7月 11, 2024
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空調の省エネ化のためにできることは?具体的な方法を徹底解説

地球温暖化対策や電気料金の高騰など、省エネルギーへの意識が高まっている昨今。空調は家庭でもオフィスでも欠かせない存在ですが、電力を多く消費する機器の一つです。そのため、環境保護とコスト削減の両面から見ても、空調の省エネ化は非常に大切といえます。

本記事では、空調の温度設定の見直しから室外機の環境改善、さらには業務用空調の省エネ化まで、具体的に実行できる対策を紹介します。空調の省エネ効果を高める方法を知りたい方は、最後までご参照ください。

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空調の省エネ化(省エネ性能)を高める必要性

「夏季・冬季は、家電製品の電力消費割合の約3割をエアコンが占める」という、資源エネルギー庁のデータが示すとおり、他の家電よりも空調(エアコン)の消費電力は多い傾向にあります。そのため、空調を省エネ化することで、効率的に節電できます


空調 省エネ_02
画像引用元:省エネルギー政策について|資源エネルギー庁ウェブサイト|経済産業省

また、一般的なオフィスビルにおける夏場の電力消費比率の5割弱を空調が占めるというデータもあります。特に、業務用空調の省エネ化で得られる節電効果は大きいです。

空調 省エネ_04
画像引用元:夏季の省エネ・節電メニュー 令和5年6月|資源エネルギー庁|経済産業省

電気料金の高騰は、事業運営を圧迫する要因でもあるため、空調の省エネ化は、コスト削減の観点から判断しても重要度が高いといえます。

消費電力を減らすことは二酸化炭素排出の削減に寄与し、地球温暖化対策への貢献やSDGsにもつながるため、社会的な意義という面でも大きなメリットがあります。

 

空調の省エネ効果を高めるためにできること

空調の省エネ効果を高めるためには、さまざまな方法があります。 ここでは、設定温度の見直しから室外機の環境改善、さらには圧縮機の負担軽減まで、具体的な対策を詳しく解説します。

温度設定を見直す

空調機器の性能や台数、部屋の広さによって空調効率は変わるため、設定温度は実際の室温が適切になるように定めることが大切です。

具体的には、冷房使用時には28度、暖房使用時には20度を目安とします。 これはそれぞれ、環境省が掲げるクールビズ、ウォームビズで推奨されている目安の温度です。

エアコンの温度を1度最適化することで、10%の節電効果があるといわれていますので、この目安を参考に見直してみましょう。ただし、これらはあくまで目安です。建物や業務の状況、従業員数や施設利用者の体調などを加味したうえで、調整してください。

外気導入量を見直す

外気導入量は、換気の際に外気を取り込む量を指す言葉であり、これを減らすことで省エネにつながります。

冷暖房を運転している際は、室外の空気を設定温度に合わせて調整しているため、外気導入量を減らすことで消費電力の削減が可能です。

ただし、あまりに外気導入量を減らしてしまうと、室内の空気環境が悪くなってしまいます。ビル管理法(建築物衛生法)で定められている空気質基準は、CO2濃度1,000ppm以下なので、これを上回らないように注意するとともに、快適な室内環境を維持できる範囲に留めましょう。

 

稼働時間を見直す

空調の稼働時間を調整することで、電力消費を削減することができます。

残熱利用

終業時刻の約30分前に空調を停止しても、残りの時間は調整された空気の残熱で快適に過ごすことが可能です。 空調を少し早めに切ることで、室内環境を保ったまま、その時間分の電力消費を抑えられます。

分散起動

始業時に建物内の空調を一斉に起動するのではなく、タイミングをずらして起動する方法を「分散起動」といいます。 朝の起動時に集中する電力消費を分散させることで、ピークデマンド(最大需要電力)を抑え、節電効果が得られるでしょう。

中国電力株式会社の「具体的な節電手法のご紹介(冬季)」によると、商業施設内の空調機の起動を2グループに分散することで、建物全体に対して9%の節電効果が見込めるというデータもあります。

