建物の新築や大規模なリニューアルには、「建築確認申請」が必要です。この申請は、建物の安全性を確保するために重要な手続きであり、建物が建築基準法に沿っているのかを確認するために行われます。
建築確認申請にはいくつものチェック項目があります。換気設備については、換気計算をおこない、必要な換気量を満たしていることを証明しなければなりません。
換気計算にはいくつかのやり方があるため、建築確認申請における換気計算の重要性を理解したうえで、最適な計算を行ないましょう。
この記事では、建築確認申請の概要と、換気計算が重要な理由、申請の流れを解説します。
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■この記事でわかること
- 空換気計算が必要な理由
- 換気計算から建築確認申請までの流れ
- 正確な換気計算のやり方
▼目次
換気計算が必要な理由:建築確認申請とは
快適で健康的な室内環境を維持するためには適切な換気が欠かせません。建築基準法では、建物を設計する際に適切な換気設備の設置が義務付けられています。
建築確認申請では、この換気設備が基準を満たしているかどうかの確認が行われます。
建築確認申請とは
建築確認申請とは、建物の設計が建築基準法といった法令に適合しているか確認するための手続きです。ここでは申請が必要な建物と、必要な手続きについて解説します。
建物を新築する際や大規模な修繕を行う際に必要な手続き
建築確認申請は、新しい建物を建てるときや大規模な修繕等を行う際に必要となる申請です。その建物が、建築基準法やその他の条例を守っているかを審査します。
申請書の提出は自治体または民間の指定確認検査機関で受け付けており、確認済証を受け取ることで工事に着手できます。建築確認申請を経て建物を建てる・修繕するときの流れは以下のとおりです。
- 建築確認申請の申し込み
- 自治体の確認・建築確認済証の交付
- 着工
- 建物完成・完了検査の申請
- 完了検査・検査済証の交付
申請が必要な建物
立地や建物の条件によっては、申請が不要なケースがあります。ただし、2025年4月(予定)に施行される法改正により建築確認申請が必要な建物が変わるため、ここでは現行と改正後に分けて解説します。
現行では、都市計画地域内か地域外かによって申請が必要な建物が、以下のように設定されています。
都市計画「区域内」 |
1.新築、増改築部の総面積が10m2を超える建物 ※防火・準防火地域では、10m2以下の建物でも建築確認申請が必要 |
都市計画「区域外」 |
1.延床面積が100m2を超える特殊建築物(映画館、病院、学校など) 3.以下に該当する木造以外の建物 |
上記に該当しない建物でも市町村ごとに定めた条例や法律によって申請が必要になるケースがあるため、詳細は建物を建てる市町村窓口などにお問い合わせください。
続いて、改正後の建築確認申請が必要な建物について見ていきましょう。現行では、4号建築物に該当する建物に限って一部審査が省略されています。(いわゆる4号特例)
一方、2025年4月(予定)の改正後は4号建築物という概念が廃止され、都市計画区域に関係なくすべての地域で建築確認申請が必要となりました。
ただし、新3号建築物では現行法と同様に建築確認申請の一部提出を省略できます。
■4号建築物とは
木材の場合 |
木造以外の場合 |
・特殊建築物でない建物(映画館、病院、学校など) ・2階建て以下 ・延べ面積:500m2以下 ・高さ:13メートル以下 ・軒高:9メートル以下 |
・特殊建築物でない建物(映画館、病院、学校など) ・平屋 ・延べ面積:200m2以下 |
■現行と改正後の比較図
引用:2階建ての木造一戸建て住宅 (軸組構法) 等の - 確認申請・審査マニュアル
新2号建築物とは |
・木造2階建て ・平屋かつ延床面積200m2超え |
新3号建築物とは |
・平屋かつ延床面積200m2以下 |
■改正によって変わる審査項目と、それに伴って必要な図書の提出について
引用:2階建ての木造一戸建て住宅 (軸組構法) 等の - 確認申請・審査マニュアル
このうち、換気計算に関する建築確認申請の項目は、「構造関係規定」と「設備その他単体規定」の2つです。
改正後の新2号建築物はすべての地域で申請が必要となります。一方、新3号建築物は「構造関係規定」の申請が不要ですが、「設備その他単体規定」では24時間換気システムについての申請が必要となります。
4号特例について以下の記事で紹介しているため、こちらも参考にしてみてください。
建築確認申請における換気計算の必要性
換気設備の設置は、建物の安全性と居住者の健康の確保を理由に、2003年の建築基準法改正によって義務付けられました。
設置する換気設備は「必要換気量」を満たす必要があり、建築確認申請時も算定した必要換気量を満たしていることを証明する必要があります。
