6月 9, 2025
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ZEB化に活用できる2025年度(令和7年度)の補助金制度の要件や対象を解説

 

建築物のZEB化は、一次エネルギー消費量の削減による光熱費削減だけでなく、快適性の向上、不動産価値の向上、事業継続性の向上というメリットがあります。


国は「2050年カーボンニュートラル実現」をめざし、その道筋として2030年までに新築建築物がZEB基準の省エネルギー性能を確保することを掲げており、今後はZEB化が一般的になるでしょう。

一方で、ZEB化は平成28年の省エネルギー基準相当と比較して建築費が増えるため、初期投資の準備や回収計画の検討が求められ、費用面での課題も考えられます。そこで活用したいのが補助金制度です。

本記事では、ZEB化に活用できる2025年度(令和7年度)の補助金制度について、それぞれの要件や対象を詳しく解説します。

 

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 ■この記事でわかること

  • 令和7年度に実施が見込まれるZEB補助金
  • 地方自治体のZEB補助金

【令和7年度予算(案)】ZEB補助金

令和7年度予算(案)では、以下の3つの補助事業が実施予定となっています。現状(2025年4月時点)は参議院での可決待ちで、予算案が出されている段階です。

制度名

補助額

建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業

■ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業


2/3~1/4(上限3~5億円)


■LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業


3/5~1/3(上限5億円)

脱炭素ビルリノベ2025事業
(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)

上限10億円

定額1/2相当
定率1/3

地域脱炭素推進交付金

■脱炭素先行地域づくり事業


原則2/3


■重点対策加速化事業


定額2/2~1/3


■特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】


原則2/3


建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業

建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業は、次の2つの事業が実施予定となっています。


  • ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業
  • LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業

 

ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業

「ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業」は、2050年カーボンニュートラル達成に向け、建築分野でのCO2削減を目的とした制度です。

「延べ床面積」「新築建築物か既存建築物」「達成したZEBの区分」に応じて補助率が決まります。上限額は3~5億円となっていますが、正確な金額は発表されていません。

■補助額

延べ床面積

補助率(上限3~5億円)

新築建築物

既存建築物

延床面積2,000m2未満

<ZEB>1/2

<Nearly ZEB>1/3 

<ZEB Ready>対象外

<ZEB>2/3

<Nearly ZEB>1/2

<ZEB Ready>対象外

延床面積2,000~10,000m2

<ZEB>1/2

<Nearly ZEB>1/3

<ZEB Ready>1/4

<ZEB>2/3

<Nearly ZEB>2/3

<ZEB Ready>2/3

延床面積10,000m2以上

<ZEB>1/2

<Nearly ZEB>1/3

<ZEB Ready>1/4

<ZEB Oriented>1/4

<ZEB>2/3

<Nearly ZEB>2/3

<ZEB Ready>2/3

<ZEB Oriented>1/2


■補助対象事業


ZEB化に貢献するシステムや設備機器等の導入(新築・既築)


■補助対象事業者


以下に該当しない地方公共団体、民間事業者、団体等
・都道府県、指定都市、中核市および施行時特例市
・延べ面積が新築で10,000m2以上、既築で2,000m2以上の民間事業者・団体等

 

■主な補助要件


・ZEB基準を満たすこと
・軽量区分ごとのエネルギーの計量・計測に加え、そのデータを収集・分析・評価できる管理体制の整備を行うこと
・需要側設備等を通信・制御する機器を導入すること
・ZEBリーディング・オーナーへの登録をすること
・ZEBプランナーが関与すること
・建築基準法における基準を満たすこと(耐震基準や浸水想定区域外であること等)
・新築建築物においては再エネ設備(太陽光発電など)を設置すること

 
ZEBリーディング・オーナーとは、「ZEBロードマップ」の意義に基づいて自らのZEB普及目標や導入計画、実績を一般に公表するオーナーを指します。ZEBの普及促進を目的として先駆的な役割を果たします。

また、施工内容や導入設備の条件を満たす場合、優先採択や採択時の優遇を受けられます。

出典:建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業(一部農林水産省・経済産業省・国土交通省連携


LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業

「LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業」も、2050年カーボンニュートラル達成を目的にしています。

建築物の建設から、解体・廃棄されるまでのライフサイクルを通じて、CO2削減に取り組む先導的な新築建築物が対象です。


zeb 補助金_02
■補助額

達成したZEBの区分

補助率(上限5億円)

ZEB

3/5

Nearly ZEB

1/2

ZEB Ready

1/3

ZEB Oriented

1/3


■補助対象事業


ZEB化に貢献するシステムや設備機器等の導入(新築)


■補助対象事業者


以下に該当しない地方公共団体、民間事業者、団体等
・都道府県、指定都市、中核市および施行時特例市
・延べ面積10,000㎡以上の民間事業者・団体等

 

■主な補助要件


・延べ面積10,000㎡以上については民間事業者
・ZEB Oriented基準以上の省エネルギー性能を満たすこと
・エネルギーの管理体制の整備を行うこと
・LCCO2の算出および削減を行うこと
・再エネ設備(太陽光発電など)の導入等を行うこと
・ZEBリーディング・オーナーへの登録をすること
・ZEBプランナーが関与すること
・建築基準法における基準を満たすこと(耐震基準や浸水想定区域外であること等)