ナイトパージを実施する

ナイトパージとは、夜間に外気を取り込むことで、翌朝の空調起動時の電力負担を軽減することです。 主に気温が高い時期に、日中と夜間との気温差を活用した省エネ方法です。 

空調機器にナイトパージ機能が備わっていれば、それを活用することで実施できます。 ナイトパージ機能がない場合には、夜間に換気扇をつけておきましょう。

 

フィルター・熱交換器を定期的に清掃する

空調設備のフィルターや熱交換器を定期的に清掃することで、省エネにつながります。 

フィルターにほこりが詰まり、熱交換器に汚れが溜まった状態だと冷暖房の効果が弱まり、無駄な電力消費が増えてしまいます。 2週間から1ヶ月に1回程度は、点検・掃除を行うのが望ましいです。

清掃方法は概ね、下記のような手順で行います。

 


  1. フィルターを取り外す
  2. ほこりや汚れを水で洗い流す
  3. フィルターブラシで隙間もきれいにする
  4. 清掃後は、完全に乾燥しきるまで陰干しする

 

ただし、空調設備によって手入れ方法は異なるため、事前の確認が必要です。空調の台数が多い場合は、専門業者への依頼をおすすめします。特に、熱交換器の清掃を自分で行うのは推奨できないため、必要に応じて専門業者へ依頼しましょう。



室外機の環境を考慮する

室外機を設置する環境も、空調の省エネ性に大きく影響します。

室外機の温度

空調は、室内機と室外機が、外気・室内の熱を交換することで調温する仕組みです。

冷房の場合、室内機と室外機をつなぐパイプを通じて、室内機から送られた空気を室外機の熱交換器で冷やして室内に戻します。 暖房の場合は、外気の熱を室外機の熱交換器で取り込んで室内に送風するのが一般的です。

このため、夏場は室外機の温度が上がると空調の効きが悪くなり、消費電力が上がってしまいます。すだれや遮熱シールによって室外機への直射日光を防ぐことで、室外機の温度が下がり、省エネ効果が期待できます。

逆に冬場は、室外機が冷えていると空調の効きが悪くなるため、すだれや遮熱シールを取り外すほうがよいでしょう。

室外機の設置場所

室外機付近に障害物があると、冷房稼働時の熱排出効率が下がり、空調の消費電力が増える原因となります。 空調機器によって基準は異なりますが、室外機の四方には物を置かず、十分な空間を確保することが大切です。 

また、塀や植木、建物などの障害物に近い距離で囲まれていると、室外機が放散した熱を再度吸い込んでしまいます。オーバーヒートや故障を招く可能性もあるため、設置時に注意が必要です。

圧縮機の負担を軽減する

上述のとおり、夏季は室外機周辺の温度が上がって熱を放出しづらくなり、冷房効率が落ちます。熱交換が進まないと室外機の圧縮機は圧力を強めるため、圧縮機の負担が増えがちです。また、稼働に必要なエネルギーが増えるため、比例して消費電力も上がります。

このため、室外機に「散水装置」や「循環装置」を設置すると、室外機本体・周辺の温度が下がり、省エネにつながります。

「散水装置」とは、室外機上部に取り付けられたノズルが、吸い込み口に向けて散水するものです。一方「循環装置」は、給気口に専用フィルターを取り付けて、水を循環させるものを指します。

これらの装置は、大規模な建物に導入される業務用空調機の室外機に採用されるのが一般的です。小・中規模の施設や家庭で導入される空調機では、そうした装置の用意はなされないのが一般的でしょう。定期的に室外機周辺に水を撒くことで、装置と同じような効果を期待できます

室内温度を調整する

室内の温度を適切に調整することで、空調の負荷を軽減できます。

ブラインドや遮光フィルムの活用

夏季は窓から入り込む日光によって室内温度が高まり、空調の消費電力が増えてしまいます。 窓に遮熱フィルムを貼り、ブラインドを設置することで、室内への日光の入り込みを防ぎ、空調の負荷を低減することで省エネにつながります。 特に、日当たりのよい窓や南側に面した窓では、効果が高いです。

