建物には、建築基準法により換気設備の設置が義務付けられています。設置する換気設備は、必要換気量を満たす必要がありますが、どのように算出したら良いのでしょうか。
本記事では、必要換気量の計算方法を紹介します。いくつかある必要換気量の計算方法のなかでも、特に使用頻度の高いものを見ていきましょう。具体例も掲載しているので、計算の際の参考にしてください。
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◾️この記事でわかること
- 必要換気量の計算式がわかる
- 換気回数の計算方法がわかる
- 換気設備の必要性がわかる
換気の必要性
換気設備の設置は、2003年の建築基準法改正によって義務付けられました。義務化の背景には、建物の構造の変化があります。
昔の建物は、隙間が多く意識的に換気をする必要がありませんでした。現在の建築物は、空調効率向上などの理由から気密性が高くなっており、空気が循環しにくい構造になっています。そのためウイルスや菌が滞在しやすく、インフルエンザや風邪などの感染リスクが高まってしまうのです。室内に人が多くいる場合、酸素不足や二酸化炭素濃度が上がることも考えられます。
このような、現在の建物の特徴を考慮すると、人体に悪影響を及ぼす物質を排除し空気環境を改善するために、適切に換気を行う必要があるのです。
また、必要換気量を満たすには、それに見合った有効換気量を持つシステムが必要です。有効換気量とは、ダクトや機械換気設備の圧力損失を加味した実際の風量のことを指します。
必要換気量の計算方法
必要換気量の計算方法はいくつかあり、設置する部屋の用途や目的によって異なります。ここでは、主に利用される下記3つの計算方法について、詳しく解説します。
【2】部屋の必要換気回数から計算する
【3】床面積から計算する
【1】1人あたりの占有面積から計算する
次に、建築基準法で定められた1人あたりの必要換気量を用いて計算します。建築基準法で定められた1人あたりの必要換気量とは「20(㎥/h・人)」(成人男性が静かに座っている状態を想定)のことです。
【計算式】
また、1人あたりの占有面積(㎡)は利用する部屋の用途・業態などによって異なります。
■業務用施設での換気設備の基準となる1人あたりの占有面積
建物区分 |
1人当たり占有面積 |
備考 |
レストラン・飲食店・喫茶店 |
3㎡ |
営業の用途に供する部分の床面積 |
キャバレー・ビヤホール |
2㎡ |
同上 |
料亭・貸席 |
3㎡ |
居室の床面積 |
店舗 マーケット |
3㎡ |
営業の用途に供する部分の床面積 |
卓球場・ボーリング場など |
2㎡ |
同上 |
パチンコ店・囲碁クラブ |
2㎡ |
同上 |
旅館・ホテル・モーテル |
10㎡ |
|
特殊浴場 |
5㎡ |
営業の用途に供する部分の床面積 |
集会場・公会堂 |
0.5~1㎡ |
|
事務所 |
5㎡ |
事務室の床面積 |
これらの情報を踏まえて、必要換気量を計算してみましょう。
<例>
・床面積が100㎡の部屋を事務所として活用する場合。
以上の計算から、1時間当たり400㎥の換気が必要という結果となりました。
【2】部屋の必要換気回数から計算する
部屋の用途による必要換気回数から、必要換気量を求めることも可能です。部屋によって必要とされる換気回数の目安は、建築設備設計基準に沿って以下のように定められています。
■換気回数の目安
項目 |
換気回数(回/h) |
トイレ・洗面所 |
5~15 |
ロッカー室・更衣室 |
5 |
書庫・倉庫・物品庫 |
5 |
暗室 |
10 |
コピー室・印刷室 |
10 |
映写室 |
10 |
配膳室 |
8 |
シャワー室 |
5 |
浴室 |
5 |
脱衣室 |
5 |
食品庫 |
5 |
厨芥置場(※) |
15 |
※台所から出る野菜のくずや食べ物の残りなどの置き場のこと
【計算式】
この式をもとに、換気量を計算してみます。
<例>
・場所:書庫・倉庫・物品庫
・必要換気回数:5(回/h)
・部屋の広さ:6畳(≒10㎡)
・天井までの高さ:2.4m
以上の計算から、1時間当たり120㎥の換気が必要という結果となりました。
【3】床面積から計算する
ここでは、換気をする部屋の床面積から計算する方法を紹介します。床面積から計算する場合、居室に応じて定められた必要換気量の参考値を用いて計算します。
【居室に応じた必要換気量の参考値】※一部抜粋
室名 |
標準在室密度(m2/人) |
必要換気量(m3/m2・h) |
事務所(個室) |
5.0 |
6.0 |
事務所(一般) |
4.2 |
7.2 |
休憩室 |
2.0 |
15.0 |
小会議室 |
1.0 |
30.0 |
参考資料:空調・衛生工学会規格「HASS 102 1972」
【計算式】
それではこの計算式を使って、実際に必要換気量を求めてみましょう。
<例>
・事務所(一般)
・事務所の床面積:100(㎡)
この事務所では、1時間当たり720㎥の換気が必要です。
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必要換気量は状況に応じて異なる点に注意
これまで紹介した必要換気量は、あくまで目安であり、性別や年齢、個々の活動レベルは含まれていません。「日本建築学会環境系論文集」によると、人間から排出されるCO2排出量は活動レベルに応じて、以下のように変化するとの記載があります。
活動レベル(労働強度) |
CO2排出量(m3/h) |
安静時 |
0.0132 |
極軽作業時 |
0.0132~0.0242 |
軽作業時 |
0.0242~0.0352 |
中等作業 |
0.0352~0.0572 |
重作業 |
0.0572~0.0902 |
建築基準法における必要換気量「20(㎥/h・人)」は、安静時の活動レベルを想定して設定されています。また、上記の表は成人男性の目安であり、女性は表の値の90%、子どもは表の値の50%程度となると考えられているため、注意して計算をしましょう。
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必要換気量はさまざまな方法で計算できます。計算式自体は簡単なものですが、建物の状況や環境、個々の活動レベルによって使う場面が異なってきます。今回紹介した計算式をもとに、空間において最適な換気量を考えましょう。
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