9月 11, 2024
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非住宅の省エネ計算の方法|基準や3つの方法について解説

法改正により、2025年からは全ての新築非住宅建築物に建築物省エネ法への適合が求められるようになる予定です。これを受け、非住宅建築物における省エネ計算の重要性がさらに増しています。

本記事では、非住宅建築物における省エネ計算の重要性や基準、計算方法について詳しく解説します。

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非住宅建築物における省エネ計算の重要性

「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」の対象となる建築物は、一定の基準を満たすために「省エネ計算」を行う義務があります。

建築物省エネ法は、平成27年7月に、建築物の省エネ性能を向上させることを主な目的として制定されました。この法律では一定規模以上の建築物に対するエネルギー消費性能基準適合義務や、誘導基準に適合した建築物の容積率緩和特例などが定められています。

2024年現在、建築物省エネ法の対象となるのは300㎡以上の非住宅建築物です。しかし、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により、2025年からはすべての新築非住宅建築物に適合が求められることになります。

この基準に適合しない場合、確認済証や検査済証の交付を受けることができません。そのため、工事の着手や建築物の使用ができなくなる可能性があります。

こうした背景から、非住宅建築物における省エネ計算の重要性はますます高まっています。



 

非住宅における建築物省エネ法の基準

非住宅建築物の省エネ計算では、主に「一次エネルギー消費基準(BEI)」と「外皮基準(PAL)」の2つの基準が用いられます。

それぞれの基準について詳しく見ていきましょう。


  • 一次エネルギー消費基準(BEI)
    建築物が使用する電気やガスといった全てのエネルギー源から、総エネルギー消費量をあらわす指標。冷暖房の効率や断熱性能、照明や電子機器の消費エネルギー量を分析することで、エネルギー効率の高い建築物を作る上での具体的な目標設定に活用できる。

  • 外皮基準(PAL)
    建築物の外皮部分の性能を評価する指標。外壁、屋根、床などの断熱材の種類や厚さ、設置方法なども対象として評価する。主に建物の設計初期段階で活用され、エネルギー効率の高い建築物を作るための基準として役立つ。

非住宅建築物における各基準の適用は、以下の表のとおりです。

 

エネルギー消費性能基準

誘導基準

適用

平成28年4月1日以降に建設 

平成28年4月1日よりも前に建設

平成28年4月1日以降に建設

平成28年4月1日よりも前に建設

一次エネルギー消費量基準(BEI)

1.0

1.1

0.8

1.0

外皮基準(PAL)

-

-

1.0

-

参照:建築物省エネ法の概要

非住宅建築物には「外皮基準」は適用されませんが、「一次エネルギー消費量基準」の計算には外皮性能に関する項目が必要となります。そのため、実質的には非住宅においても外皮計算を用います。

 

非住宅の省エネ計算方法

非住宅建築物の省エネ計算には、主に以下の3つの方法があります。


  • 標準入力法
  • モデル建物法
  • 小規模モデル建物法(基準適合義務制度施行後は廃止)


それぞれの特徴や適用範囲が異なるため、建築物の規模や用途に応じて最適な方法を選択することが重要です。

なお、こうした省エネ計算は、国土交通省が提供する省エネ計算プログラムを用いて行います。

参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム

 

標準入力法

標準入力法は、対象となる建築物の全ての部屋単位で床面積、設備機器の内容、外皮性能といった情報を用いて計算を行う手法です。

詳細な計算を行うことができ、3つのなかで最も精度が高いことが特徴です。部屋ごとに計算を行うため、部屋によって用途が異なる建築物でも正確な計算が可能となります。

一方で、部屋数が多い場合には入力が多岐にわたるため、時間とコストがかかります。行政への申請や適合判定にかかる手数料も大きくなる傾向がある点には注意が必要です。

標準入力法は、一般的にモデル建物法よりも良い数値が出やすいとされています。そのため、建築物省エネ法に基づく第三者認証制度であるBELSにおいて、より高い評価を得たい場合に有効です。

モデル建物法

モデル建物法は、過去の実績をもとに国がモデル化したデータを用いて計算を行う方法です。

全ての部屋を計算対象とするのではなく、建築物の主な部屋のみで用途や外皮、設備情報を入力して計算します。標準入力法と比べると簡易に計算を行うことができ、短時間で結果を得られます。

このため、一般的な省エネ適合義務や届出義務への対応には、省エネ計画書の作成・審査双方の負担を軽減できるモデル建物法を採用するケースが少なくありません。

小規模版モデル建物法

小規模版モデル建物法は、床面積300㎡未満の建物を対象とした手法です。

モデル建物法の入力項目が90項目程度なのに対し、小規模版モデル建物法は30項目程度と、より簡易的な評価方法となっています。

この方法は、説明義務制度への対応のために開発されましたが、省エネ適判、省エネ届出、BELS認証などには使用することができません。また、2025年4月(予定)の基準適合義務制度施行後は廃止されることが決まっています。

まとめ

非住宅建築物は、住宅と比べて使用するエネルギーの種類や量が異なるため、法令遵守や環境負荷低減の観点で特別な配慮が必要です。また、2025年からは全ての新築非住宅建築物に適合が求められるため、省エネ計算の重要性はさらに高まっています。

それと同時に、設計士や施工者の負担増加も予想されます。省エネ計算はプログラムを活用して算出しますが、非常に複雑であり専門的な知識も必要です。万が一、計算ミスなどが発生すると、手戻りの手間がかかるだけでなく、工事の遅れや、最悪の場合施工のやり直しが必要になる可能性もあります。

設計士さんが自分で対応するハードルはかなり高いため、こうした作業は各分野の専門家へサポートを依頼することをおすすめします。専門家のサポートを上手に活用することで、設計士さんの負担を減らし、よりコア業務に注力することができるようになるでしょう。

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