近年の電気料金の値上げを受け、オフィスや店舗のエアコンを、省エネ性能の高い最新モデルに交換しようと考えている企業も少なくないでしょう。
しかし、省エネ性能に優れた業務用エアコンは、導入コストが高額な傾向にあります。そのため、「具体的にどのくらいの節電効果があるのか」「既設エアコンと入れ替えるほどメリットがあるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
そこで本記事では、最新の業務用エアコンの省エネ性能や選び方などを詳しく解説します。
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▼目次
最新の業務用エアコンの省エネ性能について
最新の省エネモデルへの切り替えにより、年間の消費電力量を大幅に削減することが可能です。
実際に、パナソニックの旧製品(2012年モデル:PA-P80UM1SX)をご使用中の場合と、現行品(PA-P80U7SGB)に入れ替えた場合を比較してみると、年間あたりの消費電力量の削減効果は43%となりました。電気代の削減額は27,100円と、その節約効果は57%にもなります。(※)
さらに、資源エネルギー庁のデータによると、一般的なオフィスビルにおける夏場の電力消費割合は、空調が約5割を占めています。このため、省エネタイプのエアコンを導入することで、大幅な電気料金の削減につながることがわかります。
企業の経費削減と環境への配慮を両立させるためにも、省エネ性能の高い業務用エアコンへの切り替えを検討する価値は十分にあると言えるでしょう。
画像引用元:夏季の省エネ・節電メニュー 令和5年6月|資源エネルギー庁|経済産業省
※1台あたりの試算です。
※電気代は(社)日本冷凍空調工業会の統一条件のもとに運転した場合の計算値であり、地域やご使用状況により変わることがあります。(統一条件:規格 JRA4002:2013R/地区 東京/建物用途 事務所/使用期間 【冷房】4月19日〜11月11日【暖房】12月3日〜3月15日/使用時間 8:00〜20:00 6日/週 /電気料金単価 東京電力 低圧電力契約))
※電気代に基本料金は含まれていません。
※旧製品の電気料金は、機器の経年劣化を考慮して算出しています。
また、エアコンを入れ替えた場合の試算は、以下のソフトから無料で行えます。エアコンの入れ替えを検討中の方は、参考にしてみてください。
パナソニックの業務用エアコンから見る省エネ性
省エネ性能の優れた業務用エアコンの具体例として、パナソニックの「4方向天井カセット形」を取り上げ、その省エネ性や機能性について詳しく見ていきましょう。
パナソニックの最新モデルは、高い省エネ性能と快適性を両立させています。
省エネ性
パナソニックの「XEPHY Premium」シリーズは、業界トップクラスの省エネ性を実現しています。
この高い省エネ性能は、エアコン本体のカバー(筐体)の見直しから始まり、各要素の最適化を図ることで達成されました。その結果、全機種において従来のAPF値が飛躍的に向上しています。
APF値とは、消費電力量に対する冷暖房能力を数値化したもので、数値が高いほど省エネであることを示します。
詳しくは後述の「APF値の高さ」で解説します。
【能力ごとのAPF値】
このように、パナソニックの最新モデルは、高い省エネ性能を実現することで、企業の電気代削減に大きく貢献します。
省エネ機能
パナソニックの業務用エアコンには、省エネ性能を高める3つ機能が搭載されています。
これらの機能により、快適性を保ちながら効率的なエネルギー利用が可能になります。
【1】活動量に応じて自動で運転
人の動きや部屋の状態に合わせて自動で設定温度を調整する機能です。
人の活動量や不在に応じて細やかに調整することで、無駄な消費電力を削減します。人が不在時の省エネ効果は最大41%にもなります。
オフィスや店舗など、人の出入りや活動量が変化する環境で特に効果を発揮します。
【2】人の動きに合わせて気流を調整
人感センサーが人の動きを検知し、それに合わせて気流を調整する機能です。
場所の違いによる温度変化を防ぎ、室内のどこにいても快適に過ごすことができます。
また、冷やしすぎや暖めすぎも防いでくれるため、無駄な運転が減り、さらなる省エネ効果が期待できます。
