7月 11, 2024
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換気設計における5つのポイント|快適な室内空間づくりの参考にしよう

換気設計は、健康や快適性を維持するうえで非常に重要な役割を持つものです。

室内の空気は、建材や家具から発生する有害物質、人間の呼吸、調理、掃除などの活動によって汚染されます。汚染物質が滞留すると「シックハウス症候群」を引き起こすことがあるため、適切な換気が必要です。

特に現代の建物は、気密性・断熱性が向上していることから、換気の重要性が増しています。また、換気設計を工夫することで、余計なエネルギー消費を最小限に抑えるため、省エネにもつながります。

本記事では、換気設計をする際のポイントをわかりやすく解説します。換気設計について理解を深め、健康と快適性を兼ね備えた環境を実現しましょう。

 

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換気設計のポイント

換気設計では、法律に則って設計することはもちろん、空気の流れを考慮した設計、適切な換気方式の選択、天井付式(ダクト式)・壁付式(パイプ式)の選択、省エネ性への配慮など、さまざまなポイントがあります。一つずつ見ていきましょう。

法律に則った換気設計

適切な換気が行われないと健康被害を及ぼすリスクがあるため、国は換気にまつわる法律として「建築基準法」と「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」を整備し、最低限の基準を設けています。それぞれの法律について詳しく紹介しましょう。

建築基準法

建築基準法とは、国民の命を守るために建築物関連の基準を定めたものです。建築基準法について、国土交通省住宅局は以下のように述べています。


建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低限の技術的基準を定めています。

引用:建築物における 効率的な換気の促進に関する取組事例集 令和4年6月


換気は、このなかの「構造」と「設備」に該当します。

【構造:法第28条第2項】居室の床面積に対する開口部の大きさ
換気に有効な開口部(窓やドアなど)の面積が、居室の床面積に対して1/20以上の比率でなければなりません。この開口部とは、例えば窓自体の大きさのことではありません。一般的な窓の種類である横に引くタイプであれば、スライドして窓が開いた部分のことを指します。

また、扉式の窓の場合は、窓が開く角度が45°以上であれば「窓の面積全体を開口部」として、45°未満では「開放面積×開放角度÷45」で計算した面積が開口部となります。

なお、換気に有効な開口部の面積は窓を開けた部分の「縦×横」で計算できますが、窓全体の大きさに(表1)の倍率をかけることでも算出できます。(窓の面積全体×表1の倍率)

(表1)
換気 設計_02

【設備①:法第28条第2項】換気に有効な開口部が1/20未満取れない場合
「建築基準法施行令第20条の2」に基づいた換気設備の設置が必要です。

【設備②:法第28条の2第3号】24時間換気システム
 シックハウス対策として、常時換気を行える設備「24時間換気システム」が義務付けられています。

 また、換気の重要性から安易に運転を停止できないよう、スイッチの設置場所等の工夫が求められています。ただし、居室の利用時間が限定されるオフィスなどに限っては、不在時に運転を停止することも考えられるため、運転開始時に速やかに規定のレベルまで換気を行えれば問題ありません。

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)は、多くの人が利用する施設が、衛生的な環境を保つための法律です。


この法律は、多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項等を定めることにより、その建築物における衛生的な環境の確保を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とする。

引用:建築物における衛生的環境の確保に関する法律 | e-Gov法令検索


建築物衛生法では、空気調和設備の有無や機能についての基準も定められています。

【空気調和設備の有無に関して】
空気調和設備を設置する場合は、(表2)の基準に概ね適合しなければなりません。

(表2)

ア 浮遊粉じんの量 

0.15mg/㎥以下

イ 一酸化炭素の含有率

100万分の6以下(=6ppm以下)

ウ 二酸化炭素の含有率

100万分の1000以下(=1000ppm以下)

エ 温度

18℃以上28℃以下

オ 相対湿度

40%以上70%以下

カ 気流

0.5m/秒以下

キ ホルムアルデヒドの量 

0.1mg/㎥以下(=0.08ppm以下)

引用:建築物における 効率的な換気の促進に関する取組事例集 令和4年6月

【空気調和設備の機能に関して】
空気調和設備に温度調節機能および湿度調節機械換気設備を設ける場合は、(表2)のうちア、イ、ウ、カ、キの基準にあらかた適合するよう調節しなければなりません。

給気・排気の流れの確保

室内あるいは建物内の空気をしっかりと換気できるよう、空気の流れを考えた設計も重要です。例えば、空気の入口(給気)と出口(排気)の距離が近いと、換気できない部分が生まれるため、対角線上に給気と排気を設置しましょう。

換気 設計_04

24時間システムにおいても同じことが言えます。建物全体が換気できるよう、空気の流れを考えた給気口と排気口の設置が必要になります。例えば、リビングから給気することでキッチンやトイレ、浴室の換気扇から排気できるでしょう。

なお、換気経路のドアには空気の通り道としてガラリや1㎝のアンダーカットが必要(開き戸の場合)です。折れ戸や引き戸といった隙間の多いドアについては、そのままの状態でも換気経路として認められます。