 

ZEBの評価では運用段階でのCO2削減量は評価されませんが、この事業では運用段階でのCO2削減量も評価されます。

また、次のうち黒丸(●)が付いているものは、特に評価する取り組みとされています。

<運用段階での取組例>


  • 再エネ導入(要件として導入が必須)
  • 未評価技術の導入(CO2濃度による外気量制御、自然換気システム等)
  • レジリエンス性の向上(とくに評価される取り組みは災害に対するもの)
  • 電力調達も含め完全再エネ運用
  • 自営線を介した余剰電力の融通
  • 建材一体型太陽電池の導入

 

また、施工内容や導入設備の条件を満たす場合、優先採択や採択時の優遇を受けられます。

出典:建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業(一部農林水産省・経済産業省・国土交通省連携

脱炭素ビルリノベ2025事業(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)

「脱炭素ビルリノベ2025事業(業務用建築物の脱炭素改修加速化事業)」も2050年のカーボンニュートラルの実現を目的としています。「外皮の断熱化」や「高効率空調機器の導入」など、ZEB水準の省エネ性能を確保することを目的とした特定の改修が対象です。

■補助対象事業

外皮の高断熱化および高効率空調機器等の導入

zeb 補助金

 


■補助額

補助対象製品

補助額

外皮

断熱窓

15,000〜50,000円/㎡

断熱材

1,800〜3,700円/㎡

設備

空調
照明
給湯器
BEMS

補助対象経費の1/3
※補助対象経費=設備費+工事費

※上限額:1事業あたり10億円、下限額:1事業あたり200万円

■補助対象事業者


  • 地方公共団体、民間事業者・団体等

 

■主な補助要件


補助対象事業の要件

  • 改修後の外皮性能BPIが1.0以下となっていること
  • 一次エネルギー消費量が省エネルギー基準と比較して、用途に応じて30%または40%以上削減されること

(用途別の削減基準:ホテル・病院・百貨店・飲食店等は30%、事務所・学校等は40%)

  • BEMSによるエネルギー管理を行うこと(BEMS:エネルギーの使用状況を把握し、データに基づいて設備の運転を効率的に制御するシステム)

 

出典:業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(経済産業省・国土交通省連携事業)

 

地域脱炭素推進交付金

地域脱炭素推進交付金は、次の3つに分かれています。


  • 脱炭素先行地域づくり事業
  • 重点対策加速化事業
  • 特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】


いずれも、脱炭素社会の実現に向けた意欲的な取り組みを行う地方公共団体等を対象に支援を行うものです。


脱炭素先行地域づくり事業

「脱炭素先行地域づくり事業」の対象となるには、脱炭素先行地域に選定されていることが前提となります。

また、再エネ設備の導入が必須ではありますが、ZEBにおいても再エネ設備の導入が評価されるので、無駄な取り組みとはなりません。また、地域の脱炭素化を促進するうえでも再エネ設備の導入は有効といえるでしょう。

■補助額


原則2/3


■補助対象事業

 

1.再エネ設備の整備(必須)

≫太陽光、風力、中小水力、バイオマス、再生可能エネルギー熱(太陽熱利用など)、地下水熱、温泉熱等


2.基盤インフラ整備

≫自営線・熱導管

≫蓄電池・充放電設備

≫水素等関連設備

≫エネルギーマネジメントシステム等


3.省CO2等設備整備

≫ZEB・ZEH、断熱改修

≫EV自動車(カーシェア)、EVバス

≫その他省CO2設備(高効率換気・空調、コジェネ等)


4.効果促進事業

≫CO2排出削減に向けた設備導入事業と一体となって、その効果を脱炭素先行地域内外に一層高めるために必要な事業等

 

 

■補助対象事業者


  • 地方公共団体等

 

■主な補助要件


  • 脱炭素先行地域に選定されていること

    <脱炭素先行地域とは>
    2050年カーボンニュートラル実現に向け、全国に先駆けて地域特性に応じたエネルギー削減の取り組みを行う地域のこと

 

参考:地域脱炭素推進交付金

 

重点対策加速化事業

「重点対策加速化事業」の対象となるには、5つある補助対象事業のうち2つ以上の取り組みを行う必要があります

■補助額


定額2/3~1/3


■補助対象事業


<以下[1]~[5]のうち2つ以上を実施(1と2は必須)>

1.屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
≫例:住宅の屋根等に自家消費型の太陽光発電設備を導入

2.地域共生・地域裨益型再エネの立地
≫例:未利用地、ため池、廃棄物最終処分場等を活用した再エネ設備の設置

3.業務ビル等における徹底した省エネと改修時等のZEB化誘導
≫例:新築・改修予定の業務ビル等に省エネ設備を導入し、ZEB化を目指す

4.住宅・建築物の省エネ性能等の向上
≫例:ZEH、ZEH+、既築住宅改修補助事業

5.ゼロカーボン・ドライブ(再エネ設備と導入する場合に対象)
≫例:地域住民のEV購入支援、EV公用車を活用したカーシェアリングの実施

 