【3】サーキュレート機能による「空気ムラ」を防ぎ、素早く快適温度へ
暖房時に床の温度の低さを検知すると、自動でサーキュレート機能が作動する機能です。
この機能により、部屋全体の温度を安定させるまでの時間が約60分も短縮されます。 快適な室内空間を素早く作り出すことで、風量や温度を上げる必要がなくなり、消費電力量の削減につながります。
パナソニックでは、高性能な省エネエアコンを用意しておりますので、ぜひこの機会に下記リンクよりご覧ください。
省エネで考える業務用エアコンの選び方
省エネ性能の高い業務用エアコンを選ぶ際に注目したいポイントとして、以下の3点を紹介します。
- APF値の高さ
- 空間の広さ
- センサー機能の有無
それぞれ見ていきましょう。
APF値の高さ
APF値とは、1年を通して一定の条件下でエアコンを使用したときの、消費電力量に対する冷暖房能力を示す指標です。
この値はカタログなどで確認することができ、数値が高いほど省エネ性能が優れていることを意味します。
目安としては、省エネ法で定められた目標基準値より高い製品であるかどうかを確認するとよいでしょう。
■業務用エアコンの基準値(APF値) ※2025年トップランナー基準値
製品区分 /形式
|
店舗用 |
マルチエアコン |
設備用 |
||
---|---|---|---|---|---|
4方向天カセット |
上記以外 |
床置直吹形 |
床置ダクト形 | ||
40 |
6.0 |
5.1 |
‐ |
‐ |
‐ |
45 |
5.9 |
5.0 |
‐ |
‐ |
‐ |
50 |
5.9 |
5.0 |
‐ |
‐ |
‐ |
56 |
5.8 |
4.9 |
‐ |
‐ |
‐ |
63 |
5.8 |
4.9 |
‐ |
‐ |
‐ |
80 |
5.7 |
4.8 |
5.7 |
‐ |
‐ |
112 |
6.0 |
5.1 |
5.5 |
‐ |
‐ |
140 |
5.7 |
4.8 |
5.2 |
4.9 |
4.7 |
160 |
5.5 |
4.7 |
5.0 |
‐ |
‐ |
224 |
5.1 |
4.3 |
5.5 |
4.9 |
4.9 |
280 |
4.8 |
4.0 |
5.1 |
4.7 |
4.7 |
335 |
‐ |
‐ |
4.8 |
‐ |
‐ |
400 |
‐ |
‐ |
4.8 |
‐ |
‐ |
450 |
‐ |
‐ |
4.6 |
‐ |
‐ |
500 |
‐ |
‐ |
4.4 |
‐ |
‐ |
504 |
‐ |
‐ |
4.3 |
‐ |
‐ |
※JRA4048:2006に基づく値
なお、APF表示の対象機種は以下のとおりで、すべての製品に表示されているわけではないので注意が必要です。
【APF表示の対象機種】※
「店舗・オフィス用エアコン」「ビル用マルチエアコン」「設備用エアコン」のうち、定格冷房能力が56kW以下の「空冷式冷房専用形」および「空冷式冷房・暖房兼用(ヒートポンプ)形」。
【APF表示の対象外の機種】※
冷暖同時運転タイプ、水冷式、蓄熱槽をもつもの、電算機室用、オールフレッシュ形、機械機器および食料品向け、車両空調などの特殊機種。
※引用:業務用エアコンのAPF表示について|日本冷凍空調工業会
空間の広さ
業務用エアコンは、空間の広さにあった能力(馬力)の製品を選択しなくてはなりません。オーバースペックのものを選んでしまうと、省エネエアコンにも関わらず、消費電力が上がってしまいます。
エアコンを選ぶ際は、下記の利用状況をふまえて担当者に相談するとよいでしょう。
- 部屋の広さ
- 部屋の使用目的
- 人の出入り頻度
センサー機能の有無
最新の業務用エアコンは、以前のモデルに比べて省エネ性自体が向上していますが、より節電効果を上げるにはセンサー機能の有無が重要な要素となります。
センサー機能を備えたエアコンは、人の活動状況や室内の気温を検知し、効率的な空調を行います。そのため、消費電力や電気代を最小限に抑えながら、快適な室内空間を維持することが可能です。
前述したパナソニックの業務用エアコンも、人感センサーによる省エネ運転に対応しています。
省エネ業務用エアコンの導入が難しい場合の解決策
省エネ性能の高いエアコンは、長期的にみればコストの削減に大きく貢献しますが、導入コストが高い傾向にあるため、導入が難しい企業もあるでしょう。
