のリモコンはエアコンのリモコンと一体型になっている場合があります。その場合は冷房や暖房と一緒に、換気機能が止まっていないかも確認しておく必要があります。
窓を開けて換気する場合は、一般住宅の換気方法と同じ方法で空気の通り道を作ります。個室などの窓がない部屋は、近くにある換気口の位置を確認したうえで部屋のドアを開けてください。扇風機があれば換気口がある方向に向けると、室内の空気が流れやすくなります。
小型店舗や小規模~中規模オフィスであれば、全熱交換器の活用も効果的です。全熱交換器は給気と排気の両方を機械で行う第一種換気設備で、換気と同時に熱交換も行えることが特徴です。室外から入ってくる空気と室内の温度差を小さくできることから、空調設備の負担軽減や省エネにも役立ちます。
換気設計のポイント
換気設計を行う際は、換気ダクトをなるべく直線にし、給排気のバランスを整えることがポイントです。特にダクト配管は曲がった箇所が多いと、空気がぶつかり抵抗を受けやすくなるため、換気の効率が下がりやすくなります。
また、換気設備の設計は「建築基準法」や「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」でも定められています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
建築基準法
換気設備については建築基準法第20条の2によって以下のように規定されています。
必要換気量(㎥/h)=居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
(居室の採光及び換気)第二十八条 2|建築基準法
このように、換気に有効な面積が床面積の20分の1未満だった場合は、換気設備の設置が必要です。
またシックハウス対策として、建築材料や換気設備の種類も定められています。たとえば換気設備は安易に停止できず、常時運転できるものが求められています。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)
特定建築物(※)の所有者・占有者は、「建築物環境衛生管理基準」に従って維持管理することが義務付けられています。
※特定建築物とは、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校等などの建築物、または相当程度の規模を有する建物を指します。
また、空調設備として認められるためには、空気の浄化や温度、湿度、気流の調節が必要です。その際は下記の基準に近づくように努めなくてはなりません。
浮遊粉じんの量 |
0.15mg/㎥以下 |
一酸化炭素の含有率 |
100万分の6以下(=6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 |
100万分の1000以下(=1000ppm以下) |
温度 |
18℃以上28℃以下 |
相対湿度 |
40%以上70%以下 |
気流 |
0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 |
0.1mg/㎥以下(=0.08ppm以下) |
さらに、空調設備(空気調和設備)や機械換気設備の維持管理についても「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」に従って行います。
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換気に関するよくある質問
ここでは換気に関するよくある質問に対して、パナソニックの情報をもとに回答します。換気の時間や回数、季節ごとの換気必要性など気になる内容をまとめました。
必要換気量の目安はある?
必要換気量は、部屋の広さや使用用途などによって変わります。必要換気量の計算にはいくつかの方法がありますが、ここでは一例として部屋の必要換気回数から計算する方法についてご紹介しましょう。
部屋ごとに必要な換気回数の目安は、建築設備設計基準で以下のように定められています。
項目 |
換気回数(回/h) |
トイレ・洗面所 |
5~15 |
ロッカー室・更衣室 |
5 |
書庫・倉庫・物品庫 |
5 |
暗室 |
10 |
コピー室・印刷室 |
10 |
映写室 |
10 |
配膳室 |
8 |
シャワー室 |
5 |
浴室 |
5 |
脱衣室 |
5 |
食品庫 |
5 |
厨芥置場(※) |
15 |
※台所から出る野菜のくずや食べ物の残りなどの置き場のこと
上記の表から、必要換気量を以下のように算出します。
必要換気量(㎥/h)=「1時間あたりの必要換気回数(回/h)」×「部屋の容積(㎥)」
必要換気量や換気の回数については、以下の記事で詳しく解説しています。
夏や冬など冷暖房を使っているときの換気は不要?
冷暖房を使っているときでも換気は必要です。エアコンは一部の機種を除き換気機能が搭載されていないため、稼働中でも換気を行う必要があります。
エアコンの使用中に換気をする際は、エアコンの電源を切らずそのままオンにしておきましょう。エアコンは電源を入れるタイミングの負荷が最も大きいため、換気のたびに電源をオフにしてしまうと、余計な電力を消費してしまいます。
空調時に窓を開けずに換気を行いたい場合は、熱交換器の活用もおすすめです。熱交換器とは、換気を行うのと同時に、給気・排気の際に室内や室外の空気に含まれる熱を移動することで、室内温度に近い新鮮な空気を室内に吹き出す換気設備です。設備の導入に費用はかかりますが、窓を開ける自然換気に比べて空調設備にかかる負担が抑えられます。
換気の設計に関する疑問
ここでは、換気の設計に関する疑問とその回答を紹介します。
「必要換気量」「有効換気量」とは?
必要換気量と有効換気量は、どちらも換気設備を選定するときに考慮したいポイントです。
必要換気量は、設置場所や部屋の大きさ、用途、人の数によって必要な換気量です。一方、有効換気量は実際に施工された状態における風量となっており、ダクトやパイプなどの配管や屋外に設置したフードなどの抵抗や、換気機器内部での空気の漏れを含めて表記されます。
換気設備を選定する際には、必要換気量を満たしたものを選びましょう。
天井付式(ダクト式)と壁付式(パイプ式)どちらがいいの?
天井付式(ダクト式)と壁付式(パイプ式)のどちらが良いかは、設置する部屋の環境(利用用途)によって異なります。
天井付式は、必要な場所の近くに設置しやすいことがメリットです。一方、壁付式はダクトが設置ができない建物でも設置でき、ダクトの施工も不要になるため初期費用が抑えられます。
それぞれメリットデメリットが異なるため、両方の特徴を知ったうえで選びましょう。
ACモーターとDCモーターの違いは?
ACモーターとDCモーターの主な違いは、使用する電気と風量を制御する風量です。
このうちDCモーターは、電磁石と永久磁石(レアアース)を組み合わせた構造となっており、ACモーターよりも電力を抑えて制御できる仕組みです。それぞれの違いや特徴は下記の通りとなります。
種類 |
DCモーター |
ACモーター |
使用する電気 |
家庭用コンセントの交流電源を直流に変換して使う |
家庭用コンセントの交流電源をそのまま使っている |
(風量の)制御の程度 |
最適な周波数を作って緻密に風量を調整 |
流す電気に応じて風量が決まる |
パナソニックの熱交換器は給気用と排気用に2つのDCモーターを搭載しており、給気・排気それぞれの風量を4ノッチから選択可能です。設計風量に適した速調選択や風量バランスが施工現場で調整可能です。空調の効率も上がり省エネにもつながります。
まとめ
換気は室内の空気環境を良好に保ち、健康的に過ごすためにも重要です。換気の方法は、住宅やオフィス、店舗など場所や用途によって方法が異なります。
また、換気設備の設計では、建築基準法や建築物衛生法などの法律に基づいて行う必要があります。しかし、適切な換気の方法は室内環境によって異なるため、換気に関する疑問や不安がある場合は、専門業者に相談することも方法です。
パナソニックでは、換気設備を含めた空調設備の設計を柔軟にサポート可能です。設計図面を共有いただければ空調や換気システムの機器選定だけでなく、換気計算や気流の設計についてもお手伝いができます。
確認申請書類の作成も対応しておりますので、空調設備・設計についてお悩みの設計士さんはお気軽にお問い合わせください。
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