逆に冬季は、窓から室外への放熱が多くなり、室内温度が下がることで空調の消費電力が増えます。この場合も、窓に断熱性の高いフィルムやブラインドなどをつけることで、室外への放熱を防ぎ、空調の負担を低減できます。

冬季の場合、晴れた日の昼間はブラインドを上げて日光を取り込むことで、室内気温を上げられるでしょう。日没後や天気が悪いとき、日が当たらない窓は、ブラインドを下げることで室外への放熱を防げます。

OA機器の節電

夏場など気温の高い時期は、室内で発生する熱を削減することで空調の省エネにつながります。

室内のOA機器から発せられる熱は、室内温度を高め、空調の消費電力を増大させる原因となります。 未使用時は電源を落とし、節電モードを活用するなどの対策でOA機器を節電しましょう。

業務用空調の省エネにおけるポイント

業務用空調では、さらに高度な省エネ対策を検討できます。

全熱交換器を採用する

空調 省エネ_03

通常の換気では、室内の空気を排出し、外気をそのまま取り入れるため、室温が外気の影響を受けてしまいます。 冷暖房を入れている場合、換気によって室温が上下し、空調の消費電力が増加しがちです。

全熱交換器は、換気の際に屋外に排出する排気から熱・湿度を回収し、取り込む外気にその熱を戻して給気するシステムです。

 



全熱交換器を採用することで、換気による温度変化を抑制できます。換気時も快適な室温を保てるため、結果として空調の省エネにつながるでしょう。

詳しくは、以下をご確認のうえ、お問い合わせください。

 

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人感センサー付き機種を採用する

人感センサーとは、人の動きをセンサーで検知し、活動量に応じて節電運転ができる機能です。 人感センサーが搭載された機種の空調であれば、下記のように運転を自動調整してくれるでしょう。

シーン

運転の自動調整

人の活動量が多い場所

・冷房:設定温度で運転

・暖房:設定温度より低い温度で運転(省エネ)

人の活動量が少ない場所

・冷房:設定温度よりも高い温度で運転(省エネ)

・暖房:設定温度で運転

人が不在の場所

・冷房:人の在室時よりも高い温度で運転(省エネ)

・暖房:人の在室時より低い温度で運転(省エネ)

室内を一律で調温するのではなく、人の活動量に合わせて自動で節電運転ができるため、快適性を保ちながら消費電力を抑えることが可能です。

空調 省エネ_05
画像引用元:ECONAVI | オフィス・店舗用エアコン | パッケージエアコン | 空調・換気設備|電気・建築設備 | Panasonic

パナソニックの「ECONAVI(エコナビ)」は、人感センサーで人の動きを検知して活動量を判定し、節電運転を自動で行い、効率的に省エネ化を進めます

また、人間が感じる温冷感に合わせた省エネ運転を可能にする「温度センサー」や、空気をかき混ぜて素早く快適温度に調整する「サーキュレート機能」なども搭載されています。

詳しくは、以下のリンクよりご確認・お問い合わせください。

 

 

まとめ

空調の省エネ化は、地球環境保護とコスト削減の観点から重要な課題です。空調の設定温度の見直しや、室外機の環境改善、フィルター・熱交換器の定期的な清掃など、多様な方法で省エネ効果を高められます。 

業務用空調では、全熱交換器を採用したり、人感センサー付き機種を導入したりすることで、さらに効率的な省エネを実現できるでしょう。

パナソニックでは、さまざまな空調機器をラインナップしています。機器同士を連携させることで、消費電力を最大52%削減することが可能です(※弊社シミュレーションによるもので、実際の効果は使用条件により異なります)。

空調・換気に関する設備設計についてもサポートしておりますので、ぜひご相談ください。

 

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