換気方式の種類の選択

換気方式には、第一種換気、第二種換気、第三種換気があります。それぞれの特徴を理解したうえで、建物や用途に最適な方式を選択することが重要です。

換気 設計_03

第一種換気

第一種換気とは、給気も排気も機械で行う換気方式です。給気と排気のバランスを調整できるため、確実に換気量をコントロールできます。建物の空気品質を管理し、快適な環境を維持することに長けています。

デメリットとしては機械が2つ必要となるため、他の種類と比べて導入費用がかさむ点です。なお、第一種換気は1時間あたりの換気量が決まっているため、設置環境で必要とする換気量に適した選択を行いましょう。

 

第二種換気

第二種換気とは、給気を機械で行い、排気を自然に行う換気方式です。

自然といっても、基本的には窓ではなく、排気口や建物の隙間から排出します。空気の入口にある給気ファン(機械)が外気を強制的に取り込み、室内の空気を外に押し出し続けるのです。これにより、室内の空気圧は外気よりも高くなります。(正圧という)

空気は気圧の「高い場所」から「低い場所」へ流れるという性質があるため、室内の空気圧が高くなる第二種換気は、室外の汚れた空気の侵入を防ぎます。

このような特徴から、第二種換気は、一般的に手術室やクリーンルーム、食品工場などで採用されています。

第三種換気

第三種換気とは、給気を自然に、排気を機械で行う換気方式です。浴室やトイレ、キッチンの換気扇のように、湿気やニオイを素早く排出したい場所に適しています。ただし、給気と排気のバランスを維持することが難しく、汚れた空気が入る可能性もあります。

天井付式(ダクト式)・壁付式(パイプ式)の選択

換気設計の際には、天井付式(ダクト式)と壁付式(パイプ式)のうち、どちらかを選ぶ必要があります。

天井付式(ダクト式)は、天井裏にダクトを通して換気を行うシステムです。一方の壁付式(パイプ式)はダクトがなく、室外と室内をパイプでつないで設置するシステムです。それぞれの特徴を考慮して選択をしましょう。

タイプ

特徴

天井付式(ダクト式)

・部屋のレイアウトや使用目的に合わせて柔軟に設計できる

・外に面していない建物も換気ができる

・換気量などのコントロールがしやすい

壁付式(パイプ式)

・設置工事が安易

・メンテナンスが安易


より確実な換気が必要になるような大規模オフィス等であれば、天井付式(ダクト式)が、一般住宅や小規模なオフィスなど、設置工事やメンテナンスのコストや手間を抑えたい場合は壁付式(パイプ式)が適しているといえます。

どちらが適しているかは設置環境でも異なるため、専門家に相談してみるのもよいでしょう。

省エネ性への配慮

従来からのシックハウス症候群に加えて、ウイルス感染の予防として適切な換気が呼びかけられている今、換気への関心が高まっています。しかし、エネルギーロスについても考える必要があります。

窓を開けて換気する場合、建物内の暖房された空気や冷房された空気が外部に放出され、外気が室内に取り込まれます。これにより建物内の温度や湿度が外部との差異によって影響を受け、暖房や冷房の効率が低下し、結果としてエネルギーが無駄に消費されてしまいます。

効率的な換気を確保するためにおすすめなのが、全熱交換器の導入です。全熱交換器は、熱が温度の高いところから低いところへ行く原理を活用し、建物から排出される空気の熱だけを室外から取り込まれる空気に移動させるシステムです。空調から給気される空気の温度と室内温度の差が少ないため、冷暖房負荷が減りエネルギー消費量が削減します。

 

パナソニックで空気質をトータルコーディネートしよう

適切な換気設計には、専門的な知識が問われます。意匠設計士の方が自分で設計を行うケースもありますが、専門的な知識がない状態で設計をすることで適切な設計とならず、施主様からのクレームにつながってしまうリスクもあります。

(例)


  • 給気量と排気量のバランスが取れず、換気がうまくできていない状態になってしまう
  • 換気が冷暖房の効率を妨げ、快適性や省エネ性を損ねてしまう など


だからこそ、換気設計では専門家のサポートを受けることが大切です。

パナソニックでは、空調・換気の導入から運用までワンストップでの提供が可能です。空質・空調機器を組み合わせ、換気に限らず空気質をトータルでコーディネートします。

快適性、省エネルギー性を両立し、お客様の課題に合わせた最適なソリューションを提供します。

 

 

まとめ

換気設計では、法令をはじめとする、専門的な知識が多く問われるうえに、手間もかかります。専門知識がない状態では施主様からのクレームリスクを負う可能性もあるでしょう。

パナソニックでは、換気設備を含めた空調設備の設計のサポートを行なっています。空調や換気システムの機器選定はもちろん、換気計算や気流の設計についてもサポート可能です。設計図面だけ共有することで対応できるため、設計士さんの負担を減らすことができます。

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