■補助対象事業者


  • 地方公共団体等

 

■主な補助要件


・以下のとおり定められた再エネ発電設備を導入すること
≫都道府県・指定都市・中核市・施行時特例市:1MW以上
≫その他の市町村:0.5MW以上
・事務事業の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを2030年度までに達成すること


参考:
地域脱炭素推進交付金

特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】

「特定地域脱炭素移行加速化交付金」は、自営線マクログリッドを構築する脱炭素先行地域が、温室効果ガスの削減効果の高い再エネ・省エネ・蓄エネ設備等の導入をする場合に支援を行うものです。

「ZEB化」を要件とはしていませんが、本事業が対象としている再エネ・省エネ設備の導入は、ZEB化の実現に貢献します。

具体的には以下のような取り組みに対して支援されます。

zeb 補助金_05
引用:「地域脱炭素の推進のための交付金」|環境省

■補助額

原則2/3


■補助対象事業


官民連携によって民間事業者が裨益(ひえき)する自営線マイクログリッドを構築する地域等における、温室効果ガス排出削減効果の高い再エネ・省エネ・蓄エネ設備等の導入

<自営線マイクログリッドとは>
設備(需要設備、再エネ設備、蓄電池等)を地方公共団体等が自ら敷設する電線(自営線)と接続することで構築される、小規模な地域のエネルギーネットワークのこと

zeb 補助金_06
引用:「地域脱炭素の推進のための交付金」|環境省

 

■補助対象事業者


  • 地方公共団体等

 

■主な補助要件


・脱炭素先行地域に選定されていること

<脱炭素先行地域とは>
2050年カーボンニュートラル実現に向け、全国に先駆けて地域特性に応じたエネルギー削減の取り組みを行う地域のこと

 

参考:地域脱炭素推進交付金

【地方自治体】ZEB補助金

国が実施する補助金制度に加えて、地方自治体が独自に補助金を設けている場合があります。

例えば、千葉県が令和6年度に行っていた「業務用建物脱炭素化設計支援事業補助金」では、延床面積に応じて100~200万円を支給されていました。

令和7年度も同様に延床面積に応じて100〜200万円の補助金が支給される制度が実施されています。

自治体の補助金が国の財源ではない場合、国の補助金制度と併用できることが多く、より費用の負担を抑えてZEB化を進めることが可能です。

自治体ごとに対象となる設備や要件が異なるため、活用できるかどうかを事前に確認しましょう。

参考:業務用建物脱炭素化設計支援事業補助金(ZEB・ZEH-M設計補助金)【申請受付終了】/千葉県

ZEB補助金を活用するために押さえておきたいこと

ZEB補助金を活用するためには以下のポイントを押さえておきましょう。

 

補助要件にある「ZEB基準」について

「ZEB基準」は、ZEBに関連する補助金制度における、補助要件の一つです。

ZEB基準は、一次エネルギー削減率に応じて4つの区分に分かれています。最も高い基準である「ZEB」から、次に「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」の順に削減率が設定されています。

「ZEB Oriented」については、対象とする延床面積や実行すべき省エネ対策の追加条件が設けられていることが特徴です。


zeb 補助金_07

 

ZEB化に貢献する設備の具体例

補助金制度の要件における「ZEB基準」を満たすためには、具体的にどのような対策を講じれば良いのでしょうか。

ZEB化を実現するには、「エネルギーを減らす省エネ技術」と「エネルギーを作る創エネ技術」を活用しなければなりません。

さらに省エネ技術は、エネルギーの需要を減らす「アクティブ技術」とエネルギーをムダなく使う「パッシブ技術」の2つに分けられます。

zeb 補助金_08
「ZEB PORTAL - ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」|環境省


例えばアクティブ技術なら、パナソニックのパッケージエアコン「UXPR5YRシリーズ」がZEB化に貢献します。

本シリーズは、従来機種と比べて省エネ性能が格段に向上しており、エネルギー消費の最適化を実現します。

zeb 補助金_09
UXPR5YRシリーズ(既設配管対応ハイグレード 高COPタイプ) | 空調・換気・給湯設備(ビジネス) | Panasonic


なお、パナソニックは「一般社団法人環境共創イニシアチブ」が公募するZEBプランナーに登録しています。補助金の活用も含めた最適なプランニングをサポートしますので、ご相談ください。

ZEB基準やZEB化を実現する方法など、ZEBに関する情報は以下の記事で詳しく解説しています。

 

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まとめ

建築物をZEB化するにはコストがかかりますが、補助金制度を活用することでその負担を軽減できます。

しかし、制度ごとに定められた要件を満たす必要があり、その申請手続きは非常に複雑です。また、予算が限られているため迅速な対応が求められるとともに、ZEB化に必要な技術の選定など、多くの手間がかかります。

そこでおすすめなのが、外部のサポートを活用することです。

パナソニックでは、補助金の活用を含めた最適なプランニングを支援します。ZEB化をスムーズに進めるために、ぜひご相談ください。

 

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