しかし、2003年よりも前に建てられた建物をリニューアルする場合は、これまで換気設備の設置が義務付けられていなかったことから、換気が不十分なケースも珍しくありません。
そのため、リニューアル時には現状の換気設備を把握し、必要に応じて最新の基準に適合するような改修が求められます。
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換気計算から建築確認申請までの流れ
建築確認申請を行う際は、まず換気計算を行ったうえで換気設備を決定しましょう。ここでは、具体的にどのような流れで実施するのかを紹介します。
1.換気計算
まずは、建物に適した換気設備を決めるために換気計算を行います。換気計算にはいくつかのやり方がありますが、主に利用される計算方法は以下の3つです。
計算方法 |
詳細 |
1人あたりの占有面積 |
建築基準法で定められた、1人あたりの必要換気量を用いた計算式(1人あたり20㎥/h) |
部屋の必要換気回数 |
建築基準法で定められた、部屋の用途別の必要換気回数を用いた計算式(用途例:トイレ、配膳室、食品庫など) |
床面積 |
部屋の床面積を用いた計算式 |
どの計算式を用いて換気計算を行うかは、その部屋を利用する用途や活動レベルなど、さまざまな条件によって異なります。換気計算の方法については以下の記事で紹介していますので、こちらもご覧ください。
2.換気設備の決定
換気計算と建築基準法等の法令に基づき、その部屋に合った換気設備を決めます。換気設備を決定するにあたって考慮したいポイントは下記の表のとおりです。
考慮したいポイント |
詳細 |
方法 |
・自然換気 ・機械換気 |
換気方式の種類 |
・第1種換気 ・第2種換気 ・第3種換気 |
取り付け方の種類 |
・天井付式(ダクト式) ・壁付式(パイプ式) |
空気の流れ |
・滞りなくすべての室内空間を換気できるか ・給気量と排気量のバランスはとれているか |
省エネ性 |
換気によるエネルギーロスを削減できるか |
換気システムの選定においては以下の記事をお役立てください。
3.確認申請書への記載
換気に関する確認申請書へ記載する際は、最新版の条項の申請書類であるかを確認したうえで、必要に応じてダウンロードしましょう。対象は「第2号様式」、名称は「確認申請書(建築物)」です。
ダウンロード先は各種検査機関や自治体のホームページで確認できます。確認申請書が用意できたら建築物別概要ページの【10.建築設備の種類】の欄に換気設備と記入します。
【確認申請書の記載例】一般財団法人 ふくしま建築住宅センターの書式・記載例
引用:確認申請書 作成要領
次に「【10.建築設備の種類】の欄に関して添える別紙」に換気計画を記載します。
【確認申請書の記載例】一般社団法人 熊本建築審査センターの書式・記載例
引用:https://sinsa.bhckuma.or.jp/wp-content/uploads/2015/03/2b7bf2a4b024e403bc72ec24d85ad3b7.pdf
正確な換気計算は専門家へサポートを依頼しよう
建築確認申請の基準に適合する換気設備を導入するためには、正確な換気計算が不可欠です。しかし、換気計算にはいくつかの方法があり、活動レベルや性別などによって必要換気量が異なるため、正しい計算には専門的な知識や豊富な経験が求められます。
そのため、正確な換気計算を行うためには、空調設備メーカーなどの専門家へサポートを依頼することがおすすめです。専門家に依頼するメリットとしては、以下が挙げられます。
- 時間の節約:自身のコア業務に集中できる
- 提案:建物の用途などに応じた最適な換気システムを提案してもらえる
パナソニックでは、空調設計にまつわるサポートを無料で一貫して行っています。空質空調性能診断から、空調設備の機種選定、気流の設計、確認申請書類の作成といった複雑で手間のかかる工程も対応可能です。
換気計算をはじめとした空調設備のご相談は、ぜひパナソニックへおまかせください。
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まとめ
建築基準法の改正により、建物の新築や大規模なリノベーションを行う際には、適切な換気設備の設置が義務付けられています。
また、設置する換気設備は「必要換気量」を満たす必要があり、換気計算によって必要換気量の証明が求められます。
必要換気量はいくつかの方法で計算できますが、建物の環境や用途によって適切な計算方法が異なり、専門的な知識も必要です。
特にメイン業務で設計を行っているのであれば、合間のタイミングで換気計算や書類作成に時間をかけることも難しいかもしれません。パナソニックでは、換気計算を含む空質空調システムのサポートを提供しています。
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