そこで、省エネ業務用エアコンの導入が難しい場合の解決策として、以下の2つの方法を紹介します。
これらの方法を活用することで、既存のエアコンでも省エネ効果を高めることができます。
解決策1:使い方を工夫する
省エネ性能の高い最新型の業務用エアコンでなくても、以下の対策を実施することで、電気代をある程度減らすことが可能です。
今日からできる省エネ対策 |
詳細 |
設定温度を調整 |
1℃変えると消費電力量を以下のとおり削減できる(※) [冷房時]約13% [暖房時]約10% |
風量設定は「自動」 |
室内温度に応じた温度設定を自動で行ってくれるため、常に「強風モード」よりも省エネ |
空気を循環 |
「温度ムラ」による冷やしすぎ・温めすぎを防ぐためにサーキュレーターや扇風機を用いて空気を循環させる |
定期的なフィルター掃除 |
ホコリや汚れを掃除すると消費電力量を削減できる |
適切な換気 |
換気は大切だが、換気回数が多すぎると空調負荷が上がってしまうため、適切に換気を行う [空調負荷]部屋の温度を調整するために必要なエネルギー量 |
室外機周辺の環境の整備 |
吹出口や吸込口周辺の風通しが悪い、温度が高いと運転効率が下がるため、以下の方法で適切な環境を整備する ・室外機の前の障害物を移動させる ・日陰をつくる(すだれなど) ・室外機の周りに打ち水をして周辺温度を下げる |
※出典元:エアコンの使い方について | 家庭部門のCO2排出実態統計調査|環境省
これらの方法は簡単に実践できるので、ぜひ今日から試してみてください。小さな工夫の積み重ねが、大きな省エネ効果につながります。
なお、業務用エアコンの掃除方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
解決策2:補助金制度を活用する
省エネ性能の高い業務用エアコンの導入を検討する際、政府や地方自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、導入コストを軽減できる可能性があります。
環境保護やエネルギー資源の安定供給などを目的に、省エネ製品の導入を促進するための支援策が多数存在しています。
参考として、国と自治体による補助金制度を一つずつ紹介します。
実施機関 |
制度名 |
詳細 |
国 |
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業) |
<補助額> 設置計画作成支援:50万円~200万円 設置支援:5,000万円~5億円(※事業の種類によって決まる) <申請期限>未発表(本制度の実施機関は2025年度まで) |
自治体 (東京都) |
<補助額>2/3~3/4 上限:1,000~5,000万円 ※満たす要件によって決まる <申請期限>2025年1月31日まで(年度ごとに期限設定あり) |
これらの補助金制度を活用することで、初期投資の負担を軽減しつつ、省エネ性能の高い業務用エアコンを導入することができるでしょう。
ただし、補助金制度によって申請方法や期限、支給対象などの条件は異なります。
詳細については、各制度の公式ホームページや設置業者等にご相談ください。補助金制度の最新情報や詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、省エネ性能の高い業務用エアコンの特徴や導入メリット、選び方について詳しく解説してきました。
最新の省エネモデルへの切り替えにより、年間の消費電力量を大幅に削減することが可能です。
省エネ業務用エアコンを選ぶ際は、APF値の高さ、空間の広さ、センサー機能の有無などを考慮することが重要です。
特に、人感センサーなどの最新機能を搭載したモデルは、使用状況に応じた細やかな制御が可能となり、さらなる省エネ効果が期待できるでしょう。
パナソニックでは、お客様のニーズに合わせた最適な省エネモデルの業務用エアコンをご提案しています。
設置規模や利用状況に応じたきめ細かなアドバイスも可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。
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